「悪魔のような女(1955)」
(原題:Les Diaboliques)
1955年1月29日公開。
アンリ=ジョルジュ・クルーゾーによるサイコスリラーの傑作。
原作:ピエール・ボワロー&トーマス・ナルスジャック
脚本:ジェローム・ジェロミニ、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
キャスト:
- ニコール: シモーヌ・シニョレ - ラテン語教師。校長の愛人。
- クリスティーナ: ヴェラ・クルーゾー - 英語教師。校長の妻。
- ミシェル: ポール・ムーリス - 校長。
- フィシェ: シャルル・ヴァネル - 元警視。ミシェル失踪事件を調べる。
- ドラン先生: ピエール・ラルケ - 学院の老教師。
- レイモン先生: ミシェル・セロー - 学院の若い教師。
- プランティヴォー: ジャン・ブロシャール - 学院の門番。用務員。
- エルボウ夫人: テレーズ・ドーニー - 文法教師。ニオールにあるニコールの家の借家人。
- エルボウ氏: ノエル・ロクヴェール - 文法教師の夫。
- 給油係: ロベール・ダーバン
あらすじ:
妻クリスティーナ(ヴェラ・クルーゾー)の財産で、パリ郊外の小学校の校長におさまっているミシェル(ポール・ムーリッス)は、妻に教鞭をとらせ、もう一人の女教師ニコール(シモーヌ・シニョレ)と公然と通じていた。
乱暴で利己的な彼に対して二人の女はついにがまんできなくなり、共謀でミシェル殺害の計画を立て、三日間の休暇を利用してニオールにあるニコールの家へ行き、電話でミシェルを呼んだ。
いざとなるとクリスティーナは怖気づいたが、気の強いニコールは、彼女に命令してミシェルに睡眠薬入りの酒を飲ませ、寝こんだところを浴槽につけて窒息させた。
翌朝二人は、死体を用意して来た大きなバスケットに詰め小型トラックで学校まで運び、夜の闇に乗じて死体をプールに投げこんだ。
校長失踪はたちまち校内の話題になったが、ニコールは平然としていた。
プールに飛びこんだ生徒が校長のライターを発見し、プールの水を干すことになったが、水を干してみると、死体は影も形もなかった。
その上、クリーニング屋からミシェルが殺された時に来ていた洋服が届く事件が起きた。
クリスティーナは洗濯屋から依頼人の住所を開き、そのホテルヘ行ってみたが、その人物には会えなかった。
安心できぬクリスティーナは、校長の特徴に似た溺死体がセーヌ河に浮かんだという新聞記事を見て、死体公示所へ行ったが人違いだった。
公示所でクリスティーナからおおよその事情を聞いた元警部の老探偵フィシェ(シャルル・ヴァネル)は、学校に来て調査をはじめた。
そのころ、モワネという生徒がガラスを割って校長に叱られたといい、学校で記念撮影をしたところ、校長らしい人物が写真の中に写っていたりして、クリスティーナは恐怖のあまり持病の心臓病が悪化して寝こんでしまった。
同じく怖気づいたニコールは学校を辞めて行った。
その夜、一人寝ているクリスティーナに、誰もいないはずの浴室から足音が聞こえてきて・・・。
コメント:
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督によるサイコスリラー映画。
夫の横暴ぶりに耐えかねた妻が、夫の愛人と共謀して彼の殺害を立案実行した事件の顛末を描いている。
原作はピエール・ボワローとトーマス・ナルスジャックが合作した探偵小説。
ドキドキさせられっぱなしのアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督によるサスペンスの傑作である。
不気味なモノクロ映像と意外な展開に驚かされる。
舞台は、ある学校。
学校長の男(ポール・ムーリス)は、大金持ちの妻(ヴェラ・クルーゾー)に学校の運営費を出させた上に教師もさせて、自分は他の女性教師(シモーヌ・シニョレ)と不倫をしていた。
そんな暴力的で利己的な男にとことん嫌気が差した妻と女性教師の二人は、結託して「二人でアイツを殺そう」ということになるが……。
実に上手い物語の展開だ。
アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督は、最初この作品をカラー映画で撮りたかったらしいが、諸事情によりモノクロ映画となった。
しかし、撮影時にはわざわざ曇りの日を選んで撮影したとのことで、それが映像に不気味さを与える効果を与えたといわれている。
これぞモノクロ映画の傑作である。
不倫相手の女を演じているシモーヌ・シニョレ。
ユダヤ人を父に持つ彼女は、その独特の風貌によって数々の名作のヒロインとしてフランス映画界で一世風靡した女優である。
怪しげな表情を持つシモーヌは、犯罪映画にぴったりだ。
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