渡瀬恒彦の映画 「震える舌」 破傷風に侵された少女と、その両親を題材にした異色作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「震える舌」

 

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「震える舌」 予告編

 

1980年11月22日公開。

破傷風に侵された少女と、その両親を題材にした異色作。

 

原作:三木卓「震える舌」

脚本:井手雅人

監督:野村芳太郎

 

キャスト:

  • 三好昭 - 渡瀬恒彦
  • 三好邦江 - 十朱幸代
  • 三好昌子 - 若命真裕子
  • 能勢(昌子の主治医) - 中野良子
  • 江田 - 越村公一
  • 小児科医長 - 宇野重吉
  • 昭の母 - 北林谷栄
  • 昭の兄 - 梅野泰靖
  • 山岸 - 蟹江敬三
  • 山岸の妻 - 日色ともゑ
  • 貞恵 - 中原早苗
  • 私立病院医師 - 矢野宣

 

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あらすじ:

東京のベッド・タウンである千葉郊外の団地に三好昭(渡瀬恒彦)と妻の邦江(十朱幸代)、娘の昌子(若命真裕子)の三人家族は住んでいる。

その付近には、まだ葦の繁みがあり、昌子は湿地の泥の中を蝶を追って捕虫網をふりまわしていた。

一人っ子の昌子はおとなしく、無口な少女だ。

昌子はすんでのところで珍しい蝶を取り逃がしてしまった。

その晩、昌子は夢を見た。

蝶がぐんぐん自分に迫り、目の中に飛び込んで来た。

「こわいよ」と叫ぶ昌子。

かけつけてきた昭は、ぞっとする何かを感じ、身震いするのだった。

数日後、母の邦江は昌子の小さな異常に気づいた。

食事中、昌子は食物をポロポロこぼし、トイレに立った後姿は鵞鳥のような歩き方をしている。

風邪かなと邦江は心配した。

しかし、その直後、昌子は絶叫をあげて倒れた。

白い歯の間に小さな赤い舌がはさまってもがいていた。

邦江は舌をはずそうとするが、昌子の顎はけいれんして動かない。

昭はとっさに箸をくわえさせた。

救急車で病院へ運ばれる途中も、昌子の発作は続いた。

舌を噛まないように差し込んだ昭の指はくい破られ、血が吹きだしていた。

大学病院で、昌子は医師団に裸にされ、何時間も調べられた。

「テタナスだ!」と叫ぶ医師たち。

テタナスとは、幾億年も昔、まだ人類などいない頃、地球に存在した微生物だ。

酸素を嫌うこの微生物は、その後絶滅したかに思われたが、湿地の泥の中や鉄のサビの中など、酸素の少ない場所にじっとひそんでいたのだ。

テタナスは、ほんの僅かな傷口から人間の体内に侵入し、二〇グラムで日本を絶滅させるという。

そのテタナスが昌子の体の中に凄みついたのだ。

テタナスに対抗するためには光と音を遮断することが絶対に必要であるという。

昌子は暗い病室の中でビニールの酸素テントをかぶされ、ベッドの枠に手足を縛りつけられている。

噛み合った歯はへし折れ、金属のエア・ウェイがくわえさせられている。

担当女医の能勢(中野良子)は、テキパキと合理的な処置を下すが、近代医学はテタナスを打ち破ることが出来るのか。

昌子はうめき声をあげ、体を弓なりに反らせる。

これ以上反ったら、背骨が折れてしまう。

昭、邦江、能勢の不眠の数日が続く。

もうろうとする昭の頭に「昌子に噛まれた指の傷から、奴等が入り込んだのでは」という恐怖が生まれた。

邦江も「わたし、うつっちゃった。死んでしまうんだわ」と妄想に取りつかれた。

今、三人の親娘は完全にテタナスのとりことなっていた。

平和な家庭は、一転して、底知れぬ地獄の中に投げこまれてしまったのだ。

 

映画「震える舌」(1980、松竹)を見た。恐るべき子役の演技。 - fpdの映画スクラップ貼

 

コメント:

 

この映画の原作は、芥川賞作家・三木卓が1975年に発表した小説。

河出書房新社より刊行された。

 

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破傷風菌(テタノスパスミン)に侵された少女と、その両親を題材にした作品。

三木が自分の娘が破傷風菌に感染した時のことをモチーフとして描いている。

 

本作は、破傷風に感染した娘とその家族の闘病を、ホラーチックなまでに恐ろしく描いた映画。
ただし、残酷なシーンは最小限にとどめ、両親の心理描写や繰り返される発作への恐怖心をメインに描写することで、嘘くささはなくリアルな気持ちで観られる。

震える舌 | きまぐれ精神科医の独り言

娘の病への恐怖心が、いつのまにか娘への恐怖心へ変わり、自分にも感染した、娘と同じ苦しみを受けることができる、娘と一緒に死ぬ、という妄想へと繋がる。
病気の子供を前に、代わってあげたいという親がいるが、こういうことなのかもしれない、こうやって壊れていくのかもしれないと鳥肌がたった。
今ほどに患者の家族へのケアがなく、家族の闘病の負担が多い時代が妙にリアルに感じた。

震える舌|衛星劇場

名匠・野村芳太郎監督作品だけあって、子役を含む主演俳優の演技が素晴らしく、少ないキャスト、限られた場面設定の中、一気に引き込まれて、一気に話が駆け抜けていく演出に、脱帽する。

 

子供が破傷風に感染してから治癒するまでの親子の闘病生活を感動的に描いている。
看病する親も肉体的、精神的に参ってしまうし、担当の医師達も大変だ。
子役もすごい熱演。

渡瀬恒彦のお父さん、十朱幸代のお母さんも素晴らしい。

 

娘の父を演じた渡瀬恒彦。

これまでの渡瀬が演じていた鉄砲玉やヤクザの下っ端などは、自分の健康な体を欲望のおもむくままにさらけ出して暴力の限りを尽くし、無鉄砲な行動で命を失ってしまうものがほとんどだった。

それが何と、暴力などとは全く関係ない世界の地味な一般家庭の父親を演じている。

だが、彼の演技は真に迫っており、娘の病との戦いという別次元での世界でしっかりと存在感を見せている。

いよいよ心理劇をこなせる俳優に成長しているのだ。

 

この破傷風という恐ろしい病気は、今では生後3か月から摂取可能な「三種混合ワクチン」で予防できる病気とされている。

「三種混合ワクチン」とは、ジフテリア、百日咳、破傷風の3種類の病気のワクチンである。

1968年から全国で摂取可能になったという。

 

その前は、もしこの破傷風菌が体内に入ったら大変だったのだ。

ということは、原作者・三木の娘が破傷風菌に感染したのは、1968年より前だったという事だ。

 

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