緒形拳の映画 「薄化粧」 五社英雄監督による実在の脱獄囚の半生を描いた異色作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「薄化粧」

 

 

「薄化粧」 予告編

 

1985年10月26日公開。

実在した連続殺人犯で脱獄囚の半生を描く異色作。

 

受賞歴:

ブルーリボン賞助演女優賞(藤真利子)

毎日映画コンクール女優助演賞(藤真利子)

日本アカデミー賞優秀助演男優賞ノミネート(川谷拓三)

 

 

脚本:古田求

監督:五社英雄

出演者:

緒形拳、浅利香津代、川谷拓三、大村崑、浅野温子、宮下順子、松本伊代、藤真利子、竹中直人、花澤徳衛、柳沢慎吾、小林稔侍、菅井きん、萩原流行、笑福亭松鶴

 

 

あらすじ:

昭和23年、ある山奥の鉱業所。

坂根藤吉(緒形拳)は坑夫として鉱山で働き、妻・ふくみ(浅利香津代)、息子・喬と3人で暮らしていた。

そんなある日、鉱山で落盤事故が発生する。

その補償問題で鉱夫の代表として会社側と掛け合った坂根は、逆に多額の裏金を会社側から掴まされてしまう。

坂根の運命の歯車が狂いだしたのはこのときからであった。

裏金を元に金貸しをはじめた坂根は、事故で夫を亡くした地所テル子(浅野温子)に接近、親密な仲になる。

そして、このことが原因で妻と息子を次々と惨殺。

また、坂根は金を貸しているのをいいことに仙波徳一の妻・すゑ(宮下順子)とも肉体関係を結び、すゑの一人娘・弘子(松本伊代)にまで手を出そうとする。

しかし、弘子は坂根からたくみに金を引き出したあげくに、鉱業所の課長と結婚してしまう。

小娘に翻弄されたことに気づいた坂根は、弘子の婚礼の夜、ダイナマイトを持ち出し、仙波家を木端微塵に吹き飛ばしてしまった。

この爆破容疑で逮捕された坂根は、真壁刑事(川谷拓三)、松井刑事(大村崑)の執拗な追求にあい、ふくみ・喬殺しも自供した。

留置場に入れられた坂根は突然、隠し持っていた剃刃で自殺をはかるが、奇跡的に一命はとりとめた。

昭和27年、坂根は刑務所を脱走。

以後、素性を隠しながら各地の飯場を転々と渡り歩く、流浪の旅が続いた。

一方、警察側も坂根逮捕に全力をあげ、真壁刑事が追跡を開始した。

そんな逃亡生活の果てに、坂根は一人の薄幸の女・内藤ちえ(藤真利子)と巡り合う。

坂根にとってちえは、初めて出会った菩薩のような女であった。

ちえも坂根に強く魅かれ、やがてふたりは自然に親密な関係になっていった。

ある日、ちえは照れる坂根に無理矢理、眉墨を引いた。

最初は嫌がっていた坂根だが、鏡を見るとそこには全く別人の自分があり、以後、出歩く時には必ず化粧をすることにした。

しかしそんなふたりの仲も、捜査の輪を刻一刻とせばめる警察によって引き裂かれてしまった。

ちえは金持ちの旦那のところに囲われ、坂根はまた旅へ。

彼女は坂根の素性を風呂屋の手配書を見て全て知っていた。

だが、坂根に強く魅かれるちえは別れる時に、彼に住所を教えた。

そして、ちえのことを忘れられない坂根は彼女の元へ。

久し振りにほんのつかの間の逢瀬を楽しんだ坂根はまた旅へ出るため夜のプラットホームへ行くが、便所で化粧をすませ出てくると、そこには彼のあとを追ってきたちえがいた。

そしてふたりでの逃亡がはじまろうとした時、突然、警察のサーチライトが一斉に点灯した。

 

 

コメント:

 

不倫がきっかけで妻と息子を殺し、その後も、自分のものにならなかった娘の家を爆破するという殺人狂のような坂根藤吉。

この男は、逮捕されるも脱獄し、変装して逃亡生活を送る。

二つの石ころが収められた小さな仏壇を抱えて旅をする坂根は転々とするが、料理屋のおかみ・内藤ちえ(藤真利子)と出会う。

人生で初めて、自分を心から愛してくれる最高の女性と出会った坂根。

しかし今の彼はちえと一緒になることはできないし、また、それはは許されない。

彼女を愛するがゆえに、彼女のもとを去ろうとする坂根。

それでもちえが坂根に追いすがり、指名手配中の殺人犯であることを知ってもなお命がけで彼に添い遂げようとした。

だがその時、捜査の手はすでに坂根の肩にかかっていたのだった。



坂根藤吉(演・緒形拳)とその不倫相手・テルコ(演・浅野温子)の激しい濡れ場。

しかもその場面を、妻フクミが覗いているという。

『復讐するは我にあり』と同様に、緒形拳の濡れ場は迫力がありすぎる。

 

タイトルの「化粧」というのは面白い。

「生きるために人は心で化粧する」というのが本作のキャッチコピーだ。

藤真利子扮するちえが、情事の後で戯れに眉墨(アイブローペンシル)で緒方拳に眉を描いてやる。

この坂根という男は眉毛が極端に薄くそれが蛇のように不気味な印象を与えていたのだが、これで別人のような顔になる。

以降彼は自分でも眉を引いて逃亡生活を続ける。

 

化粧が人間を変えるのだろうか。

坂根も「きれい」という感情を知り、欲望剥き出しのままだったのが人目を気にし装うことを覚えて初めて、人間としての生きる道を歩み出したということなのか。

 

薄幸の女・ちえを演じた藤真利子が素晴らしい。

本作では多くの映画賞で助演女優賞を受賞した。

藤真利子は、元より演技派女優として定評があり、テレビでも多くのサスペンスドラマなどで迫真の演技を見せている。

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