「はなれ瞽女おりん」
(はなれごぜ おりん)
1977年11月19日公開。
水上勉の同名小説の映画化。
受賞歴:
- 第1回日本アカデミー賞
- 優秀作品賞
- 優秀監督賞:篠田正浩
- 優秀脚本賞:
- 第1回日本アカデミー賞
- 優秀作品賞
- 優秀監督賞:篠田正浩
- 優秀脚本賞:長谷部慶次・篠田正浩
- 最優秀主演女優賞:岩下志麻
- 優秀助演女優賞:奈良岡朋子
- 優秀音楽賞:武満徹
- 最優秀技術賞:宮川一夫<撮影>
- 第51回キネマ旬報ベスト・テン
- 日本映画ベスト・テン第3位
- 主演女優賞:岩下志麻
- 第32回毎日映画コンクール
- 日本映画優秀賞
- 女優演技賞:岩下志麻
- 撮影賞:宮川一夫
- 第20回ブルーリボン賞
- 主演女優賞:岩下志麻
- 最優秀主演女優賞:岩下志麻
- 優秀助演女優賞:奈良岡朋子
- 優秀音楽賞:武満徹
- 最優秀技術賞:宮川一夫<撮影>
- 第51回キネマ旬報ベスト・テン
- 日本映画ベスト・テン第3位
- 主演女優賞:岩下志麻
- 第32回毎日映画コンクール
- 日本映画優秀賞
- 女優演技賞:岩下志麻
- 撮影賞:宮川一夫
- 第20回ブルーリボン賞
- 主演女優賞:岩下志麻
脚本:長谷部慶次・篠田正浩
監督:篠田正浩
出演者:
岩下志麻、原田芳雄、樹木希林、奈良岡朋子、浜村純、加藤嘉、殿山泰司、小林薫、山谷初男、不破万作、西田敏行、安部徹
あらすじ:
大正七年。
春まだ浅い山間の薄暮、おりん(岩下志麻)は、破れ阿弥陀堂で一人の大男・平太郎(原田芳雄)と出会った。
翌日から、廃寺の縁の下や地蔵堂を泊り歩く二人の奇妙な旅が始まる。
ある日、木賃宿の広間で、漂客や酔客相手におりんが「八百屋お七」を語っていた。
その時、大男はその客に酒を注いだり、投げ銭を拾い集めていた。
ある夜には、料理屋の宴席で「口説き節」を唄うおりんの声を聞きながら、大男は勝手口で、下駄の鼻緒のすげかえをすることもあった。
それからも大男は、大八車を買入れ、おりんと二人の所帯道具を積み込んで、旅を続ける。
そんな時、柏崎の薬師寺で縁日が開かれた。
露店が立ち並ぶ境内の一隅に、下駄を作る大男と、できあがった下駄をフクサで磨きあげるおりんの姿があった。
しかし、札をもらわずに店を張ったという理由で、大男は土地のヤクザに呼び出される。
大男が店を留守にした間に、香具師仲間の一人である別所彦三郎(安部徹)に、おりんは松林で帯をとかれていた。
松林の中で、すべてを見てしまった大男は逆上し、大八車の道具箱からノミを取り出すと、松原を走り去った。
やがて、渚に座りこんだままのおりんの前に大男が現れ、「また一緒になるから、当分別れてくらそう。俺は若狭の方へ行く。」と言い残すと姿を消した。
季節は秋に変り、おりんは黒川の六地蔵で出会ったはなれ瞽女のおたま(樹木希林)と共に、南の若狭方面へと向っていた。
そんな時、大男は別所殺しの殺人犯として、また福井県鯖江隊所局の脱走兵としても追われていた。
残雪を残す若狭の山に春が訪れる。
若狭の片手観音堂に来ていたおりんは、ある日、参詣人でにぎわう境内で、大男に呼びとめられた。
その夜、うれしさにうちふるえながら、おりんは初めて、大男に抱かれた。
翌日から二人はまた旅を始める。
しかし、二人の背後に、憲兵中尉・袴田虎三(小林薫)の姿が迫っていた。
コメント:
原作は、水上勉のが1975年に発表した同名小説(新潮社刊)。
瞽女(ごぜ)とは、「盲御前(めくらごぜん)」という敬称に由来する、日本の女性の盲人芸能者のことである。
近世までにはほぼ全国的に活躍し、20世紀には新潟県を中心に北陸地方などを転々としながら三味線、ときには胡弓を弾き唄い、門付巡業を主として生業とした旅芸人である。
女盲目(おんなめくら)と呼ばれる場合もある。
この映画は、そんな瞽女でありながら、ほかの瞽女とは別行動をとる、孤独な離れ瞽女という境遇の女性を描いた作品。
盲目というだけで人並みならぬ苦労があることは想像できるが、一人で生きて行くというのだ。
掟を捨てて恋に生き、はなれ瞽女として一人旅する主人公の凛とした生きざまを演じた岩下志麻の役者魂がすごい。
この年の数々の映画賞で最優秀主演女優賞に輝いた。
多くの作品で存在感を見せた岩下志麻だが、この作品も彼女の記念碑になる貴重なものとなった。
酷寒の冬の冷気を孕んだ風景描写が秀逸で、岩下志麻のミステリアスな美しさとよく馴染んでいた。
また、瞽女を巡る当時の文化的背景や、社会的セーフティネットのあり方が理解できる貴重な映画でもある。
映像がとにかく美しい。
雪の中を連なって歩く瞽女たち。
水浴びをするおりん。
荷車におりんを乗せて旅をする平太郎。
ボロボロになりながら門付けをするおりん。
その果ての無残な顛末から漂うやるせない哀しみに胸を衝かれる。
主役の岩下志麻をはじめ、原田芳雄、樹木希林、奈良岡朋子など脇役陣も隙がない。
特に樹木希林の演技は流石。
観た後にジワジワと心に響いてくる作品。
名作である。
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