「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
(原題:Once Upon a Time in... Hollywood)
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(共演者3人と監督のインタビュー)
2019年8月30日日本公開。
ハリウッド映画界を描いたスリラー映画。
レオナルド・ディカプリオとの初共演。
映像時間: 161分。
第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映。
世界興行収入:$374,343,626。
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
キャスト:
- リック・ダルトン
- 演 - レオナルド・ディカプリオ
- 本作の主人公。かつてテレビの西部劇ドラマ『賞金稼ぎの掟』で人気を博した俳優。映画スターへの道が切り開けず、キャリアの停滞に焦る毎日を過ごしている。マーヴィンからイタリア映画への出演を提案されるも、質の低いイタリア西部劇への出演は「都落ち」であるとして提案をはねつける一方で、ハリウッドでは既に「過去のヒーロー」と見なされており、将来有望な若手俳優のかませ犬的配役に起用されることがほとんどとなっている。かつては『大脱走』でスティーブ・マックイーンが主役を降りる騒ぎがあった際、3人のジョージ(ジョージ・チャキリス、ジョージ・ペパード、ジョージ・マハリス)と共に代役候補となったこともある。
- ハリウッド俳優としての将来の不安からやや情緒不安定な様子が描かれる。街中に溢れるヒッピー文化への嫌悪感を隠さない。
- クリフ・ブース
- 演 - ブラッド・ピット
- 本作の主人公。リックの親友で彼の専属スタントマン兼世話係。戦争の帰還兵で、ハリウッドからやや離れた郊外・ヴァンナイズのトレーラーハウスでピットブルのブランディと暮らしている。
- リックの仕事減少に伴ってスタントマンとしての仕事が減っている上、過去に他の出演者と暴力沙汰の騒ぎを起こしたことや妻殺しの噂があることから、現場から避けられている節がある。
- 情緒不安定さが目立つリックとは対照的に常に飄々としており、あらゆる面からリックのフォローを務める。その一方で暴力を厭わないやや粗野な一面も度々垣間見せる。
- シャロン・テート
- 演 - マーゴット・ロビー
- 本作のヒロイン。ハリウッドで売り出し中の若手女優。
- 純粋で無邪気な性格の26歳。夜な夜なナイトパーティに繰り出したり、自宅でも音楽を大音量でかけて躍るなど若者らしい振る舞いが目立つ。
- 自身が出演する映画を上映する映画館に出演者として訪れ無料で鑑賞した際には、自らの演技に対する観客たちの好意的なリアクションを前にして素直に喜ぶ様子を見せた。なお、この時上映されていた『サイレンサー/破壊部隊』の映像は実際のものが使用されている。
- ポランスキーとともにシエロ・ドライブに引越ししてきたが、隣人であるリックとは直接の面識はなかった模様。
ハリウッド関係者
- ロマン・ポランスキー
- 演 - ラファル・ザビエルチャ
- 新進気鋭の映画監督でシャロンの夫。シャロンとともにシエロ・ドライブに引越してきたが、シャロンと同様隣人であるリックとは直接の面識はない。
- 撮影のために家を留守にしていることが多く、マンソン・ファミリーの襲撃の際も制作のためロンドンに滞在していた。
- マーヴィン・シュワーズ
- 演 - アル・パチーノ
- 西部劇をこよなく愛する映画プロデューサー。お気に入りの俳優の1人であるリックのキャリアを案じており、イタリア映画出演を提案・仲介する。
- サム・ワナメイカー
- 演 - ニコラス・ハモンド
- 『対決ランサー牧場』の監督。ヒッピー的な役作りを拒むリックに対して、「過去の役を感じさせたくない」「主役の若手俳優を輝かせたい」と主張した。
- その一方で、本番でリックが見せた怪演を手放しで絶賛した。
- ランディ・ミラー
- 演 - カート・ラッセル
- スタントマンのコーディネーター。クリフの妻殺しの噂を信じている他、前述のブルースとのいざこざからクリフの起用を避けている。
- 演じるラッセルは本作のナレーターも務めている。
- ジャネット・ミラー
- 演 - ゾーイ・ベル
- ランディの妻。ランディ以上にクリフを毛嫌いしている。ゾーイ・ベルはジャネット役以外にも映画内のスタントもいくつか担当している。
- ジェームズ・ステイシー
- 演 - ティモシー・オリファント
- 『対決ランサー牧場』で主役のジョニー・マドリッド役を演じる若手俳優。
