「野良猫ロック 暴走集団'71」
1971年1月3日公開。
野良猫ロック・シリーズ第5作。
シリーズ最終作。
脚本:永原秀一、浅井達也
監督:藤田敏八
キャスト:
- 原田芳雄(ピラニア)
- 藤竜也(マッポ)
- 梶芽衣子(振り子)
- 司美智子(レモン)
- 青木伸子(シンコ)
- 高野沙里(ハナコ)
- 小磯マリ(ユメ)
- 久万里由香(アヤ)
- 夏夕介(ガッペ)
- 鈴木利哉(マー坊)
- 常田富士男(ネクロ)
- 稲葉義男(荒木義太郎)
- 地井武男(隆明)
- 范文雀(あや子)
- 郷鍈治(総統)
- 藤木孝(ゲッベルス)
- 前野霜一郎(ヒムラー)
- 小島克也(ゲーリング)
- 浜田寅彦(成島)
- 堺正章(マサアキ)
- ザ・モップス(モップス)
あらすじ:
新宿のある公園の芝生に、寝袋で眠るユーモラスな集団があった。
この集団はピラニア(原田芳雄)をリーダー格に、レモン(司美智子)、シンコ(青木伸子)、振り子(梶芽衣子)、隆明(地井武男)、マッポ(藤竜也)などがメンバーの、新宿をさすらう陽気で奇抜なフーテンたちだった。
振り子と隆明が、早起きしてじゃれあっているところへ、真っ黒なミリタリールックに身をかためた黒い親衛隊ブラックSSの5人組が突然現われた。
このブラックSSは、地方の町のボスで隆明の父親でもある荒木義太郎(稲葉義男)が、家出をした隆明を連れ戻すために差し向けたものだった。
抵抗した隆明は、はずみでSSの一人を刺し殺したが、強引に連れていかれてしまった。
振り子は隆明を庇うため殺人の罪を被り、鑑別所に入れられてしまったが、隆明会いたさに仲間と脱走し、隆明のいる町へと向かった。
一方、ピラニアたちも振り子を守るため、町へと出発した。
町へたどり着いた振り子は、SSに捕えられ、荒木邸の地下室に閉じこめられてしまった。
これを嗅ぎつけたピラニアたちは、振り子を救い出すために、町外れの無人別荘にアジトを構えた。
しかし、荒木を始めとする町の住人たちが、異様なフーテン集団を見逃すはずがなく、一体となってピラニアたちを攻撃し始めた。
隆明も一旦は父親の荒療治に変心したものの、振り子への愛が再び甦り、振り子と共に荒木邸を脱出し、ピラニアたちが立て籠もる荒れ果てた鉱山へと向かった。
やがて、町ぐるみの荒木対ピラニアたちの壮烈な銃撃戦が始まる。
降伏しようとした隆明は総統に射殺され、駆け寄った振り子もまた、銃弾に倒れた。
ダイナマイトを手にしたピラニアが総統に抱きつき、自爆し、荒木もそれに巻き込まれて死んだ。
生き残ったフーテンたちはダイナマイトを投げつけ、町の住人を追い払う。
やがて、鉱山は静寂さを取り戻した。
コメント:
野良猫ロック・シリーズの最終作である。
監督が藤田敏八のせいか、スピンオフどころか全くの別話になった『野良猫ロック』最終話。
原田芳雄と藤竜也率いるフーテン・グループvs田舎のブラックな町長という対決編だが、ラストはダイナマイト乱れ撃ちで、子供以外の主要キャストが全員死亡という話。
藤田敏八監督は、本シリーズの第2作も担当している。
その後、東宝で梶芽衣子が主演した「修羅雪姫」(1973年)、「修羅雪姫 怨み恋歌」(1974年)でも、再びメガホンを取った。
藤田敏八は、知る人ぞ知る名監督で、多くのヒット作を残している。
代表作は、「八月の濡れた砂」(1971年)、「赤ちょうちん」(1974年)、「妹」(1974年)、「バージンブルース」(1974年)、「スローなブギにしてくれ」(1981年)、「ダイアモンドは傷つかない」(1982年)、「ダブルベッド」(1983年)、「海燕ジョーの奇跡」(1984年)。
梶芽衣子の出番が少ないのが残念だが、最終作品だけに、ヤクザ映画のようにメインキャストがどんどん死んでゆくという展開になっている。
音楽ゲストは、スパイダース、モップスが登場。
劇中で歌うモップスの「御意見無用」が大人気になった!
格好良すぎる!
このシリーズの制作当時の日活は、すでに60年代の活力は失って、黄金時代を支えていたスターたちも撮影所を去ってすでになかった。
そんな空白の時間の中から、あだ花のごとく生まれてきたのがいわゆる日活ニュー・アクションと呼ばれる一連の暴力映画であった。
激しい暴力抗争をリアルに描くこうした映画群の流れを背景に、このシリーズが作られたのだ。
だが、それらの暴力映画に見られるような陰々滅々とした暗さはなく、突き抜けたような明るさが特徴であった。
時代を反映した閉塞状況のなかでエネルギーを持て余した若者たちの無為な行動や犯罪が軽いタッチで描かれている。
それは束の間訪れた泰平にどう対処すればいいのか分からない若者たちの戸惑いと苛立ちでもあったのだ。
そして結局は自滅していくしかないという物語がはからずも時代の気分と重なり合って、隠花植物のごとき栄光を担うようになるのである。
「野良猫ロック」シリーズはこうした混迷の時代を見事に象徴した映画であったのだ。
何より、梶芽衣子が太田雅子から改名して、このシリーズ5作品に主役級でずっと出演したことが、彼女の女優人生を確実に高めたのは間違いない。
梶芽衣子ここにあり!
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