「THE 有頂天ホテル」
2006年1月14日公開。
三谷幸喜監督の大ヒット映画。
興行収入:60.8億円(2006年度邦画第3位)。
監督・脚本:三谷幸喜
キャスト:
ホテル従業員:
- 申し分のない副支配人・新堂平吉 - 役所広司
- 議員の元愛人、今は客室係・竹本ハナ - 松たか子
- 歌を愛するベルボーイ・只野憲二 - 香取慎吾
- 能天気な総支配人・二階堂源一 - 伊東四朗
- アシスタントマネージャー・矢部登紀子 - 戸田恵子
- 怪しい料飲部副支配人・瀬尾高志 - 生瀬勝久
- ウェイター・丹下二郎 - 川平慈英
- 客室係・野間睦子 - 堀内敬子
- ホテル探偵・蔵人 - 石井正則
- 筆の達人筆耕係・右近 - オダギリジョー
- リネン係・森 - 不破万作
- ベルボーイ・尾関 - 熊面鯉
- 携帯電話ストラップを配っているベルボーイ・御前崎 - 江畑浩規
- バーラウンジのマネージャー - 飯田基祐
- バーラウンジのウェイター - 中村祐樹
- コンシェルジュ - 木村清志
- 駐車場の誘導係 - 相島一之
- 館内アナウンス - 清水ミチコ(声のみ)
客:
- 人生崖っぷちの汚職国会議員・武藤田勝利 - 佐藤浩市
- 議員の秘書・神保保 - 浅野和之
- 神出鬼没のコールガール・ヨーコ - 篠原涼子
- 副支配人の別れた妻・堀田由美 - 原田美枝子
- 堀田由美の現夫、マン・オブ・ザ・イヤー受賞者・堀田衛 - 角野卓造
- 事故に遭った大富豪・坂東健治 - 津川雅彦
- その息子、耳の大きな男性・坂東直正 - 近藤芳正
- 謎のフライトアテンダント・小原なおみ - 麻生久美子
- ある業界団体の委員長・荒井 - 矢島健一
- ある業界団体の副委員長・伊武 - 伊藤正之
- ホテル内のスポーツジムで衣類を盗まれた女性・鴨田麗子 - 池谷のぶえ
- 須藤さん - 大嶋守立
- 須藤さんの妻 - 保苅圓子
- 飯島直介 - 田中直樹
- 飯島民子 - 八木亜希子
- インテリヤクザ - 今井茂雄
- 悲鳴を上げる女性 - 高島彩(当時フジテレビアナウンサー)
芸能人:
- 死にたがる演歌歌手・徳川膳武 - 西田敏行
- 演歌歌手の付き人・尾藤 - 梶原善
- 一九分けの芸能プロ社長・赤丸寿一 - 唐沢寿明
- 不幸せなシンガー・桜チェリー - YOU
- スパニッシュマジシャン・ホセ河内 - 寺島進
- アシスタント・ボニータ - 奈良崎まどか
- 腹話術師・坂田万之丞 - 榎木兵衛
- ダンサー・オイリー菅原 - 池田成志
- アヒルのダブダブ - 山寺宏一(声のみ)
あらすじ:
大晦日。
高級ホテル・アバンティは新年を迎えるカウントダウンイベントを控えて賑わっていた。
歌手に成る事を夢見、このホテルでベルボーイのアルバイトをしていた憲二(香取慎吾)は、夢を諦めて明日故郷へ帰ろうと決めていた。
客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーとして一人息子を育てていたが、母親としての自覚を未だ持てずにいる。
息子の父親は汚職事件で世間を騒がしている国会議員・武藤田(佐藤浩市)であった。
会社社長の愛人・なおみ(麻生久美子)が宿泊する客室の掃除をしていたハナは、誰も居ない隙に彼女の高級な毛皮を着て、子供を産まなければ今頃こんな毛皮を着て良い暮らしをしていたかもしれないと夢想していた。
そこになおみを尋ねて来客があり、ハナは咄嗟になおみのふりをする。
ホテルの副支配人である新堂(役所広司)はこの日たまたまホテルに宿泊していた元妻・由美(原田美枝子)と再会した。
自分も宿泊客であり、今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”の表彰パーティーに招かれたのだと言ってしまう。
