「陽炎」
1991年2月9日公開。
「陽炎シリーズ」第1作。
原作:栗田教行
脚本:高田宏治
監督:五社英雄
出演:
樋口可南子、荻野目慶子、本木雅弘、かたせ梨乃、川谷拓三、竹中直人、白竜、清水ひとみ、沢竜二、うじきつよし、芦屋小雁、高橋長英、山内としお、岩尾正隆、光石研、島木譲二、岩下志麻、芹明香、一条かおり、丹波哲郎、夏八木勲、高品格、神山繁、川地民夫、岡田英次、北村和夫、緒形拳、仲代達矢
あらすじ:
抜けるような真夏の下、見事な菩薩の刺青を背にする洗い髪の女がいた。
女の名はりん(樋口可南子)。
女胴師である彼女を人は“不知火おりん”と呼んだ。
ある日、大阪の難波政組の依頼を受けてそこに向かったおりんは、偶然義弟の市太郎(本木雅弘)に出会う。
両親亡き後、若旦那として熊本・二本木の料亭・八雲を切り盛りしているはずの市太郎だったが、今や岩蔵(白竜)が率いる岩船一家に店を乗っ取られ、博奕打ちと芸者が徘徊する色と欲の悪臭に満ちた場に成り下がっていた。そ
して、おりんは二度とまたぐことのないと思っていた八雲の敷居に足を踏み入れた。
女将の千代春(かたせ梨乃)は動揺し、またそこには20年前のおりんの実父のかたきでもある岩蔵の胴師・常次郎(仲代達矢)がいた。
そんなおりんの出現をいぶかしがる岩蔵の元に難波政組の親分・政吉(岡田英次)が祭りの花会に出席するという知らせが届く。そしてその胴師の名には“城島りん”と明記されていた。
勝負が始まってほどなく、積み込まれた花束はおりんの目の前を次々に通り過ぎ、常次郎の前に置かれた。
中休み、常次郎は20年前のことを思い出しながら、おりんに声をかける。
その眼は愛しい者をとらえるかのようにやさしかった。
やがて勝負はヤマ場を迎え、おりんと常次郎の一騎打ちとなった。
異様な緊張と静寂の中、勝利の女神はおりんに微笑んだ。
しかし、それによって岩蔵は怒り、おりんや市太郎に刺客が向けられるのだった。
旅芝居の一座にかくまわれていた市太郎とその恋人・小芳(荻野目慶子)は、千代春が仕組んだワナによってあっけなく殺されてしまう。そ
れを知ったおりんは激しい怒りに体を震わせながら、ダイナマイト片手に岩船一家へ殴り込みに行く。
そして、常次郎の助けもあり、おりんは死闘の末、岩蔵を討ち取るのだった。
コメント:
昭和初期の熊本を舞台に、愛憎がうずまく料亭を巡って一人の女胴師の活躍を描く任侠アクション。
任侠映画の巨匠・五社英雄監督の名作である。
これまで経験したことのない本格的なヤクザの世界を描いた映画に主役として樋口可南子が臨んだ、一世一代の女胴師を描いた作品である。
終始冷静に振る舞い感情を露わにしないおりんが花火片手に叫ぶ
「往生しなっせ!」が印象に残る。
共演者が凄い。
仲代達矢を筆頭に、丹波哲郎、白竜、本木雅弘、川谷拓三、竹中直人、夏八木勲、高品格、神山繁、川地民夫、岡田英次、北村和夫、緒形拳など錚々たる面々だ。
女優陣も、かたせ梨乃、荻野目慶子、岩下志麻、芹明香、一条かおりと当時の一流どころが顔を出している。
樋口可南子の背中に描かれた入れ墨が美しい。
義理の弟のためにばくちで店を取り戻すりん(樋口可南子)と父の敵・常次郎(仲代達矢)との奇妙な愛情を描く。
緒形拳や岩下志摩がほんの顔見世で出ているのは五社作品だからだろう。
それにしても豪華。
究極のギャンブルとされる手本引きの勝負だが、映画ではあまり詳しくは描かれない。むしろ常次郎とりんの関係性に焦点を当てている。
かたせ梨乃も定型の役どころだが、だんだんと貫禄を見せてきた。
川谷拓三と竹中直人もうまく使われている。
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