「戦国自衛隊」
1979年12月15日公開。
戦国時代にタイムスリップした自衛隊を描くアクション映画。
配給収入:13億5000万円。
製作費:11億5000万円。
監督 - 斎藤光正
アクション監督 - 千葉真一
製作 - 角川春樹
原作 - 半村良
脚本 - 鎌田敏夫
キャスト:
- 伊庭義明三等陸尉 - 千葉真一
- 長尾平三景虎 - 夏木勲(夏八木勲)
- 三村泰介一等陸士 - 中康次
- 県信彦一等陸士 - 江藤潤
- 森下和道一等陸士 - 速水亮
- 菊池弘次一等陸士 - にしきのあきら
- 野中学一等陸士 - 三浦洋一
- 根本茂吉二等陸士 - かまやつひろし
- 丸岡正男一等陸士 - 倉石功
- 平井正芳一等陸士 - 高橋研
- 矢野隼人陸士長 - 渡瀬恒彦
- 加納康治一等陸士 - 河原崎建三
- 須賀利重一等海士 - 角野卓造
- 西沢剛一等陸士 - 鈴木ヒロミツ
- 木村治久三等陸曹 - 竜雷太
- 島田吾一三等陸曹 - 三上真一郎
- 小野章一郎三等海尉 - 辻萬長
- 高島春美一等海士 - 伊藤敏孝
- 清水英雄二等陸曹 - 加納正
- 大西里志一等陸士 - 清水昭博
- 堀健児二等陸士 - 古今亭志ん駒
- 関おさむ二等陸士 - 佐藤仁哉
- みわ - 小野みゆき
- 新井和子 - 岡田奈々
- ゆい - 絵沢萌子
- 栗林孫市 - 大前均
- 石庭竹秀 - 工藤堅太郎
- 館川勝増 - 片岡五郎
- 浅葉頼親 - 内田勝正
- 直江文吾 - 岸田森
- 細川藤孝 - 石橋雅史
- 黒田長春 - 中田博久
- 真田昌幸 - 角川春樹
- 足利義昭 - 鈴木瑞穂
- 本願寺光佐 - 成田三樹夫
- 九条義隆 - 仲谷昇
- 小泉越後守行長 - 小池朝雄
- 武田信玄 - 田中浩
- 武田勝頼 - 真田広之
- 祥吉(子供) - 飯塚浩司
- 祥吉とまいの母 - 谷口香
- まい(祥吉の妹) - 大塚麻衣子
- 百姓娘 - 奈三恭子
- 百姓娘 - 高見あさ
- 百姓娘 - 今生きよみ
- 哨戒艇の女 - 夏山美樹
- 哨戒艇の女 - 長沢真紀
- 哨戒艇の女 - 末宗俊子
- 哨戒艇の女 - 久保田薫
- 哨戒艇の女 - 花園友子
- 夜這いの男 - 佐藤蛾次郎
- 夜這いの男 - 達純一
- 夜這いの男 - 永井雅春
- 小泉家重臣 - トビー門口
- 小泉家重臣 - 杉江廣太郎
- 小泉家家臣 - 加賀麟太郎
- 小泉家家臣 - 中山剣吾
- 小泉家家臣 - 鈴木登四男
- 小泉家家臣 - 橘英二
- 光佐の使者 - 江幡高志
- 文吾の使者 - 八木隆
- 景虎の側近 - 大辻慎吾
- 景虎の側近 - 沢美鶴
- 景虎の側近 - 新海丈夫
- 景虎の側近 - きくち英一
- 景虎の側近 - 辰馬伸
- 老婆 - 本間文子
- 落武者 - 宇崎竜童
- 落武者 - 中庸助
- 落武者 - 晴海勇三
- 森下のコーチ - 勝野洋
- 子供のような武士 - 薬師丸ひろ子
- 正吉 - 草刈正雄
あらすじ:
伊庭三尉を隊長(千葉真一)とする二十一名の自衛隊員は、日本海側で行なわれる大演習に参加するために目的地に向かっているとき“時空連続体の歪み”によって四百年前の戦国時代にタイム・スリップしてしまった。
東海には織田信長が勢力を伸ばし、上杉、武田、浅井、朝倉らが覇を競い合い、京へ出て天下を取ろうと機をうかがっていた時代。
成り行きから彼等は、のちの上杉謙信となる長尾平三景虎(夏木勲)に加担することになり、近代兵器の威力で勝利をもたらした。
戦いの中で、伊庭と景虎は心が通じあうなにかを感ずる。
