「若親分兇状旅」
1967年8月12日公開。
若親分シリーズ第7作。
脚本: 高岩肇
監督:森一生
出演者:
市川雷蔵、江波杏子、葉山葉子、都はるみ、藤巻潤、渡辺文雄、垂水悟郎、永田靖、五味龍太郎、丸井太郎
あらすじ:
南条武(市川雷蔵)が軍港に近いその町に来たのは、海軍以来の親友・高木少佐の自決の謎を解くためだった。
この事件の背景は複雑だった。
武は土建屋小山組の女親分千代子(江波杏子)や、運送業者でかつて武の部下だった金杉(垂水悟郎)らが事件に関係すると睨んだ。
そして高木が下宿していた家の主人の姪・早苗(葉山葉子)や、飲み屋「月ケ瀬」の亭主から高木の自決前後の言動を聞いた。
しかし早苗は、二度と武に会いたくないと言って去った。
早苗の兄はかつての武の部下で、猛訓練中、急病で死に、母もその悲しみのために後を追ったというのだ。
武はあえて弁解しなかった。
間もなく、武は千代子の背後に、町のボス・土屋子爵(渡辺文雄)がいることを知った。
彼女は亡父の義理で土屋に縛られていた。
また、金杉が東西汽船の社長・丸尾とつながっていることが分って、事件の全貌が明らかになった。
丸尾らは高木の紹介で買った汽船で武器密輸をやり、それに利用されたと知った高木は、自決したのだった。
金杉は事件の全貌を知った武に、町を去るよう脅した。
その夜、料理屋「三楽亭」に集った土屋、丸尾、金杉、それに千代子たちは、祭の宵宮を利用して密輸の船を出す手はずを整えたが、千代子は、亡父の義理だけで悪事の片捧を担ぐ非をさとした武に、それを知らせた。
武はそれを海軍の親友・井川少佐(藤巻潤)に連絡し、それを邪魔しようとする金杉を斬った。
金杉は死に際に、満蒙の軍閥を戦わせて両方に武器を売りつけていた首謀者は、政界の黒幕・俵藤(永田靖)だと言い残した。
それを聞いた武は、その足で土屋邸へ乗り込み、死の商人の元凶・俵藤と土屋を斬った。
そして、海軍を傷つけないためあくまで事件をやくざの殺し合いにとどめ、高木の死を謎に秘したまま、武は自首して行った。
その武のきびしい姿に、千代子と早苗は声をのんで見送るのだった。
コメント:
このシリーズもこれで7作目。
時は大正初期。
軍港近くの港町を舞台にして、原因不明の自殺をした海軍時代の友人高木少佐の死因を主人公の若親分がさぐる。
これをつきとめるために海軍上がりの任侠渡世を行く若親分・南条武は苦心する。
そして最後にその奸計をたくらんだ俵藤、土屋、金杉らを片づける。
本来なら警察に知らせれば検挙となる事件だが、田舎町で羽ぶりをきかすボスや政界黒幕だから手に負えず、主人公の手で仕とめる。
子分をふくめれば大陣営をはる敵を、たったひとりで片づけてしまうのだから、まさに超人的だが、そこがこのシリーズのおもしろいところ。
探査の協力を申し出る戦友・井川少佐を断り、あくまで自分ひとりで事件を解決、海軍に累を及ぼすのをさけて最後に自首の決心をきめる主人公の行動も、海軍出身の一匹狼らしいかたちで、颯爽たる感じである。
亡き父が悪ボス土屋の恩義を蒙り、義理を感じて縛られている小山組の女親分に扮する江波杏子が異色の演技を披露している。
昼間は土建の仕事場で、子分たちをどなりつける男装の現場監督で見せる。
だが、夜は色香あふれる和装姿の美女に早変わりする。
この変身ぶりには若親分も目を見張る。
やくざの足を洗い堅気になった兄妹の妹役で都はるみが出演している。
あの人気歌手の都はるみも、歌手志望の小料理屋の妹として、得意の歌を一曲唄う。
日本が大陸に進出していた頃だ。
売込み先が満蒙。
満蒙というのは、日本が昭和に入って作り上げる満州国および内蒙古当たりの地域だ。
その満蒙に散在する地方軍閥を戦わせ、双方に武器弾薬を売込もうという奸商の魂胆があったのだ。
この商略にハメられて高木少佐は輸送船買取りの仲立ちをし、後に真相を知って潔癖感から自決したというわけだった。
歴史を踏まえた脚本が制作されている。
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