「いとこ同志」
(原題:Les Cousins)
1959年3月11日公開。
トリュフォー、ゴダールと並ぶヌーヴェル・ヴァーグ初期を代表するクロード・シャブロル監督の代表作。
第9回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞。
脚本:クロード・シャブロル、ポール・ジェゴフ
監督:クロード・シャブロル
キャスト:
シャルル:ジェラール・ブラン
ポール:ジャン=クロード・ブリアリ
フロランス:ジュリエット・メニエル
クロビス:クロード・セルヴァル
あらすじ:
二十三歳のシャルル(ジェラール・ブラン)は法学士の試験を受けるためにパリにやってきて、同じ年のいとこポール(ジャン・クロード・ブリアリ)の豪華なアパートに同居した。
田舎ぐらしのシャルルと、何不自由ない都会生活を送るポール。
生活環境の相違は二人の青年の性格をまるで別なものにしていた。
旅のもようを母親に書き送る純真なシャルル。
彼の子を宿したと泣きこんできた女を、仲間のクロビスに金をやって始末させるポール……。
二人の共同生活は両極端だった。
シャルルは受験勉強に励み、ポールはアパートに仲間を呼んで酒と恋愛遊戯にふけった。
ある日、シャルルはポールに連れられて学生クラブに行き、そこで初めて会ったフロランス(ジュリエット・メニエル)の美しい瞳に魅せられてしまった。
何度かの男との交渉をもっている彼女であっても、彼には問題ではなかった。
パーティの夜、彼はフロランスに愛をうちあけた。
シャルルの不器用だが、真剣な態度に、フロランスも彼を愛するようになった。
しかし、破綻は意外に早くやってきた。
二人の逢引きの日、フロランスは時間を間違えてアパートにやってきた。
そこにはポールだけがいた。
彼は彼女のシャルルへの純粋な愛情を聞いてあざわらった。
そこにきたクロビスは彼女をそそのかした。
彼女はポールに身をまかせた。
ポールは彼女と同棲し、シャルルの眼の前で二人の嬌態をみせつけた。
シャルルは一切の雑念を払いのけて勉学に励んだ。
ポールの試験はシャルルより一日前で、勉強もしない要領居士の彼はみごとに合格した。
ポールは彼女と別れた。
シャルルは彼女の誘惑をしりそけ最後の仕上げにつとめた。
だが、彼は落ちてしまった。
落胆したシャルルは町をさまよい、レストランでクロビスとむつまじげに語るフロランスをみつけ、よりいっそう絶望的になった。
学生証を河に投げ棄て、アパートに帰った。
壁のピストルをとり、一発の弾丸をこめた。
弾倉を回転させ、寝ているポールの頭にむけた。
引金をひいた。弾丸は出なかった。
翌朝、ポールはシャルルの不合格をなんとかなぐさめようとした。
彼はふとそこにあったピストルをとりあげ、シャルルに向けた。
“撃つな”叫び声の終らぬうちに、弾丸はシャルルの胸を射抜いた。
呆然とするポール。
誰かが押すドアの呼鈴の音が激しく鳴っていた。
コメント:
田舎から受験のために上京した純情な青年と、都会育ちの青年という二人のいとこ同志を主人公に、恋愛をめぐって傷つきやすい青年期の心理を描いたドラマ。
超真面目なシャルルと破天荒なポールの対比がよかった。
シャルルとフロランスが待ち合わせのすれ違いをしてからの展開が面白かった。
娯楽性があって、エロい。
ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けとして注目された作品。
とにかく音がうるさい。
電話、呼び鈴、クロヴィスが杖でそこらを殴ったり瓶を割ったりする音、ポールのがなり声、パーティの嬌声。
耳を覆いたくなるくらいの不快音の嵐。
真面目で容量の悪いシャルルの行く末を暗示していたのだろうか。
銃声にシンクロする。
ストーリーは行き当たりばったりで、何を言いたいのか分からない感じがある。
だが、青学の狩野教授によると、この映画は非常に意味深なのだそうだ。
いとこの二人は、丸で正反対に見える。
シャルルはガリベン君で、もう一方のポールは遊び人で欲望追求型だ。
しかし、実は、この二人、同じ内面心理を抱えているというのだ。
そして、ポールがフロランスという海千山千の女を連れ込んできて、3人の同居がはじまり、生真面目だったシャルルも二人のエロい姿に誘惑されて、フロランスに手を出してしまう。
挙句の果てに、真面目に学業に励んだはずのシャルルが試験に落ちてしまい、逆にポールが要領良く試験に合格するというあり得ない結果に。
最後は、いとこのポールがシャルルを拳銃で撃ち殺すという結末になっている。
実は、ガリベン君も田舎の母を喜ばせようという目的で勉強に励んでいただけで、深い理由や崇高な目的があった訳ではないという。
つまり、二人のいとこは、共通して「レーゾンデートル」すなわち「この世に生を受けた存在理由」が無い、浮草のような青年たちだったというわけだ。
さらに、この映画は、そんな若者を描きながら、実はフランスなど西欧諸国の苦悩を描いているのだという。
第二次世界大戦が終わり、ようやく復興してしてきた欧州経済。
その頃の人々が抱えていた焦燥感。
食うに困らなくなったのは良いが、パンのみでは生きている充実感が無い。
いわゆる先進国病の始まりである。
そんなフランスでの世情を暗示させているというのだ。
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