「続・悪名」
1961年12月17日公開。
悪名シリーズ第2作。
脚本:依田義賢
監督:田中徳三
出演者:
勝新太郎、田宮二郎、中村玉緒、水谷良重、藤原礼子、浪花千栄子、中村鴈治郎、上田吉二郎、羅門光三郎、山茶花究、 南都雄二、 長谷川季子、山路義人
あらすじ:
満州事変の頃、やくざの世界から何くわぬ顔で故郷の河内に帰った朝吉(勝新太郎)は、女房のお絹(中村玉緒)と百姓仕事を始めたが、ある日、弟分・モートルの貞(田宮二郎)の時ならぬ訪問でたちまち化けの皮がはげ、これ幸いと大阪へ逆戻り。
今は見るかげもない吉岡親分(山茶花究)を見舞った朝吉と貞は、そこの居候で貞の弟分・河太郎(南都雄二)を預かった。
河太郎と女房のチェリー(長谷川季子)が難波新地の親分沖縄の源八(上田吉二郎)に欺されたいきさつを聞くと、朝吉は単身源八の家へ乗り込み、スゴ味をきかして勘定をとり立てた。
彼はまた、吉岡を窮地に陥しいれた松島の長五郎(山路義人)の非道に憤激、貞となぐり込みをかけて長五郎を半殺しの目にあわせた。
これを機会に足を洗うつもりの朝吉だが、彼の度胸に惚れ込んだ松島一家の元締(中村鴈治郎)から、長五郎の縄張りと子分衆を押しつけられようとは。
その夜酔って帰った貞は自分の子を宿したお照(藤原礼子)と間違えて、チェリーを抱いたため大騒動。
一方、朝吉はやくざの親分になったことや昔の女・琴糸(水谷良重)の写真のことやらで、お絹にとっちめられた。
売り出しの朝吉に喧嘩状を突きつけたのが、沖縄の源八だ。
その結果は意外にも、源八の縄張りと子分まで、朝吉が引き受ける羽目になった。
そんな朝吉の許へお絹が琴糸を連れて現れた。
琴糸は東京で男に捨てられ、因島のイト親分(浪花千栄子)の家へ帰りたがっている。
朝吉と貞は琴糸を因島へ送ってやった。
大阪へ帰った朝吉は、チェリーの足ぬきのことから新興やくざ新世界のカポネ一家と対立したが、松島の元締は、利用価値のうすれた朝吉に見切りをつけ、助ッ人を断った。
朝吉が自分の一家だけで闘おうと、悲壮な決意を固めた折りも折り、召集令状が届いた。
出発の前夜、朝吉は貞にやくざの世界の醜さを説き、子分たちにも正業につかせるよう訓した。
やがて父になる貞を犬死させたくないからだ。
ところが、それから数日後、貞はチンピラに刺されて死んだ。
戦争とは国と国の縄張り争いみたいなものである。
朝吉は「こうゴツイ出入りではムシケラ同然や」と自嘲しながら、果てしない暗黒のぬかるみ道を行軍するのだった。
コメント:
悪名シリーズの第2作。
剛の朝吉(勝新太郎)と柔の貞(田宮二郎)のコンビは前作に続き快調。
特に、田宮二郎の軽快なせりふ回しに惚れ惚れする。
また、色調を抑えた大映カラーがいい感じ(撮影は宮川一夫)。
朝吉と貞が長五郎のところに殴り込みに行き、逃げる長五郎を路地で再び袋叩きにするシーンでの路地の造形はさすがに大映だ。
ラスト近くで、貞が路上で突然チンピラに刺される。
この場面を俯瞰から撮ったシーンは素晴らしい。
傘をさして歩く貞と女房、
そこに横から人がぶつかり、貞が倒れるというシーケンスだ。
これを、上から撮るというのは名匠・宮川一夫キャメラマンのアイデアなのか。
松島の家並のセットも素晴らしい。
それにしても、貞が殺されるとは思っていなかった。
大映はこの映画を最初はシリーズにするつもりはなかったのだろう。
一方の朝吉も兵隊にとられ、戦線で苦労することになる。
苦い終わり方だ。
第3作以降はどうするのだろうと思わせながら本作は終わる。
数多の蛮勇でその名を馳せたさすがの朝吉親分も、戦争という国家の蛮行の前では虫けら同然のごとく扱われるということが、陰鬱なラストショットを通してヒシヒシと伝わってくる。
中村鴈治郎や上田吉二郎、浪花千栄子といった演技巧者な脇役陣が登場している。
これで物語が俄然滋味深くなり、画面がピシリと引き締まる。
第1作にほぼ続く物語で、同じ登場人物が出ている。
主演が勝新太郎ということもあるが、大映のやくざ映画は、どこか人情っぽい面が多く、残虐さよりやくざの人の良さが売りの感じがする。
ただし、本作のラストで勝扮する朝吉の相棒のモートルの貞(田宮)は命を落としてしまう。
「悪名」シリーズは浅吉とモートルの貞の話と思っていたので、貞が突然死んでしまい、びっくり。
3作目以降で田宮二郎が扮するのは、モートルの貞の弟の清次である。
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