隊員のひとり・菊池(にしきのあきら)は、恋人・和子(岡田奈々)と駈け落ちすることになっていたが戦国時代にスリップ、和子は約束の地で菊池を待ち続けた。
三村(中康次)は農家の娘・みわ(小野みゆき)に出会い、恋に落ちていく。
そんな中で、矢野(渡瀬恒彦)は、自分たちだけで天下を取ろうと、加納や島田を誘って反逆を起こし、魚村を襲い、手あたりしだいに女を犯すが、伊庭たちの銃撃のはてに殺される。
近代兵器を味方につけた景虎は、主君・小泉越後守(小池朝雄)の卑怯さに我慢がならず、春日山城で斬り殺し、天守閣からヘリコプターにぶら下がって脱出する。
そして戦車が春日山城を陥落させた。
その勢いで景虎と伊庭は京へ攻め上がろうとする。
景虎は浅井・朝倉の連合軍と戦い、伊庭は川中島で武田信玄(田中浩)と戦闘をまじえることになった。
「歴史がなんだっていうんだ。俺たちが歴史を書きかえるんだ」と、自衛隊員と二万人の戦いが始まった。
戦車、ジープ、ヘリを駆使しての互角の勝負、そして目指す武田信玄の首を取ることにも成功するが、その激しい戦いの中で、伊庭たち隊員も死んでいった。
隊員の中で生き残ったのは、農夫となってその時代に生きようと決意した根本(かまやつひろし)だけであった。
ネタバレ:
伊庭義明三等陸尉以下、近代武器で武装した21名の陸上自衛官および海上自衛官は、演習に参加するための移動時に突然、新潟県の補給地ごと戦国時代にタイムスリップしてしまった。
戸惑っている彼らは当地の武将が率いる軍勢に襲撃される。
その後、長尾平三景虎が家来と共に近付いてきた。
景虎は伊庭と初めて会った瞬間に彼らの見慣れない服装・武器にひかれ、伊庭たちを仲間にしたいと考える。
タイムスリップした現実を容易には受け入れられない伊庭と自衛隊員たち。
再び景虎と敵対する軍勢に大量の矢で射撃され、関おさむ二等陸士と堀健児二等陸士らが死亡。
伊庭と矢野隼人陸士長が機関銃を乱射して敵の陣地へ乗り込むと、後に続いて景虎たちが敵兵と切り結び、ついには敵将の首級を挙げる。
白刃で斬り合う彼らの戦いを目の当たりにしたことで、自衛官たちは戦国時代へ来てしまったことを認識。
高島春美一等海士は現代へ戻ろうと爆薬に火を放とうとし、矢野はナイフを彼に投げ付けて刺殺。
隊が落ち着かない中で徐々に自分たちが戦国時代にいる現実を否応なしに受け入れていく。
伊庭は景虎から「あなたは戦国の世で生きるべき人だ」と、一緒に天下を取ろうと誘われる。
伊庭は戸惑いながらも内心で戦国時代を謳歌していることに気づき、2人の間にはいつしか友情が芽生えていた。
部下たちもそれぞれに戦国時代と向き合い、近隣の農民やその娘たちと交流。
三村泰介一等陸士は娘の一人と恋に落ち、野中学一等陸士は老婆に自分の祖母の面影を思い出し、根本茂吉二等陸士は川で魚を獲る少年と出会い、その母親や兄弟と親しくなっていく。
新潟の演習中に脱走し、駆け落ちをするつもりだった菊池弘次一等陸士はタイムスリップしたことをいまだに信じられず、隊を無断で離れ、婚約者の新井和子と待ち合わせをするはずの場所へ向かう。
しかし山中で武装した落武者たちの襲撃によって同行した西沢剛一等陸士が殺害され、菊池も和子の名前を叫びながら崖から転落する。
現代にいる和子は相馬野馬追を観ながら、菊池が来るのを待ち続ける。
一方、現代に戻る術を模索していた県信彦一等陸士(江藤潤)、木村治久三等陸曹(竜雷太)、小野章一郎三等海尉 (辻萬長)らは、原住民と交流することは歴史を変えてしまうとして慎重な対応をしていた。
