「緑の光線」
(原題:Le Rayon vert)
1986年8月29日公開。
孤独な女性が最後にグリーンフラッシュを見る感動作。
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得した名作。
監督・脚本:エリック・ロメール
キャスト:
- マリー・リヴィエール:デルフィーヌ
- アミラ・ケマキ:デルフィーヌの女ともだち
- リサ・エレディア:マヌエラ
- ヴァンサン・ゴーティエ:ジャック
- ベアトリス・ロマン:ベアトリス
あらすじ:
夏のパリ。
オフィスで秘書をしているデルフィーヌ(マリー・リヴィエール)は20歳も前半、ヴァカンスを前に胸をときめかせていた。7月に入って間もない頃、ギリシア行きのヴァカンスを約束していた女ともだちから、急にキャンセルの電話が入る。
途方に暮れるデルフィーヌ。
周囲の人がそんな彼女を優しく慰める。
いよいよヴァカンス。
女ともだちのひとりが彼女をシェルブールに誘ってくれた。
だが、シェルブールでは独り、海ばかり見つめているデルフィーヌ。
太陽はまぶしく海は澄み渡っているが、デルフィーヌの心は晴れない。
彼女は、人気のないパリに戻った。
しかし、公園を独りで歩いていると、見知らぬ男が付いてきて彼女を不安にさせる。
8月に入り山にでかけた彼女は、その後、再び海へ行った。
そこで、彼女は、老婦人が話しているのを聞いた。
それは、ジュール・ヴェルヌの小説「緑の光線」の話だ。
太陽が沈む瞬間にはなつ緑の光線は幸運の印だという……海で友達ができないわけではないが、彼女の孤独感は消えない。
パリに戻ることにした彼女は、駅の待合室で、本を読むひとりの青年と知り合いになった。
初めて他人と意気投合した彼女は思いがけず、自分から青年を散歩に誘った。
夕方、海辺を歩く二人は目のまえの光景に目を見張った。
太陽が沈む瞬間、緑の光線が放たれたのだ。
コメント:
エリック・ロメール監督による「喜劇と格言劇」シリーズの第5作。
愛と幸せを求めてバカンスに出かけた孤独な女の旅を、生き生きとした会話と美しい映像で描き、ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた。
秘書として働くデルフィーヌはギリシャでのバカンスを楽しみにしていたが、一緒に行くはずだった女友だちにドタキャンされてしまう。
友人に誘われて南仏へ出かけたものの、周囲になじむことができずひとりでパリへ戻る。
その後、ひとりでビアリッツの海を訪れたデルフィーヌは、ジュール・ベルヌの小説に書かれた、日没前に一瞬だけ見えるという「緑の光線」の話を耳にする。
主演のマリー・リビエールが良い。
ヴァカンスの夏を楽しむことができず泣いてばかりだったが、エンドで、ボーイフレンドが見つかり、彼と共に水平線のかなたに「グリーンフラッシュ」を目撃出来て、幸せいっぱいの表情になる。
この自然な表情の変化が素晴らしい。
マリー・リビエールは、エリック・ロメール監督の作品の多くに出演し、存在感を見せている。
代表作は、本作のほか、「飛行士の妻」、「冬物語」、「恋の秋」など。
この映画に出てくるジュール・ヴェルヌの小説「緑の光線」とは、1882年に出版されている小説。
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/b9/caab5c0c8c84cd2073fdbd23ef2ce27e.jpg
作者はフランスの著名な作家・ジュール・ヴェルヌ。
この人はSFの父と呼ばれる、SFを得意とする小説家だったが、この映画の題材にもなっている小説「緑の光線」は、SFとは無関係の、女性を主人公とする恋愛の物語で、スコットランドの風光明媚な土地を舞台に、グリーンフラッシュ(緑の光線)という自然現象を探す旅をテーマにしている。
グリーンフラッシュ(green flash)とは、太陽が完全に沈む直前、または昇った直後に、緑色の光が一瞬輝いたようにまたたいたり、太陽の上の弧が赤色でなく緑色に見えたりする稀な現象だという。
「グリーンフラッシュ」はSFの世界での話ではなく、地球上で実際に見られる現象である。
見られる確率が低いことから、ハワイやグアムではグリーンフラッシュを見たものが幸せになるという言い伝えがあり、これはニューカレドニアを舞台にした大林宣彦の映画『天国にいちばん近い島』(1984年)にも出てくる。
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