「緋牡丹博徒 お竜参上」
1970年3月5日公開。
緋牡丹博徒シリーズ第6作。
脚本:加藤泰、鈴木則文
監督:加藤泰
出演者:
藤純子、菅原文太、若山富三郎、嵐寛寿郎、長谷川明男、 安部徹、天津敏、 汐路章、夏珠美、 山岸映子、山城新伍、京唄子、 鳳啓助
あらすじ:
お竜(藤純子)は数年前、死に追いやったニセお竜の娘・お君を探しながら渡世の旅を続けていたが、長野の温泉町で知り合った渡世人・青山常次郎(菅原文太)から浅草にいると聞き、東京へ向かった。
浅草にやってきたお竜は鉄砲久一家に草鞋をぬいだ。
鉄砲久(嵐寛寿郎)は娘婿の鈴村が、六区に小屋をもっている関係で、一座の利権をにぎっていた。
だが、同じ浅草界わいを縄張りとする鮫洲政(安部徹)一家は一座の興行権を奪おうと企んでいた。
鮫州政一家の勘八のふところをねらったスリのおキイ(夏珠美)だが、しくじり危ういところを彼女に思いをよせる銀次郎(長谷川明男)に救われた。
お竜は、鉄砲久に彼女の詫びを入れる銀次郎からおキイがお君であることを知った。
そしておキイは鉄砲久に養女として預けられた。
ところで、鈴村は鮫洲政一家の博奕に手を出し、多大な借金を背負い、小屋の利権を渡すよう迫られていた。
鉄砲久にこの片をつけるよう頼まれたお竜は、筋の通らない金は受け取れないと拒絶した鮫州政に差しの勝負を挑み、いかさまを見破り、証文を取り戻した。
この夜、常次郎が浅草にやってきた。
彼を追う二保は鮫州政一家に草鞋をぬいだ。
ある夜、鉄砲久は鮫州政の謀略にかかり、殺された。
翌日、下谷一帯の権力者・金井(天津敏)が仲裁人となった和解の席上、鮫洲政一家はお竜と代貸・喜三郎(汐路章)に匕首を向けたが、お竜を尋訪ねてきた義兄弟・熊虎(若山富三郎)に救われた。
一方、銀次郎は鮫州に人質にされていたおキイと鈴村を助けたことから、殺された。
そしてその夜、常次郎を立会人に鮫州政と差しでケリを付けようとしたお竜だったが、約束に反し鮫州政は手下を引き連れてやってくる。
常次郎の加勢で手下たちを斬って捨てるお竜。
残された鮫州政は塔から落ちて死んだ。
コメント:
藤純子扮する“緋牡丹のお竜”こと矢野竜子が主役の「緋牡丹博徒」シリーズ6作目。
監督は3作目の「緋牡丹博徒 花札勝負」でもメガホンをとった加藤泰。
同作の流れを引き継いだストーリーで、雰囲気のある浅草界隈を作り出した美術監督の井川徳道によるセットも見もの。
藤純子が迫力ある、そして静かな任侠の女を見事に演じている。
もう藤純子は日本の任侠映画における堂々たるトップ女優だ。
雪の今戸橋で、お竜が常次郎を見送り、ミカンを渡すシーンは圧巻。
この藤純子と文太の橋のシーンが、シリーズの中で最高だという声が多い。
本作の舞台は浅草。
敵対するのは、悪役スター・阿部徹が演じる鮫州の政五郎、通称・鮫洲政だ。
お竜は、鉄砲久(嵐寛寿郎)の一家に草鞋を脱ぐ。
安部徹は、アラカン一家が所持する芝居小屋の利権を狙っており、どんな卑怯な手を使つても目的を果さんとする。
お竜は、熊虎親分(若山富三郎)やゲストスター・菅原文太扮する渡世人・青山常次郎の助太刀を得ながら、悪党・安部を葬る。
どうしても、若山富三郎が扮する熊虎親分というキャラクターはこのシリーズには不可欠のようで、今でもお竜が好きだと繰り返している。
この強くて憎めないコメディタッチの人物が、お竜ファンの気持ちを代弁しているのだ。
あまりにもキチンと筋を通す善玉とメチャクチャな悪役を対比させて、勧善懲悪の世界を描いている。
お竜の啖呵の歯切れの良さは、実に気持ちいい。
本作では、菅原文太が青山常次郎というカッコいい渡世人として登場し、しっかりお竜を助けている。
第2作の「一宿一飯」では菅原文太が虚無的なヒットマンとして登場していた。
文太は絶対に善玉でなければならない。
東映任侠路線でのトップ3の一人だったのだから。
スリのおキイ(夏珠美)が、実はずっとお竜が探していたお君であった。
それを知って、二人が再会を果たすシーンは本作でのクライマックスのひとつ。
この場面で多くのお竜ファンが涙したという。
京唄子と鳳啓助のコンビが、本作でも笑いを取る軽妙な演技を披露している。
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