「愛の流刑地」
2007年1月13日公開。
至高の純愛を描く官能ラブストーリー。
興行収入:13.9億円。
R15+指定。
原作:渡辺淳一「愛の流刑地」
監督・脚本:鶴橋康夫
キャスト:
- 村尾菊治 - 豊川悦司
- 入江冬香 - 寺島しのぶ
- 織部美雪 - 長谷川京子: 検事
- 入江徹 - 仲村トオル: 冬香の夫
- 脇田俊正 - 佐藤浩市: 刑事
- 北岡文弥 - 陣内孝則: 菊治の弁護士
- 魚住祥子 - 浅田美代子: 冬香の友人
- 稲葉喜重 - 佐々木蔵之介: 地検副部長/織部の上司
- 村尾高子 - 貫地谷しほり: 菊治の娘
- 関口重和 - 松重豊: 刑事
- 久世泰西 - 本田博太郎: 裁判長
- 菊池麻子 - 余貴美子: 菊治が行き付けのバーのママ
- 刑事 - 六平直政
- マンションの管理人 - 三谷昇
- 裁判所廷吏 - 木下ほうか
- 検事 - 阿藤快
- 検察事務官 - 中村靖日
- 佐和 - 高島礼子: 菊治の別れた妻
- 木村文江 - 富司純子: 冬香の母
- 中瀬宏 - 津川雅彦: 出版社役員、菊治の友人
あらすじ:
ある夏の日。
作家・村尾菊治(豊川悦司)の仕事部屋。
不倫関係にある村尾と人妻・入江冬香(寺島しのぶ)が愛し合っている。
高まりの中で冬香は「本当に愛してるなら、私を殺して」と村尾に懇願した。
その言葉に誘われるように冬香の首を絞めて殺してしまう村尾。
自ら警察に連絡して逮捕された。
村尾と冬香の出会いは前年の秋。
取材で京都を訪れた村尾は、知人から自著の愛読者である冬香を紹介されたのだった。
二人はすぐに慕い合うようになった。
住む場所も離れ、お互いに家庭を持っている二人だったが、関係を結ぶようになるのは時間の問題だった。
僅かな時間の逢瀬のために東京から京都へ新幹線で通う村尾。
やがて夫(仲村トオル)の転勤によって、冬香が東京に越してきてからは、益々二人の不倫関係は燃え上がっていく。
ある晩、情事の最中に冬香は「殺して」と村尾に懇願した。
とまどってしまう村尾に「意気地なし」という冬香。
そんなことがあってからしばらくして殺人は現実のものとなってしまったのだった。
取調べの中では、女に頼まれて殺したという村尾の証言は「言い逃れ」と見なされてしまう。
担当の女性検事・織部(長谷川京子)はどこか冬香の気持ちに共感を持ち始めていた。
やがて裁判が始まり、冬香と夫の間が冷め切っていたことなどが明らかになっていく。
そして事件直前に冬香を送り出した実母(富司純子)の証言。
その時の冬香の様子はいつもと違っていたと言う。
しかし結局これといった決め手の無いままに裁判は終わり、村尾は殺人罪で懲役8年の刑を宣告された。
ある日、一人独房に佇む村尾の元に冬香の実母から郵便が送られてきた。
中には冬香にあてて村尾がサインした村尾の著作、そして冬香からの手紙が入っていた。
その手紙には、愛無き家庭生活を悲しみ、村尾との禁じられた愛の絶頂で命を絶ちたいという冬香の決意が綴られていた。
それを読んだ村尾は、冬香の強い意志を噛み締め、「俺はやはり選ばれた殺人者だった」と呟くのだった。
コメント:
ベストセラー作家・渡辺淳一の小説「愛の流刑地」を映画化。
けっこう重い内容の映画である。
愛するものの手にかけられて死にたいという女性の気持ちをテーマにした作品だが、こういう気持ちははたして実際にあり得るのか。
なぜ死にたいかというと、夫との間に全く愛が存在していないからだという。
それなら別れたら良いのに、なぜそうしないのか。
愛人のトヨエツを本当に愛しているなら、すべてを捨てて二人で逃避行というのがノーマルな生き方だ。
もしくは、愛する二人の前途が絶望的なら、心中だ。
これもよくあるパターンだ。
もしかすると、このヒロインは、夫とはもう二度と会いたくない。
だが、今の愛人とこれから二人で新しい生活を始めるエネルギーも無い。
だから愛し合っている瞬間にあの世に行ってしまいたい。
という短絡的な気持ちになって、愛人の手で天国に行ってしまったのかも知れない。
愛する人を失いたくない女性の場合だと、男を独占したい欲望が高じたら、「阿部定」のように、男のシンボルを奪う行動に出るかも。
どうやらこの映画はそういう欲求とはまた別のようだ。
渡辺淳一が描く男女のラブストーリーは常人には理解できないものが多いようだ。
『失楽園』という大ヒット作品のラストは、死後硬直の最も強い状態で、結ばれたまま死亡して冷たくなっていた二人の姿だ。
これも現実的ではない。
ストーリーを別にして観てみると、トヨエツが最初に寺島しのぶを見て恋に落ちる瞬間の鮮やかさ。
愛 そして性欲に溺れる事に恐れる寺島の少女の様な 恐れ戸惑い。
主人公が「作家」である事によるポエジー。
裁判シーンに見るインテリジェンスの応酬。
そして社会倫理と個人価値観の相容れぬ相剋等。
恋愛映画の要所はしっかりと押さえられている。
トヨエツはやはりかっこいいし、ヒロインの寺島しのぶの愛欲シーンもなかなかの熱演で、ヌードも美しい。
彼女の母を演じるのが、実の母の富司純子というのはどうも理解に苦しむが。
佐藤浩市はこの事件を担当する刑事を演じているが、こういう低レベルの役は役者の無駄使いというものだ。
もっと安いギャラの俳優でも構わないだろう。
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