佐久間良子の映画 「大奥(秘)物語」 東映女優陣総出演の歴史的映画! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「大奥(秘)物語」

 

 

1967年7月30日公開。

日本初の「大奥物語」の第1作。

東映女優陣総出演。

R-18(成人映画)指定作品。

 

脚本:国弘威雄、掛札昌裕、佐治乾、金子武郎

監督:中島貞夫

出演者:

佐久間良子、藤純子、岸田今日子、岩崎加根子、久保菜穂子、宮園純子、坂本スミ子、小川知子、三島ゆり子、高橋昌也、村井国夫、渡辺美佐子、山田五十鈴

 

あらすじ:

六代将軍・家宣(高橋昌也)の時世。

大奥に生活する女たちの生活は、まさに雌そのものだった。

将軍の胤を宿さなければ、そのまま飼い殺しにされるのがオチだった。

旗本の娘ふさの女中として大奥にきたおみの(藤純子)が家宣の目にとまり、お手付き中臈となったが、そうした大奥での生活をお客会釈の松島から聞かされたおみのは、是が非でも家宣の胤を宿そうと決心した。

ところがそうしたおり、お部屋様のおすめが懐妊し、それを妬んだおこんの乱心沙汰によって、彼女の下にいるおみのはお褥辞退の沙汰を受けた。

このままでは大奥で朽ち果てるばかりと思ったおみのは松島と計って、秘かに他の男の胤を宿し、二ヵ月後に懐妊が公にされると、おみのは次期将軍の生母として、ゆるぎない権勢を握ったのである。

大奥には、殿が夜伽の者と同衾している寝所に、お添寝の中臈が控えるという制度があった。

篠の井(小川知子)はそうしたお添寝の一人だったが、ある夜、家亘の命で彼の閨の一部始終を見ていることになった。

翌朝、その反動からか篠の井は浦尾と激しい同性愛に陥ったのである。

だが、二人の仲は長くはつづかなかった。

間もなくお手付き中臈となった篠の井が家宣の子を懐妊したとき、嫉妬に狂った浦尾が彼女に水銀を飲ませたため、篠の井は流産し、自から命を断った。

ところで、このような大奥女中とは違って、お目見得以下の部屋子たちは三年奉公と決っていた。

町人の娘おちせ(佐久間良子)もその一人で奉公があけたら、恋人の長吉と一緒になって染物屋をやるという夢を持っていた。

ところがあと半月で年期があけるという時、おちせは家宣の目にとまり、お手付きにされてしまったのである。

同情する上臈飛鳥井のすすめで、城外に出たおちせは長吉に会った。

すべてを聞いた長吉は逃げ出そうと言ったが、その時現われた伊賀者の手で長吉は殺されたのだった。

あまりの仕打ちに何事かを決心したおちせは、これまで嫌っていた家宣の寝所にすすんで行った。

そしておちせは、男と女の心からの愛も分らず、女を人形と見る家亘に侮蔑の言葉を投げつけると、傍の将軍の小刀で家宣に斬りつけ、彼女も自害して果てたのだった。

 

 

コメント:

 

「大奥」とタイトルに冠された最初の映像作品である。

オムニバス形式で主演級を女優で固めた点や、ナレーターが大奥を説明しながら話が展開するスタイルが今日続く大奥ものや「女性時代劇」の実質的元祖となった作品である。

大奥という閉鎖された世界のドロドロとした人間ドラマは、男性上位の時代劇史の中でも特筆すべき女性路線の企画であった。

1967年度の日本映画配給収入でベストテン10位の大ヒットを記録、東映としても久しぶりの時代劇の大ヒットとなった。

本作はふんだんにエロチシズムを取り入れた作品だが、翌1968年に本作をベースにエロ要素を薄め、硬い内容にして制作されたテレビドラマ『大奥』(関西テレビ)も大ヒットした。

以降、テレビドラマや演劇では"硬い大奥もの"が、映画やAVなどでは"エロい大奥もの"が多数制作された。

『大奥㊙物語』は、この二つの源流になった歴史的な作品である。

 

 

6代将軍徳川家宣の時代の大奥を舞台の3話のオムニバスである。

第2話と第3話が演者の演技力もあり楽しめる。

・第1話=旗本のお嬢さんおふさのお付きの女中として大奥に上がったおみの(藤純子)が家宣のお手つき中臈になる。

他の男の種を得て将軍の世継ぎを産む。

藤純子はおちゃめでおきゃんな町娘の役を可愛く演じている。

全話に出演するのは、家宣とあしらい役(将軍が大奥に来た時に女性を取り持つ役・年寄より下位)から筆頭年寄(老中と対等に話ができる)に出世した山田五十鈴(松島)である。

・第2話=年寄り浦尾(岸田今日子)の部屋子の篠の井(小川知子)が「お添い寝」役をしていた時に家宣に見初められて処女を奪われる。

浦尾を篠の井は相思相愛だったのだが、篠の井が男を知り懐妊したことで、岸田の嫉妬が燃える。

小川知子はけっこう美人。



・第3話=京から来た「二のお部屋様」の岩崎加根子(飛鳥井)の部屋子の町人の娘・おちせ(佐久間良子)が主人公。

染物屋の許嫁がいるが、将軍家宣のお手つき中臈となってしまう。

岩崎加根子は同じ役で第1話にも出演している。

 

このストーリーの殆どは、実際にはあり得ない架空のストーリーだ。

第1話の藤純子が演じる旗本の娘が将軍のお手つきになるのは、可能性がある。

だが、第2話の小川知子演じる篠の井が、将軍のお手つきになる前に、岸田今日子演じる年寄りの浦尾と同性愛となってしまうなどということがあるはずがない。

さらに、将軍に嫉妬して岸田今日子が小川知子に水銀を飲ませることも絶対ない。

また、第3話では、佐久間良子が演じるおちせという町人の娘が出てくるが、町人の娘が将軍のお手つきになるなどということは常識では考えられない。

ましてや、佐久間良子が将軍に面と向かって、侮蔑の言葉を投げつけ、将軍の小刀で家宣本人に斬りつけるというような天下の一大事が起こるはずはない。

そんな事が起こるという設定をどうして思いつくのか、東映スタッフの気が知れない。

 

だが、この映画は、これまで本格的に映像化されてこなかった将軍家の大奥の闇を描いたということで、その中身の真偽はさておいて、その後の映画界、テレビ界での新たな女性もの路線の第一歩となるものであった。

 

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