「ならず者」
1956年5月10日公開。
木こりの飯場で展開される荒くれ男と女の物語。
脚本:木村武、中田晴久
監督:青柳信雄
出演者:
三船敏郎、志村喬、岡田茉莉子、太刀川洋一、白川由美、清川虹子
あらすじ:
欝蒼たる森林に覆われた山奥の松岡飯場に不敵な面魂の男が入って来た。
渡り山稼人の寛次(三船敏郎)である。
傍若無人の寛次は来る早々、樵夫の惣兵衛と喧嘩を始めたが、組頭の捨造(志村喬)は、酒と賭博は好きだが腕っこきの寛次に目をかけ彼を使うことにした。
山は今、雨が降らないので原木を流し出せず困り切っていた。
賃金を受取りに親方の所に行った帳場の津田は半分しか貰えずに帰って来た。
飯場で景気直しの酒盛りが開かれた夜、寛次は、賄場で湯上りの鏡をのぞいている賄い女・春子(岡田茉莉子)を不意に抱きしめた。
だが「バクチ打ちは嫌い」という春子の言葉に寛次は狂ったように表へ飛出し木を伐り倒していた。
そのころ、身売りした妹の病気を知った古川(太刀川洋一)は一人悩んでいた。
古川を一途に思う賄いのユキ(白川由美)は、それを聞いて有金全部を差し出す。
だが、ユキの行末を案ずる賄頭の四十後家・おたき(清川虹子)は、ユキに代って自分が氷年貯めた金を投出し、古川に山を下らせた。
一方、寛次は、漸く入った作業員達の給金を残らずバクチで巻上げてしまった。
作業員達の窮状を思う捨造は烈火の如く怒り、寛次の巻上げた金と自分の貯金を賭け勝負した。
だが再び寛次が勝ち、泣崩れる春子を後に寛次は山を下った。
その寛次を暗闇の山道に作業員達が待ち伏せて襲い、寛次は谷底に突き落された。
その頃、おたきは賄場の釜の上に札束と貯金通帳を発見、その傍に「バクチは金輪際やめねえ」という寛次の書き置きがあった。
傷ついた寛次を春子がやっと探し求め、二人は初めて抱擁を交した。
捨造とおたきが二人の仲人を買って出るため夫婦になろうと話している頃、外に激しく雨が降り出した。
狂喜した作業員たちの叫びが山々にこだました。
コメント:
非常に珍しい木こりたちが寝起きする飯場を舞台にした男女の物語である。
と言っても、甘ったるい恋愛映画ではない。
木こりの飯場におけるハードな生活とそれを仕切る親方、飯炊き女たちの生活と恋が描かれる。
三船敏郎が渡りの木こりを演じているが、彼は酒とばくちが大好きというぶっ飛んだ傍若無人の問題児。
この飯場に前にもいたことがあるので態度がでかい。
それを押さえるのが清川虹子の飯炊きばあさん。
その気っぷの良さに組頭の捨造(志村喬)は一目置いている。
岡田茉莉子が演じている若い飯炊き女・春子は、三船敏郎扮する寛次に心引かれている。
大ヒットシリーズ『宮本武蔵』で、武蔵に夢中になって追い掛け回す茜という女を思い出させる。
さらにインテリ木こりの古川とユキも深い仲に。
ばくちを巡って男同士の諍いがあったりと、物語は進んでいき、結局は落ち着くところに落ち着く。
山を下りる三船を千秋らが襲うが、三船は金を一切持っていない。
三船は、飯場に残してきたのである。
志村は言う:
「あいつは俺たちの金を持っていくような男ではない」。
最後に、大雨が降りだし、全員の大歓喜の中で、三船と岡田、太刀川と白川、さらに志村と清川が結ばれることを示唆してエンド。
ここに描かれるのは何か。
それは、飯場のごとき、映画の撮影所の人間全員への賛歌と連帯だと叫んでいるようだ。
何といっても、三船敏郎がはっちゃけている。
腕っぷしは強いし、ばくちも強い。
そして、女には目が無い。
こういう役柄がとにかくピッタリの三船敏郎の演技は、観る者をスカッとさせてくれる。
この映画は、日本映画専門チャンネルで観れるようだ。