「舞妓はん」
1963年7月27日公開。
橋幸夫とのダブル主演作品。
倍賞千恵子の舞妓姿が美しい。
脚本:柳井隆雄、元持榮美
監督:市村泰一
出演者:
橋幸夫、倍賞千恵子、志村喬、千之赫子、五月女マリ、浪花千栄子、萬代峰子、中村芳子
曽我廼家明蝶
あらすじ:
祇園の舞妓・小美知(倍賞千恵子)は八年ぶりで小学校の同級生・瀬川孝夫(橋幸夫)に逢い、それから急速に親しくなった。
一時は流しの歌手をしていた孝夫は、いまは料亭「夕月」で亡父の友・坂巻(志村喬)につき、板前の修業をしていた。
二人の仲が知られて小美知はお茶屋の女将・志津子(萬代峰子)や置屋の富代(浪花千栄子)に叱られた。
彼女たちは製薬会社専務の尾崎を小美知の旦那にしようと躍起になっていたのだ。
重なる強談判や、「夕月」に客がつかぬように志津子が手を打ったりしたため、小美知は泣く泣く決心しようとした矢先、こんどは踊りの家元の若師匠が彼女の踊りを見染めて正式に縁談をもちこみ、志津子たちはその方に乗り気で話をすすめる。
小美知は孝夫にこのことを訴え、姐さん芸者・美代次(千之赫子)、舞妓・豆太郎(五月女マリ)の応援を得て、話し合いで縁談を断ろうとしたが、勝手に結納までかわされてしまい、ついに孝夫と逃げる約束をした。
その約束の温習会の日、美代次の急病で代役に立つことになり、孝夫と逢うことができなくなった。
裏切られたと思った孝夫は、もとの流し仲間の間に姿を消した。
式の日も近づき、必死で心当りのバーを回って孝夫にめぐり逢った小美知は、わびしい旅館で彼に体を与えようとした。
「いけない、家元の奥さんになるのが、君にはいちばんふさわしいんだ。僕も坂巻さんのところへ帰って一人前の板前になるよう頑張るよ。君に負けずに……」と孝夫は言った。
そして、小美知は孝夫に求められるまま、あでやかに舞って見せるのであった。
コメント:
この映画は、当時すでに歌謡界の若手スターだった橋幸夫のシングル「舞妓はん」のヒットを受けて、橋幸夫と倍賞千恵子との悲恋の物語を映画化したものである。
橋幸夫の板前姿がいなせで、カッコいい。
倍賞千恵子の舞妓姿も初々しく、踊りも綺麗である。
やはり、SKDの優等生は、和服の着こなしもちゃんと様になっているし、舞妓としての所作も綺麗だ。
物語自体は特に印象的なシーンはないが、京都を舞台にした舞妓の世界に住む倍賞千恵子の姿が見れるというだけで当時は話題になった。
『下町の太陽』とは全く異なる、京の舞妓の世界も倍賞千恵子の知名度アップには役立った。
また、天下の橋幸夫とダブル主演したこともプラス効果になっている。
東京の下町の庶民的な印象に加えて、京のお金持ちの世界でも美しい姿を見せてくれたのは、ファンにとってうれしかっただろう。
主題歌にもなっている橋幸夫の「舞妓はん」。
これは、当時ビクターでヒット曲を連発していた、作詞家・佐伯孝夫と、作曲家・吉田正の名曲である。
この歌の歌詞は以下の通り:
1. 花のかんざし重たげに 聞いておくれやすかと 舞妓は言うた
お座敷帰りの祇園町 聞けば 哀しい物語
京はおぼろ夜 涙月 加茂の流れも 泣いていた
2. 踊り上手で 年頃も丁度同じくらいで 似ていたそうな
命と誓った恋一つ 抱いてお墓に眠るそな
都踊りの初舞台 母のつもりで踊るとか
3. 桜がくれに清水の 別れ道で舞扇 あの妓はくれた
二人のこの恋いつまでと 思や 気になることばかり
明日は参ろか その墓へ 恋の花咲け 京の春
この映画は、TSUTAYAでレンタル可能だが、VHSのみのようだ: