「黒猫亭事件」
毎日放送・TBS系列で1978年9月に「横溝正史シリーズII」のひとつとして放送。
「黒猫亭事件」も御多分に漏れず、原作と設定が違っているが、おおよそ原作通りになっている。
金田一耕助の先輩も登場するし、学生時代の金田一の話もおもしろい。
キャスト:
かっこ内の数字は放送当時の年齢。
金田一耕助…古谷一行(34)
日和警部…長門勇(46)
風間俊六…近藤洋介(45)
金田一の先輩で、パトロンのひとりでもある。
お繁の旦那。
お繁…太地喜和子(35)
バー黒猫のマダム。
糸島大伍…田口計(45)
バー黒猫のマスターでお繁の夫。
お君…井上聡子
糸島宅の女中。
加代子…山口朱美(32)
バー黒猫の従業員。
富田美子…八重垣百合
ダンスホールのダンサー。
長谷川巡査…多賀勝(35)
遺体を発見した巡査。
日兆…池田秀一(29)
バー黒猫の裏にある蓮華院の坊主。
あらすじ:
酒場「黒猫亭」の裏庭から、女性の死体が発見される。
しかし、身元を判別すべき顔とか、指紋などはナタによって切り刻まれていた。
普通に考えれば、被害者は「黒猫亭」のマダムである"お繁"(太地喜和子)なのだが。
金田一耕助(古谷一行)が事件に介入することになったきっかけは、中学の先輩である風間からの依頼だった。
土建屋を営む風間は、お繁の愛人だ。
警察にも、そのことは隠していない。
死体の第一発見者は、黒猫亭の裏山に当たる寺院の住職である日兆(池田秀一)。
何かを隠しているのか、警察には、協力的ではない。
お繁の夫・糸島大伍(田口計)には、ふたりの愛人がいた。
ひとりは、カフェの女給らしい派手な洋装の鮎子。
女中が、糸川と歩くところを目撃している。
ただ、日傘のために顔は見えない。
もうひとりは、千代子という女。地味な顔立ちだ。
夫婦でお互いに不倫をしていたのだ・・・・。
殺人の推定日時以降、糸島夫婦を目撃した人はいない。
お繁は、化粧にかぶれたと称し店に出ていないし、亭主の糸島はまるっきりの行方不明だ。
ふたりとも大陸帰りなのだが、糸島はあくどいことをやったようだ。
ここで、証言を二転三転させたのが、日兆だった。
自然、日兆にも疑惑の目が向く。
大きな謎は、ふたつあった。
殺された女性は何者なのか、顔面をつぶした理由は何なのか。
金田一は真相に達する。
日和(ひより)警部(長門勇)は、糸島夫婦を指名手配していたが、日兆が覆した証言に基づき、鮎子犯人説に傾く・・・・。
金田一が注目したのは、糸島が愛した3人の女性だ。
妻のお繁は和服を常用したシックな女性。
対極的なのは、カフェ勤めの鮎子。
派手な洋装をしていた。
この二人に対し、千代子は地味だった・・・・。
金田一は、千代子を探す。
玉の井で女郎をしていると聞きつけ、駆けつけるが、女郎屋のヒモからいきなり殴られる。
千代子は行方不明になっていたのだ。
苦労して手に入れたお繁の写真を見せると、彼女は千代子と何度か接触していた・・・・。
金田一は、対極にあるお繁と鮎子は同一人物だと断定する。
そして、千代子を顔なし死体として処理したと・・・・。
では、亭主の糸島はどこに行ったのだろうか。
金田一は、殺されて埋められたと推理する。
実行犯は、日兆だとも・・・・。
その日兆は、鉄道自殺で亡くなる。
糸島の遺体も発見された。
いったんは抵抗したお繁も、風間に説得され観念する。
ドラマでは、この際、金田一がお繁に殺されそうになる。
(原作では、お繁の自殺で終わるが、ドラマでは、風間に見送られて送検される。)
トリックとしては、一人二役とバールストントリックの複合形だった。
黒猫は、猫ながら狂言回しの役をしていた。
そして、雰囲気を盛り上げている。
ラスト、金田一はお繁が可愛がっていた黒猫を抱きしめる。
コメント:
お繁(太地喜和子)の動機は、風間(近藤洋介)への愛だった。
その愛を成就するには、獣のような糸島(田口計)が邪魔だった。
そのために、僧侶の日兆(池田秀一)を誘惑し、実行犯にしたという、愛欲に満ちた事件であった。
ヒロインの太地喜和子が色っぽい。
このドラマにぴったりのキャラクターだ。
この人はプライベートでも色恋の道に走った女優として有名で、三國連太郎との不倫は特にマスコミの注目するところとなったようだ。
やはり、不倫は文化なのか?
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