「過去のない男」
(英語:The Man Without a Past)
2002年3月1日公開。
過去の記憶を失った男のその後の運命を描く。
受賞歴:
第55回カンヌ国際映画祭グランプリ及び女優賞
サン・セバスティアン国際映画祭国際批評家連盟賞
ハンブルク映画祭ダグラス・サーク賞
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
キャスト:
男:マルッキィ・ペルトラ
イルマ:カティ・オウティネン
男の妻:アイノ・セッポ
ヴァスカイネン:ヤンネ・ヒューティライネン
あらすじ:
ヘルシンキに流れ着いた一人の男(マルッキィ・ペルトラ)。
彼は暴漢に襲われ、一命は取り止めるものの過去の記憶をすべて失ってしまう。
やがて男は絶望の淵の中、救世軍の女性イルマ(カティ・オウティネン)と運命的な出会いをする。
まもなく恋心が芽生え、互いに惹かれていく男とイルマ。
それで活気づいた男は、救世軍主催のロック・コンサートを企画したりなど、だんだん行動的になっていく。
しかしひょんなことから、銀行強盗に関与してしまった男は、新聞記事に載ってしまう。
すると警察のもとに、男の妻(アイノ・セッポ)から連絡があった。
過去が判明した男は、イルマとの別れを惜しみつつも、地元に帰るため列車に乗り込む。
だが、たどりついた街に、男は何の感慨もわかない。しかも妻とは数か月前に離婚が成立していた。
そこで男は、妻を新しい恋人であるオヴァスカイネン(ヤンネ・ヒューティライネン)に託すと、再びヘルシンキに戻り、イルマのもとへと足を運ぶのだった。
コメント:
過去の記憶を失った男が新しい人生を歩いてゆく様を描いたユーモラスな感動作。
フィンランドの巨匠・アキ・カウリスマキ監督の「敗者三部作」の二作目。
列車に乗って現れ暴漢に襲われて記憶を失った男。
この男が周囲の人々と交流することで新しいアイデンティティを獲得してゆくまでを独自のタッチで描いていて味のある作品である。
ストーリーは、フィンランドの圧政時代の話のようだ。
静かな展開の中でとても気を引くのが音楽ですね。
日本の『ハワイの夜』という曲が日本酒とともに流れる列車のシーンは印象に残る。
監督が日本をとても気に入っていたことが分かる。
表現を極力抑制した映像は小津安二郎作品を彷彿とさせる。
それが圧制時代のフィンランドの人々の感情を見事に表現している。
見事な作品だ。
サウンドトラックに、楽曲「ハワイの夜」(クレイジーケンバンド)と「Motto Wasabi」(小野瀬雅生ショウ)が採用されている。
これは、カウリスマキ・ファンである小野瀬雅生が、自分たちのCDが出るたびに、かかさずカウリスマキに送っていて、彼等のサウンドが気に入られたためだという。
この映画では、フィンランド語で歌っているようだが。
カウリスマキ監督には、「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」の“労働者3部作”と、「浮き雲」「過去のない男」「街のあかり」からなる“敗者3部作”がある。
いずれもフィンランドの風土を映し出すユニークな作品である。
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