かつて伊庭にクーデター計画を潰されたとして恨んでいる矢野は、弟分の加納康治一等陸士(河原崎建三)と、島田吾一三等陸曹(三上真一郎)を仲間に引き入れ、哨戒艇の護衛任務にあたっていた小野を刺殺して哨戒艇を奪い、重火器を持ち出して隊を無断で離れる。
当初は矢野らに脅されていた須賀利重一等海士(角野卓造)もやがて欲望を爆発させ、四人は周囲の村を次々と襲い略奪と殺人、強姦を繰り返す。
伊庭は追跡し、隊に戻るよう説得するが、矢野はこれを拒んで戦えと挑発。
矢野が船を降りようとした島田を射殺する一方、伊庭は清水英雄二等陸曹(機長)と大西里志一等陸士が操縦するヘリコプターから矢野たちの注意を引き付け、その隙にライフル射撃が得意な三村に3人を狙撃させる。
哨戒艇に飛び降りた伊庭は瀕死の矢野を射殺。
矢野らの棺桶として、哨戒艇を爆破した。
景虎と天下を取ることで歴史を変え、現代に戻ろうと企図した伊庭は、その目的のために京へ行くと部下に宣言し、隊員たちもこれに従う。
しかし根本は知り合った少年とその家族のために、隊を離れた。
景虎は越後から西へ進んで浅井・朝倉連合を、伊庭は南へ進んで信濃の川中島で武田信玄を、それぞれ討ち破って京で再び会おうと約束し、進発した。
伊庭率いる自衛隊は川中島で武田軍と正面から激突する。
伊庭隊は、近代兵器による圧倒的な攻撃力で当初は戦を優位に進めるが、「空を飛ぶ鉄の船(ヘリコプター)」や「地を這う鉄の馬(戦車と装甲車)」の情報を得ていた武田軍は、それに対処するための戦術を駆使して奮闘する。
結果的に現代兵器の力を過信した伊庭たちはおびただしい犠牲を払うことになり、ヘリコプターは低空ホバリングの際に忍び込んできた武田勝頼(真田広之)によって2人の搭乗員達を殺害されて墜落。
戦車は人海戦術で動きを封じられ、装甲車は落とし穴にはまって自走不能となる。
兵器や弾薬の喪失とともに、伊庭たちは戦闘能力を失っていく。
不利に傾きつつある戦況の中、一気に決着を付けるべく、伊庭は大将である信玄のみを狙うことを決意。
馬を奪い、乗馬しながら弓と矢を得て、武田忍軍をかわし、信玄がいる本陣へ単騎斬り込む。
信玄と一騎討ちとなり、形勢不利となりながらも拳銃で射殺。
信玄の首級を挙げ、切りかかって来た勝頼も討ち取った。
この戦いで伊庭たちは辛くも勝利を収めたものの、車輌のすべてとヘリコプターを失い、隊員も多くが戦死するなど犠牲も大きく、近代兵器は小銃・拳銃のみしか残っていなかった。
生き残った隊員たちは、戦国時代の過酷さを目の当たりにして昭和へ帰りたいと強く願うようになり、「補給地へ戻り、再びタイムスリップするのを待とう」と伊庭へ進言。
しかし、伊庭にとっては、もはや戦国の世で天下を取ることこそが生きる目的となっており、これを認めようとしない。
先行して京へ入っていた景虎は京都御所に呼び出され、足利義昭(鈴木瑞穂)・本願寺光佐(成田三樹夫)・九条義隆(仲谷昇)らから、「正体不明の伊庭を天下人と認めるわけにはいかない。そのような者と手を組む景虎も朝敵とみなす」と弾劾される。
伊庭たちが近代兵器を喪失し、わずかな兵力で荒れ寺へたどり着いたことを知った3人は「もはや伊庭恐れるに足りず」と、伊庭らの抹殺を細川藤孝(石橋雅史)に命令する。
伊庭への友情と当世の流れの狭間で揺れる景虎だったが、その動きに待ったをかけ、自ら出陣を決意する。
景虎は苦衷の中にも決意を秘めた表情で、伊庭たちが駐留している荒れ寺へ向かう。
心強い味方の到着に伊庭は笑顔を見せるが、彼から贈られたカービン銃を手にした景虎の雰囲気を察すると、天下取りを宣言して抜刀する。