彼はかつて芝居で身を立てる事を夢見ていたが、挫折してホテルマンになったのだった。
今でも芝居を続けているとウソをついてしまう。
カウントダウンイベントに出演予定の歌手・桜チェリー(YOU)は、所属事務所の社長に歌いたくない歌を押し付けられ、事務所の為に顧客と寝る事をも強要されていた。
汚職疑惑の渦中にいる武藤田は、このホテルに身を隠している事をマスコミに嗅ぎ付けられてしまい、政治家としての進退を迫られていた。
表彰パーティーが始まり、新堂は受賞者のふりをしてスピーチするが、“ステージマン”ではなく“スタッグマン”(鹿の交配技師)の表彰パーティーだった。
しかも表彰されるはずだったのは由美の今の旦那であった。
ホテルマンである事を恥じた事に自己嫌悪する新堂。
自室で思い詰めていた武藤田は、自殺を決心して銃に手をかけたが、隣部屋から能天気な歌が聞こえて来て思いとどまる。
憲二が宿泊客に頼まれて歌っていたのだった。
客には才能が無いから歌なんてやめろと言われる憲二だが、武藤田には良い歌だとほめられる。
なおみのふりをしていたハナは、彼女の境遇を知る。
世間の眼を気にして愛する人と一緒になる事を諦めようとしている様なのだ。
鉢合せになったなおみに、諦めると後悔する事になると告げたハナは、取って返してかつての恋人・武藤田の部屋を尋ね、汚名を被ってでも政治家を続けろと助言する。
憲二は歌が歌えるだけ幸せじゃないかと桜チェリーを叱咤激励し、新堂はホテルマンとして武藤田をマスコミから守り切る事に成功する。
カウントダウンイベントで誇らしく謡う桜チェリー。
その姿を見て自らも歌を続ける事を決意する憲二。
その傍らで息子に電話をかけるハナ。
新堂は由美と相対し、今はホテルマンとしてがんばっている事を告げ、さっそくやって来た新年最初の客を出迎えに行くのだった。
コメント:
タイトルは、アカデミー賞最優秀作品賞受賞のグレタ・ガルボ主演の『グランド・ホテル』に由来している。
大晦日の夜10時から年明けまでの2時間に、ホテル・アバンティで起こる人間模様を描いた、グランドホテル方式のコメディである。
豪華俳優の出演、サービス満点のシナリオによるてんこ盛り映画となっている。
緻密な脚本が光る作品である。流石は三谷幸喜だ。
同時進行で進むバタバタ感のある各人のストーリーが、滑らかに他の話と絡み合うよう計算しつくされた脚本と画面構成だ。
本筋とは関係なさそうな画面の余白まできっちり配慮している。
大晦日、様々なイベントが目白押しでごった返すホテル・アバンティ。
そんな時に副支配人の新堂(役所広司)は別れた妻(原田美枝子)と再会。
妻は再婚していたが、その再婚相手はホテルの目の上たんこぶであるコールガールのヨーコ(篠原涼子)と浮気を。
そんなことは知らぬ新堂は、つい元妻に見栄を張って大嘘をついてしまう。
舞台の仕事を諦めたことを引きずっているホテルの副支配人。
世間を気にするシングル・マザー(松たか子)。
歌手の夢を諦めかけたベルボーイ(香取慎吾)。
相手と結ばれたい愛人(麻生久美子)。
思いっきり唄えない売れない歌手(YOU)。
大晦日に起こる多くの人たちの出来事を通して、ありのままの自分を受け入れて正直になっていく過程が、見ていて気持ち良い。
西田敏行や角野卓三や伊東四朗の演技も笑える。
小悪魔な篠原涼子さんも良い。
YOUの歌も良かった。
松たか子が愛人に間違われて、別れ話を切り出されてかつて政治家の愛人だった頃を思い出して、愛人に感情移入して愛人のために奮闘するところも実に面白い。
寂しさを吹き飛ばすには最高の映画。
原田美枝子は、主人公の副支配人・新堂平吉(役所広司)の元妻を演じている。
上品ないで立ちで、貫禄すら感じさせる。
立派な女優になったことが認識できる演技だ。
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