- リックとの会話で、悪気は無いながらもリックの傷を抉るような質問をしてしまう。
- トルーディ・フレイザー
- 演 - ジュリア・バターズ
- 『対決ランサー牧場』でリックと共演した子役俳優。8歳ながら俳優として高い意識とこだわりを持っており、リックに対しても大人びた態度を見せる。
- 小説の主人公と自らの境遇を重ね合わせて思わず涙ぐむリックを励ました他、一転悪役として真骨頂を見せたリックに「今までの人生で最高の演技」と絶賛した。
- ウェイン・モウンダー
- 演 - ルーク・ペリー
- 『対決ランサー牧場』でスコット・ランサー役を演じ、リックと共演する俳優。
- ブルース・リー
- 演 - マイク・モー
- 若手カンフー俳優。『サイレンサー/破壊部隊』ではシャロンのアクション指導も行なった。
- クリフが起こした騒動の相手。ある日の撮影前、アクション俳優としての心得を説いた際にそれをせせら笑ったクリフに喧嘩を仕掛け、投げ飛ばされた際にジャネットの車を傷つけた。人気テレビドラマシリーズ『グリーン・ホーネット』の「カトー」役で出演していたため、クリフから「カトー」と呼ばれている。
- スティーブ・マックイーン
- 演 - ダミアン・ルイス
- シャロンの友人で、『大脱走』などに出演するハリウッド・スター。
- 本作では、リックと正反対にテレビスターから映画スターへの転向に成功した者として描かれる。
- プレイボーイ・マンションのパーティーに参加していた際にはポランスキーが後に「やらかす」ことを示唆するような発言をしていた。
- ジェイ・シブリング
- 演 - エミール・ハーシュ
- シャロンの元婚約者で友人のヘアスタイリスト。スティーブ・マックイーンのヘアメイクを担当する。
- 家を留守にするポランスキーに代わりシャロンの世話役を担っており、日常的にポランスキー邸に出入りしている。
- マックイーンによればシャロンに未練があるとのことで、常に夫妻と一緒にいるのは彼女とポランスキーとの不和を見逃さないようにするためらしい。
- リックの出演作にも精通している様子である。
- コニー・スティーヴンス
- 演 - ドリーマ・ウォーカー
- シャロンの友人で女優。プレイボーイ・マンションのパーティーにスティーブやジェイと共に参加していた。
- ミシェル・フィリップス
- 演 - レベッカ・リットンハウス
- シャロンの友人で歌手、女優。ママス&パパスのメンバー。プレイボーイ・マンションのパーティーに参加していた。
- キャス・エリオット
- 演 - レイチェル・レッドリーフ
- シャロンの友人で歌手。ママス&パパスのメンバー。プレイボーイ・マンションのパーティーに参加していた。
- ジョアンナ・ペティット
- 演 - ルーマー・ウィリス
- シャロンの友人で女優。事件当日の昼頃にシャロン宅を訪れていた。
マンソン・ファミリー
- チャールズ・マンソン
- 演 - デイモン・ヘリマン
- カリフォルニア州にて、カルト集団「マンソン・ファミリー」を率いて集団生活をしていたカルト指導者。
- 作中では「チャーリー」とのみ言及されている。
- プッシーキャット
- 演 - マーガレット・クアリー
- クリフを気に入り、彼をスパーン映画牧場に招く。実際のファミリーには存在しない架空のキャラクター。
- テックス
- 演 - オースティン・バトラー
- ポランスキー邸襲撃グループの1人。ファミリー内ではマンソンに次ぐ地位。乗馬が得意で、スパーン牧場では乗馬体験ツアーを提供している。本名はチャールズ・ワトソン。
- スクィーキー
- 演 - ダコタ・ファニング
- ジョージ・スパーンの世話係。本名リネット・フロム。
- ジプシー
- 演 - レナ・ダナム
- やや年配の女性。プッシーキャットを牧場まで送ってくれたクリフを歓迎する。本名キャサリン・シェアー。
- ケイティ
- 演 - マディセン・ベイティ
- ポランスキー邸襲撃グループの1人。赤毛でウェーブのかかった髪が特徴。本名パトリシア・クレンウィンケル。
- セイディ
- 演 - マイキー・マディソン
- ポランスキー邸襲撃グループの1人。黒髪に青白い顔が特徴。本名はスーザン・アトキンスで、シャロン・テート殺害事件の主犯とされている。
- クレム
- 演 - ジェームズ・ランドリー・ヘーベルト
- リックの車のタイヤをパンクさせたことでクリフに殴られる。
- フラワー・チャイルド
- 演 - マヤ・ホーク
- リンダ・カサビアンをモデルとしたキャラクター。フラワー・チャイルドは通称だが、実際にこのように呼ばれていたわけではなく、本作劇中のみのオリジナル名。