対峙する2人だったが、刀を構えてにじり寄った伊庭は、景虎に射殺されてしまう。
生き残った隊員たちも、景虎の兵らが放つ矢の雨の中で次々と倒れていった。
伊庭ら戦国自衛隊員は、景虎によって丁重に弔われる。
そして、火を放たれた荒れ寺は燃え盛る炎に包まれていくのだった。
コメント:
原作は角川文庫にも収められている半村良のSF小説『戦国自衛隊』。
プロデューサー・角川春樹は、UFOや映画『スター・ウォーズ』などに合わせて、時代劇にSFを加味して、角川の意図で青春映画として製作した。
製作発表でも角川は「映画『アメリカン・グラフィティ』の日本版を目指す」と抱負を語っている。
フジテレビと共同製作する予定だったが提携できず、角川は自宅を抵当に入れ銀行から融資してもらい、製作費11億5000万円を捻出した。
主演とアクション監督を兼務した千葉真一はクリント・イーストウッド主演映画『戦略大作戦』(1970年)を意識して演出した。
千葉は時速100kmで飛ぶヘリコプターにロープ1本でぶら下がったり、馬に乗ったまま地面にある矢と弓を左右に傾いて拾い上げるといったスタントを吹き替えなしで演じた。
ヘリコプターから宙吊りになるシーンは自前のハイスピードカメラを足にくくりつけて撮影し、騎手の目線を写すためにカメラを取り付けたヘルメットを被り乗馬するなど、アクション監督としても自ら撮影を行っており、これらの敢行はスタッフをとても心配させた。
脇腹に隠れての乗馬は時代劇『柳生一族の陰謀』第27話「美女と野獣」で千葉が既に演じていたものを騎馬武者のジャパンアクションクラブ (JAC) のメンバーに演じさせている。
馬は短距離の瞬発力に優れ、急発進・急停止なども器用にこなすクォーターホースをアメリカから輸入し、クランクイン1か月前から千葉とJACはクォーターホースと共に生活して訓練してきた。
転倒する馬はケガを負わぬよう、クッションなど安全装置を設けて撮影した。
千葉は本作の騎馬シーンの一部を1989年の映画『将軍家光の乱心 激突』でも再現している。
夏木勲が春日山城天守閣からヘリコプターに吊り下げられた縄梯子で脱出するシーンや、真田広之が空中浮遊するヘリコプターから飛び降り、乗馬から伊庭義明三尉(千葉真一)へ飛びかかり、斬りつけるシーンが印象的だ。
本作は、角川映画の傑作である。
「もし、戦国時代に自衛隊がタイムスリップしたならば」という仮定の下で描かれている。
千葉真一が演じる隊長は歴史を変えてでも、この戦国で生き抜く事を選ぶ。
なぜか?
自衛隊にいても戦争出来ない事に疑問があったからだ。
歴史の修整力が働き、最後には命を落とすのだが。
船の上で反乱を起こした渡瀬恒彦達のハレンチシーンは衝撃的だ。
こういうぶっ飛んだ役柄はやっぱり渡瀬恒彦しかできない。
渡瀬の専売特許と言っても良い。
「戦国」と「自衛隊」という、言葉の組み合わせもインパクトがある。
千葉真一と夏八木勲(当時、夏木勲)の二人は最高の武将であった。
長尾平三景虎を演じた夏八木勲 (なつやぎ いさお、1939年12月25日 - 2013年5月11日)は本名。
1978年から1984年の間のみ、夏木 勲(なつき いさお)名義で活動した。
東京府東京市足立区千住(現・東京都足立区千住)出身。
特技は乗馬・合気道・空手。
1966年にデビューし、鍛え上げた身体で野性味あふれる男らしい演技や、晩年は円熟味と重厚さが加わり、生涯300本以上の映画・テレビドラマに出演した。身長176cm。
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