「座頭市の歌が聞える」
1966年5月3日公開。
座頭市シリーズ第13作。
全編無料視聴可能。
脚本:高岩肇
監督:田中徳三
出演者:
勝新太郎、天知茂、小川真由美、佐藤慶、浜村純、吉川満子、小村雪子、水原浩一、町田政則
あらすじ:
座頭市(勝新太郎)は高崎で殺気を漂わせた浪人・黒部玄八郎(天知茂)とすれ違った。
市はその日、宿外れでやくざに襲われた為吉を救ったが、すでに深手を負っていて、市に財布を託すと言切れた。
市は盲目の琵琶法師(浜村純)と道連れになった。
一の宮は祭礼なのに門前の店はほとんど閉じていた。
おかん婆さん(吉川満子)の茶店に入った市は、おかんが為吉の母だと知った。
市は為吉の息子・太一(町田政則)に財布を渡した。
町の人は板鼻権造(佐藤慶)一家の暴力に悩んでいた。
権造一家は市にいやがらせをした。
市はやむを得ず居合の妙技を見せた。
太一はそんな市に憧れた。
市は宿場女郎のお蝶(小川真由美)にあんまを頼まれた。
二人は心の触れあうのを感じた。
弥平爺さんの上洲屋で、市は再び法師に会った。
法師は太一がやくざに憧れるのは市のせいだと批判した。
権造一家が押しかけてきた時、市は抵抗しなかった。
だが、一家が上洲屋の娘お露(小村雪子)をさらおうとするのに怒って居合で斬った。
それを太一は見ていた。
黒部玄八郎は、お蝶をさがして三年も関東一円をさまよっていたが、ようやくこの宿場で会えた。
彼女は以前、玄八郎の妻だった。
しかし、毎日酔いつぶれている彼の姿に愛想をつかして出奔したのだ。
玄八郎は彼女を引き取るために身受けの五十両を作るため、権造親分に直談判し、五十両で市を斬ると約束する。
その頃、市は琵琶法師と共に林の中で野宿をしていた。
琵琶法師は、上州屋の娘を助けた市は正しかったと言い、琵琶を弾きながら謡曲を歌った。
その後、権造一家は上洲屋に乱入し、おかんを人質にした。
市は仕込杖を捨てた。
しかし、一家は弥平を斬り、市をも斬ろうとした。
市は太一の助けで仕込杖を手に入れた。
だが権造の作戦で八方から太鼓が乱打され、市は聴覚を封じられた。
市は法師が、修業とは死ぬことだといった言葉を想い出した。
市の心の眼は澄みきった。
そして必死に斬りまくり、最後に玄八郎と対決した。
一瞬の後、玄八郎は倒れた。
市は権造が町の人から無理にとった金を取返し、お蝶の身受けの金も取った。
そして隙をみて斬り込んだ権造を斬った。
法師は太一に、本当に偉い人はやくざでないと教えた。
市はお蝶の家に五十両を届けて去った。
お蝶が市の後を追いかけようと外に出た。
その時すでに、市は朝焼けの道に消えていた。
コメント:
13作目となった本作。
第一作で平手造酒を演じた天知茂が再び剣豪の浪人・黒部玄八郎役で登場。
女郎となった女房を身請けするために腐心する姿が印象的。
最後の市との一騎打ちのシーンも素晴らしい。
新劇の小川真由美、佐藤慶などの個性派を配してテコ入れを図った感じだ。
物語のダイナミズムより芸達者の余情で画面を締める。
ヒロインには、文学座所属で大映を中心に映画出演も多い小川真由美が起用された。
当時小川真由美は27歳。
若くて綺麗で、女郎役をきちんとこなしており、元の夫役の天地茂とのやり取りの演技も泣かせる。
ワルの親分には俳優座の佐藤慶。
憎々しい演技も、無様にうろたえる姿も上手い。
この人はそこにいるだけでワルの存在感がぐっと増す。
座頭市の耳を狂わそうと、太鼓を駆使する工夫を見せる。
カメラの宮川一夫と照明のコンビネーションが素晴らしい。
室内はサイドからの強い照明で奥行きのある構図、クライマックスは薄暮の撮影で、橋上の決闘は黒く塗りつぶされない寸前を遠景で撮る。
さすがは、名匠・宮川キャメラマンだ。
「座頭市の歌が聞える」という本作のタイトル。
ところが、それとは裏腹に本作で座頭市自身は歌を歌わない。
だが、道中で出会う琵琶法師による一曲のシーンが美しく際立っている。
この琵琶法師を演じる浜村純の琵琶を弾きながら歌うシーンが良い。
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