- ポランスキー邸襲撃グループの1人だが、カサビアンは逃亡のための運転担当で邸宅内には侵入していない。本作では襲撃直前に車で1人逃げ出し、襲撃グループで唯一、凶行には加担しなかった。
- ルル
- 演 - ビクトリア・ペドレッティ
- スネーク
- 演 - シドニー・スウィーニー
- フロッギー
- 演 - ハーレイ・クイン・スミス
- サンダンス
- 演 - キャシディ・ヴィック・ハイス
- キャラクター名は、演じるハイスが自分で名付けたもの。
- エンジェル
- 演 - ダニエル・ハリス
- ジョージ・スパーン
- 演 - ブルース・ダーン
- スパーン映画牧場の牧場主。盲目で、意識も混濁していたことから、ファミリーに利用されていた。
あらすじ:
人気のピークを過ぎたテレビ俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、映画スター転身を目指し焦る日々が続いていた。
そんなリックを支えるのは、スタントマンで親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)だった。
目まぐるしく変化するハリウッドで生き抜くことに神経をすり減らしているリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。パーフェクトな友情で結ばれた二人だったが、時代は大きな転換期を迎えようとしていた。
そんなある日、リックの隣に時代の寵児・ロマン・ポランスキー監督と新進女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。
今まさに最高の輝きを放つ二人を見ながら、リックは再び俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタンに出演することを決意。
だが、1969年8月9日、映画史を塗り替える“事件”が起こり、それぞれの人生を巻き込んでいく……。
コメント:
1969年に実際に起きた、カルト教祖チャールズ・マンソンとその信奉者たちによりハリウッド女優シャロン・テートが殺害された事件を背景に、ハリウッド映画界を描いたスリラー作品。
クエンティン・タランティーノの監督第9作目であり、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットの初共演作品。
クエンティン・タランティーノ監督がレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大ビッグスターを起用し、映画界が輝いていた時代を舞台にハリウッドにオマージュを捧げた映画だ。
映画は1969年にハリウッドで実際に起きた、カルト教祖チャールズ・マンソンとその信奉者たちによる女優シャロン・テート殺害事件を題材にしている。
それに一人の俳優と彼のスタントマンをキーパーソンに、当時のハリウッド映画事情を絡めて進行する構成が上手い。
かつてテレビ西部劇の主役でスターダムの昇りつめた俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、今や人気も陰りが見え始め、映画界への転身を図ろうと焦っていた。
そんなリックを支えるのは、長年彼のスタントマンとして共に歩んできた親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)だった。
目まぐしく変わるハリウッドで、二人は完璧な友情で結ばれていた。
ある日、リックの屋敷の隣人として、時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。
輝きを放つ二人を見ながら、リックはプロデューサー(アル・パチーノ)から、イタリアでのマカロニ・ウエスタン出演を進められ、再びスターを目指してヨーロッパへ渡る。
半年後、リックは4本の主演作とイタリア人妻を伴ってハリウッドへ戻ってくる。クリフとの再会を喜ぶが、時は1969年8月9日、ハリウッドの映画史を塗り替える“事件”が起ころうとしていた…。
ラスト13分のクライマックスの中身がこちら(ネタバレ):
1969年8月9日。
シャロンは友人たちとメキシコ料理店で夕食をとったあと自宅へと帰宅し、友人たちと音楽を流しながら談笑を楽しんでいた。
同じころ、アメリカに帰国したリックとクリフは最後の2人の時間を楽しむため、愛犬・ブランディをリックの家に預けて外食し、すっかり泥酔してしまう。
2人は真夜中近くにリックの家に帰宅する。
リックはキッチンでマルガリータを作り、クリフは半年前にリックの家においていったLSD漬けのタバコを見つけ、それをふかしながらブランディの散歩に行く。
