欧州映画50+50 ドイツ 第26作 「M(1931)」 フリッツ・ラングの傑作サスペンス! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「M(1931)」

(原題: M – Eine Stadt sucht einen Mörder)

 

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「M(1931)」 予告編

 

1931年5月11日公開。

フィルム・ノワールが創ったサスペンス映画の元祖的傑作。

 

脚本:テア・フォン・ハルボウ、フリッツ・ラング

監督:フリッツ・ラング

 

キャスト:

  • ピーター・ローレ:ハンス・ベッケルト
  • オットー・ベルニッケ:カール・ローマン警視正
  • グスタフ・グリュントゲンス:暗黒街の顔役

 

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あらすじ:

ドイツのある町では最近頻繁する殺人事件に、興奮と恐怖と、憤怒の渦が巻き上げられつつあった。

可愛らしい小学校の女生徒が惨たらしく惨殺されるのだ。

一つの事件が解決されないうちに新しい同様の惨劇が次々と行われて行った。

通り魔のような殺人犯人で、しかもその誰であるかを何人も知ってはいない。

人々がよると触るとその事件を論じ合った。

子ども達が行き交う小学校への途上に犯人逮捕に懸けられた10000マルクの懸賞逮捕ポスターが貼り出される。

人の子の母親達は子どもの顔を見ることが戦慄すべき犯行の前兆のようにも思えるのだ。

しかし騒ぎはこの市内の興奮だけのものではなかった。

その治安を司る警察署は非難と讒謗の矢面に立ちながら焦燥の坩堝と化している。

日々に拡大される捜査範囲、夜を日に次いでの捜査会議、次々と検挙される容疑者の数々。

しかも本当の犯人は冷然と俺は無事だと新聞社に投書する。暗黒街は幾度となく検束だ。

浮浪者、犯罪者、醜務婦等が一団となって網に引っかかる。

そして身分証明書の点検である。

恐怖はしかしここばかりではない。

全く異なった他の団体、スリとかっぱらいの一団も今は恐るべきカタストロフに怯えだした。

警察の検挙が日増しに激しくなるからである。

ある日町の風船売りの盲目の老人が、聞き覚えのある口笛の曲を聞いた。

そうだ、

その曲こそ、すぐる日彼から風船を買っていった子ども連れの客が吹いていたペールギュントの「山の王の殿堂にて」だ。

しかもその時の子どもは殺されている。

老人は通りがかりの青年にこれを告げる。

青年はすぐスリの一団と連絡を取りながら後を付けた。

その男は子どもを連れている。

しかも玩具を、お菓子を、色々なものを買い与えている。

青年は咄嗟に掌にMの字をチョークで書いて、男を追い抜きざまにとんとその肩をついた。

その男の肩にはMの字が、Murderの印が付けられた。

スリの一団はあちら側からも、こちらからも町の八方から男を取り巻いた。

気がついた男は頻りに逃げたがあるビルディングで消えた。

その夜一団はこのビルディングを襲うのだった。

その男を俺達の手に捕らえろと言うのである。

大がかりのビルディング襲撃が行われる。

だが、守衛の一人が急を警察に報じたために一団は蒼々とここを逃れた。

しかし、殺人犯は一団に発見されて彼等の私刑法廷に立たせられる。

私刑法廷--廃屋倉庫の地下室だ。

遂に彼等は彼等の信条によって犯人を処罰しようと犯人めがけて飛びかかる。

この時である。本当の法律の手がここに伸びた。

一同の立ちすくむ中に厳かな声が響きわたるのだった。

かくて数カ月間さしもの町を震撼せしめた凶悪な犯人も司直の手に引かれていったのである。

 

映画『M』ドイツ表現主義とフィルムノワールの関係とは?/解説・考察・映画の革新表現・簡単あらすじ: レビュー・アン・ローズ

 

コメント:

 

フリッツ・ラング監督による異色サスペンス作品。

ベルリンを舞台に、連続殺人犯が警察と犯罪者たちに追い詰められる様を描く。

ラングの初のトーキーにして代表作であると同時に、サイコスリラー映画の始祖として高く評価されている。

また、アメリカ合衆国におけるフィルム・ノワールの成立にも大きな影響を与えた。

 

1930年代のベルリンで、幼い少女ばかりを狙った連続殺人事件が発生した。

警察の必死の努力にもかかわらず犯人逮捕の目処は立たず、市民や暗黒街の犯罪者たちは彼ら自身の手で犯人を捕まえることを思い立つ。

手がかりはないかのように思えたが、被害者の一人エルジーが誘拐されたときに口笛が聞こえたことに気付いた盲目の売り子により、一人の男に焦点が絞られた。

チョークで「M」という殺人を意味するのマーク(ドイツ語で殺人者を意味する「Mörder」の頭文字)を付けられた男は、徐々に追い詰められていく。

 

この映画を観た人の耳に残るのは、口笛のメロディだ。

これは昔どこかで聞いたメロディだ!

 

 

 

これは、グリーグの組曲「ペール・ギュント」の中にある旋律なのだ:

 

 


ピーター・ローレが、少女連続殺人鬼・ハンスを演じており、凄まじい演技である。
少女に声をかけて殺してしまう殺人鬼は、口笛を吹く癖があり、それを聴いたことのある盲目の風船売り老人が「あっ、あの口笛だ。あの男が犯人だ!」と告げて、告げられた男が手に「M」(MurderのM)をチョークで書いて男の肩を叩き、男の肩には「M」文字が。

 

▷ フリッツ・ラングの映画『 M 』( 1931 ) を哲学的に考える - "It" thinks, in place of "I" .

 

少女連続殺人鬼を演じているピーター・ローレは、当時オーストリア・ハンガリー帝国で現在はスロヴァキア領のルジョムベロクに生まれ、若い頃からスイス、ドイツ、オーストリアなどで舞台に立っていた。

ドイツではウーファの映画に多く出演し、本作『M』にも出演して一躍世界中に知られるようになる。

1930年代にドイツで反ユダヤ主義を掲げるナチス党が台頭すると、ユダヤ人だったローレはパリに続いてロンドンに活動の場を移す。そこでヒッチコックの『暗殺者の家』に悪役として出演。

それがきっかけになりハリウッドに渡る。ハリウッドではハンフリー・ボガートが主演した『マルタの鷹』や『カサブランカ』などに出演し、個性派脇役として活躍した。


本作は、殺人鬼を警察が追う一方で、犯罪歴のある男たちも殺人鬼を追うという並行物語が面白い。

こういう味のあるストーリーが映画ファンを増やしていったのだ。

 

1931年に制作されたとは思えない、今でも十分魅力を感じるサスペンスの大傑作である。

こういう作品をお手本に、米国やフランスのフィルム・ノワールは発展していったのであろう。

まさに、フィルム・ノワールの基本をしっかり踏まえた作品だ。

 

この映画は、今ならYouTubeで全編無料視聴可能:

(英語の字幕付き)