「抱擁」
1953年3月11日公開。
三船敏郎と山口淑子共演の悲恋のラブロマンス作品。
脚本:西亀元貞、 梅田晴夫
監督:マキノ雅弘
出演者:
三船敏郎(一人二役)、山口淑子、志村喬
あらすじ:
雪に閉された山奥の山小屋で、素朴な営林技師の伸吉(三船敏郎)と、吹雪の中に行き倒れた旅の女の娘・雪子(山口淑子)との清純な恋がはぐくまれた。
若い二人が結婚によって結ばれようと決心したとき、伸吉は雪子へのプレゼントに谷間へ黒百合を摘みにおりて雪崩に逢い死んでしまった。
傷心を抱いて東京へ出た雪子は「山小屋」という酒場で働いた。
ここの常連の若く貧しい芸術家たちにいつしか彼女をとり巻くグループが出来たが、その一人の詩人・クロちゃんは雪子に失恋して自殺した。
雪子が東京へ出て二年目のクリスマス・イブに、彼女は或るナイト・クラブの歌手になっていた。
だが、そこへ仲間の追跡をのがれて逃げ込んで来たギャングの早川(三船敏郎)が、死んだ伸吉に生き写しなのに、雪子は激しい胸のときめきを感じた。
彼女の機転でその場をのがれた早川は、仲間に追いつめられて遂にその一人を射殺してしまった。
雪子はその早川と一日でも一緒にいたいと願って、二人は雪の山小屋へ逃れた。
雪子のひたむきな愛情にこたえて早川も固く彼女を抱きしめた。
こうした二人の幸福も長くはつづかなかった。
追手の警官隊をのがれた二人は大雪の谷底へまで逃げのびたが、遂に大雪崩の下敷となって果てたのであった。
コメント:
国際スターとして人気上昇中の三船敏郎と、満州映画からハリウッドと渡り歩いて活躍した山口淑子の2大スターによるラブロマンス。
タフな中にシャイなイメージのする三船に、マキノ監督は‘思いっきりロマンチックでスマートな’ギャング・早川役を要求したという。
バーに勤める雪子は、雪崩で死んだ恋人・伸吉を忘れることが出来ず、時折顔に浮かぶ陰りがモノクロ映像の山口淑子の魅力を際立たせている。
クリスマスの夜、雪子の危機を救った早川を一目見た彼女は、彼が伸吉に瓜二つなことに心を動揺させられる。
仲間に追われ、雪の蔵王を舞台にしての逃亡と銃撃戦は、アクションに優れた岡本喜八助監督自身が三船敏郎の代役のスキーヤーとして加わるなどの活躍で、迫力あるシーンが撮られたという。
残念ながら、本作のDVDやVHSは見当たらない。
10年以上前に、映画館で上映されたらしいが。
今後どこかのネットサイトかBSなどで上映されることを待つしかなさそうである。