「青春の門」
1975年2月15日公開。
名作「青春の門」の最初の作品。
大竹しのぶの映画デビュー作。
配給収入:5億4800万円(1975年邦画5位)
受賞歴:
- 第18回ブルーリボン賞 新人賞『青春の門』(大竹しのぶ)
- 第49回キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞『青春の門』(大竹しのぶ)
原作:五木寛之『青春の門〈第一部・筑豊篇〉』
脚本:早坂暁、浦山桐郎
監督:浦山桐郎
キャスト:
- 伊吹 信介 - 浦山春彦(3歳時)/松田剣(6歳時)/田鍋友啓(10歳時)/田中健
- 伊吹 重蔵 - 仲代達矢
- 伊吹 タエ - 吉永小百合
- 牧 織江 - 山崎理絵(少女時代)/大竹しのぶ
- 塙 竜五郎 - 小林旭
- 長太 - 辻萬長
- セキ - 小林トシ江
- 梓旗江 - 関根恵子
- 矢部 虎 - 藤田進
- 金山 朱烈 - 河原崎長一郎
- 朴 - 井川比佐志
- 早竹先生 - 加藤武
- 小島労務 - 藤岡重慶
- 炭鉱主 - 藤岡琢也
- 平吉/語り手 - 小沢昭一
あらすじ:
大正の北九州・筑豊炭田。
米騒動の嵐が筑豊に波及した時、ダイナマイトをふりかざして軍隊に抵抗し男を上げた伊吹重蔵(仲代達矢)は、坑夫たちの信望を集め、炭鉱の頭領にのし上っていく。
一人息子の幼ない信介を残して妻が他界してから数年、重蔵は、天草生まれの女給・タエ(吉永小百合)に燃えるような恋をした。
ある日、重蔵は店に乗り込み、強引にタエを連れ出したが、重蔵と同じようにタエに惚れている新興ヤクザ・塙竜五郎(小林旭)が駈けつけ、激しい対決となった……。
新しい母を迎えた信介の幸福は長くは続かなかった。
炭鉱で水没事故が起こり、重蔵は坑内に閉じ込められた朝鮮人徴用工を秘かに救出しようと自ら爆死を遂げてしまったのだった。
その心意気にうたれたかつての仇敵、竜五郎が、今度はドスをふるって重蔵の行動を救けた。
太平洋戦争・昭和二十年。
信介が、仲間たちと一人の朝鮮人少年をいじめている所に来合わせたタエは怒った。
タエは信介を父親のような男らしい男に育て上げようと、炭鉱労働をして頑張っていたのだ。
この喧嘩をきっかけに、あの水没事故の時に重蔵に命を救われた朝鮮人・金朱烈(河原崎長一郎)がタエのもとに出入りするようになった。
この事は当然、炭鉱内の噂になるが、タエは気にしない。
しかし、信介は金に好意を感じる一方、美しい義母を取られるような恐れも芽生えた。
だが、その金も出征、そしてまもなく日本の敗戦。
男たちが戦場から帰って来る。
かつて重蔵の配下だった平吉、そして竜五郎、金……。
重蔵にタエ母子の事の面倒を見ると約束していた竜五郎は、今では運送業をやり波にのりつつあるため、タエ、信介を自宅に引き取ろうとするが、金は猛烈に反対し、自分と共に朝鮮へ行こうと言う。
気丈なタエはこの二人の申し出を断わるが、その心の隙をつかれ、人のいない坑道内で平吉の愛撫を許した。
その直後、大音響とともに落盤事故が起こり、平吉は死亡、タエは辛うじて救出された。
朝鮮動乱勃発。
信介は中学三年。竜五郎の有無を言わさぬ説得で、めっきりやつれたタエと信介は、動乱の特需景気に湧く飯塚に向って峠を越えようとしていた。
信介の幼なじみの牧織江が涙ながらに見送っていた。
竜五郎の家に着いてすぐ肺を病んでいたタエは喀血、入院した。
やがて、信介には次々と新しい体験が訪れる。
性のめざめ、喧嘩、高校進学、野球部生活……。
その中で、音楽の女教師、梓旗江(関根恵子)の魅力は強烈だった。
そして、ある日、信介は梓と彼女の恋人で妻子あるアメリカ人記者との情事の現場を目撃、強烈なショックを受けた。
炭鉱の鉄道線路が爆破され、炭鉱主の依頼で、その犯人を追っていた竜五郎が何者かに袋叩きにされ大怪我を負った。
塙組の身内と一緒に、元兇とにらんだ朝鮮人組織の事務所に乗り込んだ信介は、そこで金朱烈と再会した。
金は竜五郎襲撃はしないと言い、信介には冷たく訣別を告げた。
梓先生の恋人の米記者が朝鮮戦線で死んだ。
