「男はつらいよ 知床慕情」
1987年8月15日公開。
マドンナは、竹下景子(2回目)。
男はつらいよシリーズ第38作。
観客動員:207万4000人
興行収入:12億4000万円
脚本:山田洋次・朝間義隆
監督:山田洋次
出演者:
渥美清、倍賞千恵子、竹下景子、下條正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、吉岡秀隆、美保純、すまけい、笠智衆、淡路恵子、三船敏郎
あらすじ:
久しぶりに寅次郎が帰ってきたというのに、“とらや”はおいちゃん(下條正巳)が入院のため休業中。
翌日から店を開けるというおばちゃん(三崎千恵子)に、寅次郎は手伝いを買って出るが勤まる訳がない。
またまた口論の末、飛び出した。
北海道の知床にやって来た寅次郎は、武骨な獣医・上野順吉(三船敏郎)が運転するポンコツのライトバンに乗ったのが縁で彼の家に泊ることになる。
順吉はやもめ暮らしで、この町のスナック“はまなす”のママ・悦子(淡路恵子)が洗濯物などの世話を焼いていた。
“はまなす”は知床に住む気の良い男たちのたまり場で、常連は船長(すまけい)、マコト、文男、それにホテルの経営者の通称“二代目”たち。
そこに寅次郎が加わって宴はいっそう賑いだ。
そんなある日、順吉の娘・りん子(竹下景子)が戻って来た。
駆け落ちして東京で暮らしていたが、結婚生活に破れて傷心で里帰りしたのだ。
寅次郎たちは暖かく迎えたが、父親の順吉だけが冷たい言葉を投げつける。
身辺の整理のため、東京に一度戻ったりん子は寅次郎からの土産を届けにとらやを訪れ、さくらたちから歓待を受けた。
とらやの面々はまた、寅の病気が始まったと想うのだった。
東京から戻ったりん子も囲んで、“知床の自然を守る会”と称するバーベキュー・パーティが広々とした岸辺で開かれた。
そこで一同は悦子が店をたたんで故郷に帰る決心であることを知らされた。
すると、順吉が突然意義を唱える。
すかさず寅次郎は、「勇気を出して理由を言え」とたきつける。
順吉は端ぐように「俺が惚れてるからだ」と言い放った。
悦子の目にみるみる涙が溢れる。
船長が「知床旅情」を歌い出し全員が合唱した。
寅次郎はりん子に手を握られているのに気づき身を固くした。
その晩“はまなす”では宴会が開かれ、順吉と悦子は結婚することになった。
翌朝、寅次郎が別れも告げずに旅立ってしまったことを知り、驚くりん子。
船長がりん子に惚れてるんじゃないかとからかったためだった。
東京に戻り職をみつけたりん子はとらやを訪れる。
その頃、寅次郎は岐阜で初秋を迎えていた。
コメント:
この作品は、晩年期の三船敏郎の最高の作品である。
毎回この寅さんシリーズでは寅次郎とマドンナの恋愛話がテーマになっているが、今回は寅ではなく、獣医のおじさん(三船敏郎)と飲み屋のおばさん(淡路恵子)の話なのだ。
もちろん寅さんも獣医の娘りん子(竹下景子)とのほのぼのはあるが、直接的なやりとりは無い。
もう寅さんも歳だから、若い娘との恋愛はストーリー上無理があり、何作品か前からストーリーも変化してきている。
今や自分の恋愛ではなく、他人の後押しをすることに生きがいを見いだしているのか。
いずれにしても寅さんは他人にはまともなことを言う。
この作品では、サブキャラとして、寅さんを更にこじらせたような老人・三船敏郎が登場し、彼の恋を寅さんが後押しするという物語となる。
このサイドストーリーが三船敏郎のキャラクター設定も含めてうまく行っている。
三船の相手役となる淡路恵子もいい。
寅さんは自分のことになるとめっぽう弱いというのは変わりなく、マドンナ竹下景子から思いを寄せられながら、早々に逃げてしまう。
知床の自然が素晴らしい。
こんな涙が出るような中高年のラブストーリーがあったということは、演じた三船敏郎自身にも意外だっただろう。
ぜひこういう心が温まるような作品にもっと出演してほしかった。
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