同じ時間、マンソンファミリーのテックスを含めた4人の信者がシエロ・ドライヴへとやってきた。
彼らの車のエンジン音を不快に感じたリックが外へ飛び出し、彼らに「ヒッピーが来る場所じゃないから帰れ」と怒鳴ると、テックスらは一度引き返した。
マンソンからテリーの家に住んでいる者を全員殺せと命じられていた4人は再度ポランスキー邸に向かおうとするが、1人が怖気づいて車をもって逃げていってしまった。
3人になってしまったテックスたちだが、そのうちの1人ケイティが、リックが俳優であることに気づく。
自分たちに人殺しを教えたやつを殺そうという彼女の提案に他の2人も同意し、急遽ターゲットはポランスキー邸からリックの家へと変わってしまった。
ブランディの散歩から帰ったクリフは、LSDの影響でハイになっているなかドッグフードの支度を始める。
すると、突如テックスら3人が侵入し、クリフに銃を突きつける。
もう1人の信者セイディが騒ぎで起きてきたスカーレットを脅す一方、彼らはクリフがスパーン映画牧場で見た奴だと思い出して焦りはじめる。
次の瞬間、クリフの合図でブランディはテックスの股間に飛びかかり、テックスは大声をあげて崩れ落ちた。
ナイフをもったセイディがクリフに襲いかかろうとするが、クリフが投げたドッグフードの缶が顔面に当たって血だらけになってしまう。
それでも襲いかかろうとするセイディを、クリフはブランディに合図して攻撃させる。
テックスがナイフを取り出すが、クリフは彼の太腿にそのナイフを刺し、顔を足蹴りする。
次の瞬間、ケイティがクリフの腰にナイフを突き刺してしまう。
しかし、ブチ切れたクリフは彼女の髪をつかみ、家中の壁に彼女の顔面をぶつける。
狂ったセイディは自身でガラスに突進し、そのままプールに落ちてしまう。
そしてそのまま宙に向かって発砲を繰り返す。
プールでマルガリータを飲みながらヘッドホンで音楽を聴きくつろいでいたリックは初めて事態に気づき、急いで倉庫へ向かう。彼は以前撮影で使用した火炎放射器を取り出し、セイディを焼き殺す。
警察が到着し、事情聴取を受けるリックとクリフ。
怪我を負ったクリフはそのまま病院へ運ばれる。
リックは病院へ見舞いに行くと約束し、クリフを見送る。
すると、そこへジェイがやってきて事情を尋ねる。
リックはヒッピーが自分と友達を殺そうとしたと事情を話すと、インターホン越しにシャロンが安否を心配し、自宅へ招いてくれた。
リックは、そのままポランスキー邸へ行き、シャロンとその友人たちに温かく招かれたのだった。
実際の衝撃シーンがこちら:
タランティーノ監督が試みたのは、自分が思い描く輝けるハリウッドだ。
「大脱走」の配役決定談、ブルース・リーの真実の姿、シャロン・テートが夫に読ませようと購入した本「テス」、ハリウッドの社交界など、虚実入り混じった脚本に盛り込まれた数々のエピソードがどれも面白く、映画ファンならずとも興味深い。
主役のリックとクリフ以外はほぼ実在の人物として登場するが、リックがクリント・イーストウッドをモデルとしていると思われる。一部にはバート・レイノルズがモデルとの話もあるようだ。
スター俳優のリック(=ディカプリオ)が見せる虚の姿ではなく弱い実の姿の部分がコミカルで、虚構に満ちたハリウッドの世界を引っ張る狂言回しとするならば、クリフ(=ブラピ)は、何事にも動じず、唯一自分の存在を保持し続ける強い実の象徴としてこの世界に君臨する
ブラッド・ピットが旧友ジョージを訪ねて以降のタランティーノ文法に則った目まぐるしい展開は飽きさせない。
目を白黒させながらも存分に楽しみ、映画を観たという充実感を満喫できる。
本作は批評家から高い評価を得ている。
第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品され、観客から6分間のスタンディングオベーションを受けた。
主要各賞の受賞はならなかったが、作中でクリフの飼い犬・ブランディを演じたアメリカン・ピット・ブル・テリアのサユリに、パルム・ドッグ賞が与えられている。
実際に起こったシャロン・テート事件とは、1969年8月9日に女優・シャロン・テートがチャールズ・マンソン率いるカルト教団によって、自宅を襲撃され26歳で妊娠中だった彼女が惨殺されてしまった事件である。
チャールズ・マンソンは人の洗脳に興味を持ち、自らが手を直接下すことなく洗脳されたヒッピー集団に襲撃させたという。
チャールズ・マンソンとシャロン・テートは直接の面識はなかった。
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