「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」
1982年12月28日公開。
マドンナは、田中裕子。
男はつらいよシリーズ第30作。
観客動員:228万2000人(シリーズ歴代3位)。
配給収入:15億5000万円。
脚本:山田洋次・朝間義隆
監督:山田洋次
キャスト:
- 車寅次郎:渥美清
- さくら:倍賞千恵子
- 小川螢子:田中裕子
- 車竜造:下條正巳
- 車つね:三崎千恵子
- 諏訪博:前田吟
- たこ社長:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- 満男:吉岡秀隆
- 勝三:内田朝雄
- ゆかり:児島美ゆき
- 小川絹子:馬渕晴子
- 和尚:殿山泰司
- 友男:人見明
- 測量技師:アパッチけん
- 測量技師の助手:光石研
- 工員:笠井一彦
- 観覧車の係員:桜井センリ
- 花売り:谷よしの
- 桃枝:朝丘雪路
- 御前様:笠智衆
- 三郎:沢田研二
あらすじ:
大分は湯平温泉でバイをする寅は、馴染みの湯平荘に宿をとった。
夜、寅と宿の親父、勝三が酒を飲んでいると、そこへ、ひとりの青年が現れた。
三郎(沢田研二)というその青年は、かつて、この宿で女中をしていた女性の息子で、その母がひと月ほど前に病死し、遺骨を埋めにこの地にやって来たという。
勝三は美しい三郎の母親を覚えており、彼の親孝行に感心した寅は、さっそく昔の知り合いを集め、供養をしてやる。
同じ宿に泊り合わせていた、東京のデパートに勤めている旅行中の螢子(田中裕子)とゆかりという二人の娘も、寅はその席に座らせてしまう。
翌日、二人の娘と見物をしていた寅は、車で東京に帰ろうとしていた三郎と出会い、その日は四人でドライブをすることになった。
そして夜、二人の娘と別れるときになって、三郎は螢子に付き合って欲しいと言う。
突然のことで、螢子はとまどうようにフェリーに乗り込んだ。
車で東京に帰った寅と三郎はヘ卜ヘトになって柴又に辿り着く。
とらやの家族の団らんは、母と二人で育った三郎にはとてもうらやましく思えた。
そして、三郎は自分の思いを螢子に伝えてほしいと寅に頼んで帰っていった。
一方、螢子も、寅との楽しい会話が忘れられず、とらやを訪ねた。
その日、寅は留守だったが、数日後、二人は一緒に酒を飲む。
寅は三郎の気持ちを螢子に伝える。
親のすすめる見合いを断った螢子だが、三郎は二枚目すぎると乗り気ではない。
寅の報告にガックリする三郎。
そこで寅は、螢子をとらやに招待し、彼女には知らせずに三郎も呼んだ。
ぎこちない二人だが、その日からデートをするようになった。
その頃、螢子の両親は、見合の相手の家族が螢子の素行を興信所で調べてもらった結果、彼女が特定の男性と交際していると教えられていた。
螢子は両親に、その男性について問いつめられ、涙をためてとらやに向った。
螢子は寅に「動物園の飼育係をする三郎は、チンパンジーのことしか話さず、大事なことにふれようとしない」と話す。
螢子は三郎が好きだが彼の煮えきらない態度に、今後の関係に迷っていた。
寅はそんな螢子に、好きだから余計に思っていることが言えないんだと説得する。
さくらにも励まされ、螢子は、とらやの帰路、三郎の本心を聞こうと決意、彼の勤め先を訪ねた。
話があるという螢子に、三郎も話したいことがあると、観覧車に誘った。
まず三郎が「チンパンジーがなつかなくなった。愛情がなくなったことを感じるのだろうが、それは君と知り合ってからだ……、結婚してほしい」と話した。
もう螢子は何も話すことはなかった。
結婚することを決めたという螢子の電話を聞くと、寅は、これからやって来るという二人は待たずに旅に出るのだった。
コメント:
男はつらいよシリーズ30作目。
節目に来ると、なんか嬉しい気持ちになる。
今回の寅さんはキューピット役に徹している。
その2人はというと・・・
沢田研二 X 田中裕子
後に実際に結婚しているこの2人。
この時は、とても初々しかった。
沢田研二という歌謡界のトップスターが、もし映画俳優としての道を考えていなかったら、この作品への登場は無かっただろうし、田中裕子との出会いも無かっただろう。
ジュリーの映画への本気度が、『魔界転生』などのヒットを生み、さらに彼自身の運命を変えたということだろう。
人の一念は運命も変えるということだ。
寅さんの恋愛そっちのけで終始2人の恋愛を後押しする展開は、当時は珍しかった。
しかし、これがウケたことから、その後の作品でも若者の恋を後押しする寅さんが何度も見られるようになる。
運命を変えた、この映画の「観覧車のシーン」と、当時のテレビレポーターと二人のコメントが映っている貴重な動画がこちら:
レポーターの質問に答える田中裕子は、東北弁になっているような感じ。
大阪出身なのに。
相当あがっていたのかも。
寅さんが縁で、ジュリーの第二の人生が決まったというおめでたい話。
当時は、「不倫」と言われて、ジュリーの人気が落ちたようだが、それは長い人生のひとこま。
本人がそれで新しい幸せを得るきっかけになったのであれば良いではないか。
本作に限らず、寅さんの存在や寅さんの一言で人生を生き直すことができたのは、映画の中のマドンナたちだけではない。
おそらく、一連の寅さんシリーズを観て涙した人たちの多くが、そこに癒しと明日への勇気をもらったのである。
老若男女を問わず。
山田洋次の映画に一環として流れている、「ひとの暖かさ」は、昭和から平成への生き行く人たちを勇気づけてきたに違いない。
日本の心を豊かにしてくれるこの寅さんシリーズは、貴重な文化財だ。
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