黒澤明が選んだ映画 第91作 「パパは、出張中!」 カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「パパは、出張中!」

(英語: When Father Was Away on Business

 

パパは、出張中! - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

 

「パパは、出張中!」 全編(英語字幕)

 

1985年ユーゴスラビア公開。

1985年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。

 

脚本:アブドゥラフ・シドラン

監督:エミール・クストリッツァ

 

キャスト:

  • マリク:モレノ・デバルトリ
  • 父メーシャ:ミキ・マノイロヴィッチ
  • 母セーナ:ミリャナ・カラノヴィッチ
  • 人民委員会のジーヨ:ムスタファ・ナダレヴィチ
  • 体操教師アンキッツァ:ミラ・ファーラン
  • 祖父ムザフェル:パヴレ・ヴイシッチ
  • マーシャ:シルヴィア・プハリッチ

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あらすじ:

1950年、サラエボ。

チトー大統領の5ヵ年計画の実現に向けて邁進する若きユーゴスラヴィアは、ソ連のスターリン主義に対抗せんとして、自らもまた混迷の時を迎えていた。

マリック(モレノ・デバルトリ)は6歳。父メーシャ(ミキ・マイノロヴィチ)、母セーナ(ミリャナ・カラノヴィチ)、祖父ムザフェル(パヴレ・ヴイシッチ)の愛情に包まれて楽しい毎日を送っていた。

ところが、ある日、父メーシャが逮捕されてしまった。

というのも、メーシャが出張にかこつけて愛人の体操教師アンキッツァ(ミーラ・フルラン)と情事を楽しんでいた時、ふと国家を批難したのだが、そのことを彼女が自分に言い寄ってきた人民委員会のジーヨ(ムスタファ・ナダレヴィチ)にもらしてしまったのだ。

しかも、ジーヨはメーシャの義理の兄、つまりセーナの兄なのだ。

セーナは救いを求めて兄を訪れたが拒否される。

父が家に帰らないことを不安気に尋ねるマリックに母は「出張中よ」と答えるしかなかった。

そんなある日、地方の鉱山で奉仕労働をしている父から連絡があり、セーナとマリックが会いに行った。

久しぶりにベッドを共にする夫婦だが、夢遊病で自分のベッドを抜けだすマリックのために邪魔にされて苦笑い。

だが、幸福なひと時が親子三人に戻って来た。

サラエボに帰ったセーナはアンキッツァを訪ねて問いつめ、つかみあいの大喧嘩になった。

マリックもアンキッツァにかみついて母に加勢した。

父からの便りでマリックたちは聞いたこともない町、ズボルニクに引越すことになった。

だが、とにかく家族一緒に暮らせるのだ。

島流しとはいえ、メーシャはチェス仲間の上司とうまくやっているし、それなりに楽しい生活が始まった。

そして、マリックは恋をした。相手は、“博士”と呼ばれて慕われている初老のロシア人の娘マーシャ(シルヴィア・プハリッチ)。しかし、彼女は体中の血を変えないと生きられない難病にかかっている。そ

んなことは知らないマリックは、夢遊病でマーシャの家を訪れ彼女のベッドにもぐりこんだり、一緒に勉強したり風呂に入ったりもした。

そして、ある夜、彼女は救急車で運ばれたまま二度と帰って来なかった。

父はとうとうサラエボに帰ることを許された。

1952年7月、ユーゴが自信をもって一人歩きしていた頃である。

マリックの叔父の結婚式が開かれ、親戚や友人たちが久々に一堂に会した。

同棲しているジーヨとアンキッツァも招かれている。ジーヨは酒びたりの毎日で、体を壊していた。

メーシャはアンキッツァを納屋に連れ込み、自分を密告したことを問いつめた。

彼女は彼に愛していると告げるが、彼は彼女のすがる手を振りきった。

外では宴も終り、男と子供たちはユーゴ対ソ連のサッカー試合の実況中継を聞いていた。

そんなさ中に、祖父が養老院へ一人発っていった。

 

パパは出張中! | Untitled

 

コメント:

 

チトー大統領統治下のユーゴスラヴィアがスターリン体制から離れていく時代を背景に、時代の波が押し寄せるサラエボのある一家の物語を少年の目を通して描いた作品。

 

1950年代のユーゴスラヴィア・サラエヴォを舞台に、少年マリクとその家族が経験する時代の厳しさを家族愛とコメディを交えつつ描いた家族ドラマといった趣。
物語の背景には当時のユーゴとソヴィエトの対立があり、ユーゴ国内において親ソ的・親スターリン的思想の持ち主と疑われれば逮捕されるという絵に描いたような言論と思想の弾圧があった。

マリクの父親メーシャもひょんなことから体制批判を疑われ、義兄の人民委員に逮捕され強制労働に憂き目に遭う。

そこから始まる一家の顛末。

劇中ではモザイク国家ユーゴスラヴィアを表現するかのように多様なキャラクターが確固とした色を持って舞台の上を練り歩いていく。

それでいてストーリーのテンポは自然で無理がない。

ユーゴを代表する名匠・クストリッツァ作品には、いつも色の強いキャラクターたちが現れるが、調和を崩すことなく物語は結末にうまく着陸していく。

また、ユーゴという国家とそこに生きる家族を描き出すという点において、後に二度目のパルムドール受賞に輝いた『アンダーグラウンド』の原型が本作にあるように思える。

国家・政治に翻弄される家族たち、理不尽だがどこか滑稽な体制・権力、罵詈雑言と喧嘩の絶えない普遍的な家族愛。

 

地球の苦しみを真正面からとらえた貴重な映画である。

ユーゴでの凄まじい紛争のさなかで生きて行く家族の姿が悲しい。

こんな苦しい世界がつい最近まで存在していたのだ。

そして今は、ウクライナとロシアとの長期化した戦争状態がある。

平和を実現し、継続するということはいかに難しいか。
 

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