「帝都物語」
1988年1月30日公開。
平将門の怨霊により帝都破壊を目論む魔人・加藤保憲とその野望を阻止すべく立ち向う人々との攻防を描いた作品。
配給収入:10億5000万円。
原作:荒俣宏『帝都物語』。
脚本:林海象
監督:実相寺昭雄
出演者:
勝新太郎、嶋田久作、原田美枝子、石田純一、坂東玉三郎、宍戸錠、中村嘉葎雄、大滝秀治、西村晃、島田正吾、高橋幸治、平幹二朗
あらすじ:
明治45年。
実業家・渋沢栄一(勝新太郎)は土御門家の陰陽師・平井保昌(平幹二朗)や物理学者・寺田寅彦らに協力を求め、ある計画を進めていた。
それは「東京改造計画」といい、帝都・東京を軍事的にだけでなく霊的にも守護しようとするものだった。
しかし、謎の魔人・加藤保憲(嶋田久作)がその計画の前に立ちふさがっていた。
加藤は1000年前関東に独立国を築こうとして失敗し、謀反人として討伐された平将門の霊を呼び醒まし、東京を壊滅させようと企んでいた。
そして加藤は将門の末裔・辰宮由佳理を霊媒として選んだ。
平井や文豪・幸田露伴(高橋幸治)の努力により加藤の企みは潰えたかに見えたが、由佳里の胎内には恐るべきサイキック・パワーを秘めた生命が宿っていた。
加藤との闘いに敗れた平井は大正12年9月1日を帝都壊滅の日と予言し、明治天皇崩御の日、自刃する。
大正12年9月1日。
大地震は起こったが幸田は死闘の末、加藤に傷を負わせた。
結局、将門の怨霊は目醒めず、帝都破壊は不完全に終わった。
そして東京は渋沢らの手により急速に復興していった。
昭和2年。
日本初の地下鉄道が開通しようとしていたが、加藤の放った魔物が妨害していた。
寺田はその解決策として西村真琴(西村晃)が作った日本で最初のロボット“学天則”を利用。
加藤は力を回復し再び帝都破壊を企むが、新たな宿敵が現われた。
将門の命を受け、由佳里の兄・辰宮洋一郎(石田純一)へ嫁いで来た目方恵子(原田美枝子)である。
加藤は由佳里に産ませた雪子を銀座の雑踏で誘拐し、将門の霊を呼び戻そうとする。
しかし、実は雪子は加藤の子ではなく洋一郎と由佳里の間に産まれた子だった。
洋一郎は自らの霊力で将門の霊を封じ、恵子はサイキック・パワーで加藤と死闘を繰りひろげた。
春。
銀座では“帝都復興式典”が開かれ、賑わっている。
花見客のあふれる神田明神では易者姿の泉鏡花(坂東玉三郎)が加藤に似た軍服姿の男を見つけドキッとするが、人ごみにまぎれて行った。
コメント:
原作は、1985年(昭和60年)から発表された荒俣宏の小説デビュー作。
平将門の怨霊により帝都破壊を目論む魔人・加藤保憲とその野望を阻止すべく立ち向う人々との攻防を描いたSF作品。
1987年(昭和62年)の第8回日本SF大賞を受賞し、1988年(昭和63年)にはアニメ映画化され、その後、実写版である本作が制作された。
本作は、原作の「神霊篇」から「龍動篇」までの映画化。
製作費は10億円の大作。
配給収入は10億5000万円で、その年の日本映画の8位という成績。
奇想天外な荒俣宏&実相寺ワールドである。
明治末期から昭和初期の東京を再現した見事な美術セット、ハリーハウゼンに負けないストップモーション・アニメに嶋田久作の世紀の怪演を見ているだけで充分。
新日本フィルによるスケールの大きな音楽も素晴らしい。
製作時期がバブル景気の絶頂期だったせいか、豪華なキャスト等予算を惜しまない作り方が凄い。
何といってもコンセプチャル・デザイナーが、米SF映画『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとして知られた、あのH.R.ギーガーなのだ。
今時の邦画がいかにも低予算で作られた貧乏臭さがプンプンするのに比べて、本作は夢のような環境によって作られた傑作といえる。
相当に荒唐無稽な話ではあるが、渋沢栄一や幸田露伴、泉鏡花など実在の人物をドラマの重要な役どころで登場させたり、関東大震災などの歴史上の事実を巧みに配置して、いかにもありそうな雰囲気を漂わしてはいる。
平将門の霊を呼び覚まして、帝都(東京)を破壊しょうとする謎の超能力者・加藤保憲に「正義」の超能力者が挑む「超能力戦争」を次から次へと息のつく間もないSFXの連打で描いている。
もちろん、見所はハイビジョンを駆使したというSFXで、そのレベルの高さは世界的なものではないか。
とにかく日本映画には珍しい本格派の娯楽映画として2時間余楽しめる。
今年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公である渋沢栄一が、すでにこの映画に主役として登場していたとは驚き。
しかもそれを演じているのが、勝新太郎とは、笑える。
本来なら、絶対に似合わないが、SFなら良いかも。
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