虚脱状態の梓は、ドブ川へ飛び込むが信介が辛うじて抱き止めた。
だがその衝撃で恋人との間にできていた胎児が流れてしまった。
朝鮮動乱休戦、日米講和条約--。
竜五郎の怪我は癒え、タエも日増しに快方へ向かった。
タエが全快すると竜五郎と祝言を上げる事になっている。
そんなある日、信介(田中健)は、今はキャバレーの女給になっている織江(大竹しのぶ)に会いに行った。
「同じ炭鉱で死んでも、うちのお父ちゃんは虫かごつ」そう織江になじられる信介。
二人の間には深い溝ができてしまっていた。
そして織江にやさしく促されて信介は始めて彼女を抱いた。
そして独立を決心した。
数日後、療養所の一室で、大学受験で上京する前夜、元気になったタエに信介は、つもる想いの数々をぶつけて抱きついた。
だが涙で耐えるタエに制せられた。
翌日、激しい愛の苦しみと、行方の定まらぬ情念を抱いたまま、信介はオートバイを駆って筑豊を出ていこうとしていた。
コメント:
原作は、北九州の筑豊に生まれ育った一人の少年の成長過程のロマンを追う五木寛之の名作『青春の門〈第一部・筑豊篇〉』。
明治以来百年間、日本の近代化を支えるエネルギー源となって来た筑豊炭田の人間像の中に、日本人の心の原点と、朝鮮戦争を転機とした戦後の歴史の意味を探る。
この映画には、成人映画風なシーンがたくさんある。
最も鮮烈な印象を与えるのは、大竹しのぶだ。
彼女はこれが映画初出演で、当時まだ17歳だが、しっかり濡れ場を演じている。
田中健が扮する信介の切ない初体験シーンなのだ。
織江を演じる大竹しのぶが、愛を告白する。
女給になって何度も客を取らされてきた彼女は、
「信介、あなたが好き」
「自分が好きになって相手にしたのは、これまでひとりもいなかった。信じて。」
と涙ながらに訴える。
そして彼女のリードで、ひとつになるのであった。
このシーンは泣ける。
完全に織江という薄幸の女性になり切って演じている。
この女優は、デビューの時から覚悟が違うと痛感させられる。
もうひとつは、音楽の女教師、梓旗江(関根恵子)と外人の全裸ベッドシーン。
思い切りの良いヌードで有名な関根恵子の見事な濡れ場は、ハンパない。
映っている時間は1分もないが。
満点を差し上げる!
さらに、清純派女優・吉永小百合も必死で濡れ場を演じている。
吉永小百合の、仲代達矢との濡れ場がある。
幼い信介が傍らで寝ている夜、モゾモゾと吉永を求めだす仲代。。
「いや。。信介が起きる。。向こうで。。」
と隣りの部屋で改めて受けに入る吉永!
太ももは見せるが、それ以上は見せない。
上半身も見せない。
さらに、吉永小百合の自慰行為シーンがある。
問題のマスターベーションシーンは、仲代が名誉の自爆死を遂げ、後家になってしまった吉永が夜、悶々と彼との情事を思い出して・・・するのだ。
初めは胸を自ら触り、そのまま浴衣をまくって、ブルマーみたいなズロースの上から悶えながら。。。触っている。
だが、何にも見えない。
これが、吉永小百合の限界なのだ。
若干残念だが、こんなシーンを引き受けただけでもすごいことだと専門家は絶賛している。
彼女の役者魂を買うと。
毅然としたタエ役を見事にこなしたと言えるだろう。
しかし、ここでバストくらい見せたら、小百合の女優人生は大きく変わったかもしれない。
やはり惜しみなく脱いだらよかったのに、と思う人もいるだろう。
これは、他の作品でも同じだ。
彼女の代表作「夢千夜日記」でも、普通の女優ならしっかり脱いだであろう重要シーンで、脱いでいないのだ。
一説によると、吉永小百合という女優には、口うるさいステージママならぬ、ステージパパが常に吉永の近くで監視していて、絶対にヌードを許さなかったという。
清純派である以上は、生涯肌をキャメラの前にさらさないという鉄則が吉永家にはあったらしい。
まあ、大竹しのぶと関根恵子ががんばったから良しとするしかないか。
この映画は、今なら以下のサイトで全編無料視聴可能:
この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も可能: