日本の文芸映画 山本周五郎 「どら平太」 役所広司主演・市川崑監督の傑作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「どら平太」

 

映画】どら平太 | 今日の花

 

「どら平太」 予告編

 

2000年5月13日公開。

江戸からやってきた新任の町奉行が、藩内の汚職を叩き潰す物語。

 

受賞歴:

  • ベルリン国際映画祭:ベルリナーレ・カメラ賞(特別功労賞)
  • 第24回日本アカデミー賞
    • 役所広司:優秀主演男優賞
    • 片岡鶴太郎:優秀助演男優賞
    • 五十畑幸勇:優秀撮影賞
    • 下村一夫:優秀照明賞
    • 西岡善信:優秀美術賞
    • 長田千鶴子:優秀編集賞

 

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原作:山本周五郎「町奉行日記」

脚本:四騎の会(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)

監督:市川崑

 

キャスト:

  • 望月小平太(どら平太) - 役所広司
  • こせい - 浅野ゆう子
  • 仙波義十郎 - 宇崎竜童
  • 安川半蔵 - 片岡鶴太郎
  • 大河岸の灘八 - 菅原文太
  • 巴の太十 - 石倉三郎
  • 継町の才兵衛 - 石橋蓮司
  • 杢兵衛 - 3代目江戸家猫八
  • 姐御風の女 - 岸田今日子
  • 今村掃部 - 大滝秀治
  • 本田逸記 - 神山繁
  • 内島舎人 - 加藤武
  • 落合主水正 - 三谷昇
  • 佐藤帯刀 - 津嘉山正種
  • 中井勝之助 - うじきつよし
  • 市川六左衛門 - 尾藤イサオ
  • 征木剛 - 菅原加織
  • 乾善四郎 - 松重豊
  • 鳥居角之助 - 黒田隆哉
  • 伝吉 - 本田博太郎

 

どら平太 | 映画 | 日活

 

あらすじ:

或る小藩。

ここでは、町奉行が不明瞭な辞職を繰り返していた。

そんな矢先、望月小平太(役所広司)という新任の町奉行が江戸屋敷からやってくる。

ところが、その男には、日頃の振る舞いの不埒さから、どら平太という渾名がついていた。

実際、着任する筈の期日を10日も過ぎて、いまだに彼は奉行所に出仕しない始末なのだ。

しかし、それはどら平太本人が友人で大目付の仙波義十郎(宇崎竜童)に頼んで、わざと流させた悪評であった。

実は、彼は密輸、売春、賭博、殺傷などが横行する「壕外」と呼ばれる治外法権と化した地域の浄化にやってきたのだ。

早速、遊び人になりすまし壕外に潜入した彼は、壕外の利権を分け合っている3人の親分の存在を知る。

密輸業を仕切る大河岸の灘八(菅原文太)、売春業を仕切る巴の太十(石倉三郎)、賭博を仕切る継町の才兵衛(石橋蓮司)。

そんな彼らに、腕っぷしの強さと豪快な遊び方を見せつけ圧倒するどら平太。

遂に、彼は誰もがなし得なかった3人の親分を観念させることに成功する。

だが、彼が奉行として彼らに下した罪状は、死罪ではなく永代当地追放であった。

実は、どら平太の本当の目的は、彼らと結託して私腹を肥やしていた城代家老・今村掃部(大滝秀治)を初めとする藩の重職たちの不正を正すことにあったのだ。

灘八たちに藩と結託していた証拠を無理矢理作り出すことを命じ、それをもって重職たちを退陣に追い込むどら平太。

しかし、藩の重職たちと3人の親分の間で私腹を肥やしているもうひとりの人物がいた。

それは、義十郎であった。

だが、そのことを知ったどら平太の前で義十郎は自害してしまう。

こうして、どら平太は一度も奉行所に姿を現さないまま役目を全うした。

しかし、そんな彼にも苦手なものがあった。

それは、彼とは7年来の馴染みで、先般、江戸から彼を追いかけてやってきた芸者のこせい(浅野ゆう子)である。

江戸に連れ帰ろうとする気の強い彼女に捕まってなるものかと、どら平太は次なる赴任地へ駄馬を走らせる……。

 

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コメント:

 

原作は、山本周五郎の短編小説「町奉行日記」。

これまで何度も映画化されているが、本作が最高のヒット作となった。

 

或る小藩に蔓延る腐敗を正すべくやって来た、破天荒な町奉行の活躍を描く痛快娯楽時代劇である。

 

山本周五郎の原作を基に、黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹による「四騎の会」が共同で脚色し、市川崑が監督を務めている。

1985年に東宝と加山雄三の加山プロとの提携作品として準備が進められたが、お蔵入りとなり、15年の月日を経てようやく日の目を見たことになる。

若大将しか演じられない加山雄三がこんなむずかしい役をつとめられる訳がない。

加山本人がそのことに気づいて、乗り気ではなかったのだろう。
 

市川崑カラーが随所に見られる作品だ。

まずはオープニング・クレジットにおけるスタッフ、キャストの文字の配置方法。

スクリーンの四隅をうまく使ったおなじみの配置で、これを観ただけで、市川作品ということがわかる。

 

立ち回りシーンでのスローモーションの使い方も見事だ。

刀の流れるような軌跡を見せてくれる。

そして、市川監督ならではのちょっとした女性のしぐさの見せ方。

本作の紅一点とも言える浅野ゆう子が部屋を出る時に、着物のたもとをふすまに挟む。

それをカメラが捉えると、サッとたもとが引かれて消える。

いずれも市川監督らしい演出だ。


主人公どら平太のキャラクターは黒澤作品の登場人物を思い出させる。

手を懐に入れ、肩を揺らせて歩くさまは椿三十郎のようだ。


ストーリーは簡単明瞭、分かりやすい。

財政難に苦しむ小藩の重臣らが、濠外(ほりそと)と呼ばれる無法地帯を牛耳る三人のやくざの親分と手を組み、不法収入の上前をはねている。

そこへ町奉行として平太がやって来る。

豪放磊落、腕も立つ平太は、場内の者が出入りを禁じられている濠外に単身、乗り込み、親分らと渡り合い、完全に彼らを屈服させる。

そして、私腹を肥やしている重臣らとも対峙する。

 

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残念なのは全て平太の計画通りにことが進んでしまうため、あっさりし過ぎて盛り上がりに欠けることだ。

せっかくあの名優・菅原文太がやくざの大親分役で出ているのだから、もう一波乱欲しかった。

文太兄いを見たさに映画館に足を運んだファンはさぞかし残念な想いをしたことだろう。

 

全体的におとなしすぎるという評価が多いが、原作自体が殺陣のシーンゼロの作品だけに、こういう映像になっているのは当然かも。

役所広司が演じるどら平太が予想外に面白く、演技の幅が広がってきたと感じさせる佳作である。

 

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