横溝正史の映画 「悪魔の手毬唄」 市川崑監督と石坂浩二がタッグを組んだ大ヒット作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「悪魔の手毬唄 」

(あくまのてまりうた)

 

 

悪魔の手毬唄 予告編

 

悪魔の手毬唄 スナップ写真

 

1977年4月2日公開。

横溝正史の同名小説の映画化。

配給収入:7億5500万円。

 

原作;横溝正史「悪魔の手毬唄」

脚本:久里子亭

監督:市川崑

 

キャスト:

  • 金田一耕助:石坂浩二
  • 多々良放庵:中村伸郎
  • 青池リカ(亀の湯の女主人):岸恵子
  • 青池歌名雄(リカの子):北公次
  • 青池里子(歌名雄の妹):永島暎子
  • お幹:林美智子
  • 別所千惠(恩田幾三と春江の子):仁科明子
  • 別所春江:渡辺美佐子
  • 別所辰蔵(春江の弟):常田富士男
  • 日下部是哉(千恵のマネージャー):小林昭二
  • 由良泰子(歌名雄とは恋仲):高橋洋子
  • 由良敦子(泰子の母):草笛光子
  • 由良五百子(泰子の祖母、由良の隠居):原ひさ子(ノンクレジット)
  • 由良敏郎(泰子の兄):頭師孝雄
  • 由良栄子:川口節子
  • 仁礼文子(恩田と司咲枝の子):永野裕紀子
  • 司咲枝(仁礼嘉平の妹、仁礼文子の実母):白石加代子
  • 仁礼嘉平:辰巳柳太郎
  • 仁礼直太:大羽吾朗
  • 仁礼流次:潮哲也
  • 仁礼路子:富田恵子
  • 立花捜査主任:加藤武
  • 中村巡査:岡本信人
  • 中村巡査の妻:木島幸
  • 野津刑事:辻萬長
  • 鑑識員:日笠潤一
  • 村上五郎:大和田獏
  • 作業服の男:湯沢勉
  • 村役場の男:原田力
  • 野呂十兵衛:三木のり平
  • 野呂の妻:沼田カズ子(ノンクレジット)
  • 井筒いと:山岡久乃
  • 権堂医師:大滝秀治
  • 磯川警部:若山富三郎

 

 

あらすじ:

古い因襲に縛られ、文明社会から隔離された岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村(オニコベムラ)。

青池歌名雄(北公次)は、葡萄酒工場に勤める青年。

歌名雄には、由良泰子(高橋洋子)という恋人がいたが、仁礼文子(永野裕紀子)もまた歌名雄が好きであった。

この由良家と仁礼家は、昔から村を二分する二大勢力であった。

しかし、二十年前に、恩田という詐欺師にだまされ、それ以来、由良家の勢いは止まってしまい、逆に仁礼家が前にもまして強くなった。

その時、亀の湯の源治郎、つまり歌名雄の父親が判別のつかない死体でみつかった。

この事件を今も自分の執念で追いかけているのが磯川警部(若山富三郎)。

磯川は、ナゾを解くために、金田一耕助(石坂浩二)に調査を依頼する。

金田一は、最初に恩田と特にかかわりがあった多々良放庵(中村伸郎)に会う。

その頃、村では大騒ぎ。

というのも、別所千恵(仁科明子)が、今では人気歌手・大空ゆかりとなり、今日はその千恵の里帰りの日であった。

その晩、千恵の歓迎会の時に、第一の殺人事件が起きた。

泰子が何者かによって殺されたのだった。

そして、泰子の通夜の晩、葡萄工場の発酵タンクの中に吊り下げられて死んでいる文子を発見。

この二つの殺人事件には、この地方に伝わる、手毬唄の通りに行なわれていることを金田一は発見。

そして、文子の通夜の晩、犯人は、千恵に入れかわっている里子(永島暎子)を殺してしまう。

この犯人は、青池リカ(岸惠子)で、里子は、母親が犯人であることを知り、千恵の身がわりになったのである。

金田一の捜査により、恩田と源次郎は同一人物であることがわかる。

そして、恩田=源次郎は、千恵、泰子、文子の実の父親であった。

リカは、それらの娘たちと血のつながる歌名雄をいっしょにできないと思い、娘たちを殺してしまったのである。

リカは、犯行を自供後、沼に入って自殺を測る。

 

 

コメント:

 

横溝正史のミステリー小説を映画化。

市川崑監督版金田一耕助シリーズの中で「犬神家の一族」「獄門島」と並ぶ人気作品と称されている傑作ミステリー映画。
鬼首村を舞台に起こった仁礼家と由良家の娘たちが殺される殺人事件の謎が、20年前に起こった殺人事件と鬼首村に伝わる手毬唄が繋がっていることの関連を金田一耕助が紐解いていくミステリー。

 

 

仁礼家と由良家の根深い対立をバックに、20年前の殺人事件の加害者であり詐欺師の恩田と被害者の青池源治郎の驚きの正体。

20年前の夫が殺された事件に囚われている青池リカ。

リカを20年前の殺人事件の呪縛から解き放ってやりたい磯川警部の想い。

手毬唄になぞらえた凄惨でド派手な残酷美のある見立て殺人現場。

これらの要素を綿密に映像化した市川崑の演出力が際立つ作品。

 

 

昔の山村に本当にありそうな因習深い怨念の世界をおどろおどろしく見事に再現したスタッフと出演者たちが素晴らしい。

ここまであり得ない展開があるのかと思えるややこしい人間関係を小説化した横溝正史の文章力もすごいが、それを映画化した市川崑監督の頭脳と演出力に敬服する。

市川監督が以前から気に入っていた女優である岸恵子をわざわざパリから呼んで主演させている。

やはり市川崑と岸恵子なくしてこの映画は成立しなかったのではないだろうか。

 

 

岸恵子が演じる青池リカという殺人犯の動機に秘められた悲しい秘密と愛を絡めて描いている。

以前は「君の名は」を始めとするメロドラマの女王として名を馳せた岸恵子だが、本作以降、ミステリー映画にもたびたび出演している。

さまざまな配役をこなしてきた岸恵子だが、本作での連続殺人犯という役どころは、相当勇気が必要だったのではなかろうか。

下手をしたら、これまでの偉大な業績を不意にするリスクもあったと思われるが、単なる殺人犯ではない数十年にわたる深い苦しみと恨みを持っての苦渋の犯行だったことが観客にも理解できるラストになっており、さすがこの女優は素晴らしいと改めて感じさせる作品だ。

 

 

石坂浩二の扮する金田一耕助が、時々滑稽だが、最後にしっかり事件の全容を解き明かす姿は観客を納得させる。

本作を含めて市川崑版金田一耕助を5作品演じているが、この俳優は常に礼儀正しく、明朗で、ハンサムで色気もあり、画面を明るくさせてくれる。

このような陰鬱で奇怪な部分が多いミステリー・ホラー映画であっても、その独特の雰囲気で独自の横溝正史の世界を見せてくれている。

それが観る側にとって大きな救いになっているのだ。

 

 

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