市川雷蔵の映画 「剣」 三島由紀夫の同名短編小説の映画化! 三隅×雷蔵の「剣三部作」の一つ! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「剣」

 

 

剣 プレビュー

 

1964年3月14日公開。

雷蔵自身が志願して映画化された作品。

三島由紀夫の短編小説を映画化。

三隅×雷蔵の「剣三部作」の一つ。

 

 

脚本:舟橋和郎

監督:三隅研次

出演者:

市川雷蔵、長谷川明男、藤由紀子、川津祐介、紺野ユカ、稲葉義男、河野秋武 

 

 

あらすじ:

東和大学剣道部主将・国分次郎(市川雷蔵)は、純粋に剣の世界に打ちこんでいた。

剣に全生命をかける厳しいキャプテンの姿を、新入部員の壬生(長谷川明男)は神の如く、偶像視し、彼の行き方を学ぼうとした。

国分の同級生で三段の賀川(川津祐介)は、剣を愛しながら、適当に遊ぶタイプで、国分の息苦しい考え方と対照的であった。

こうした部内の不満を一身に受けて、監督する木内(河野秋武)もまた勝負で片がつく剣の世界を愛していた。

強化合宿のシーズンがやってきた。

合宿費用捻出のため、デパートにアルバイトに出向いた賀川が、勤務中禁煙の規則を破った。

国分は部員全員を道場に集め制裁に処した。

ますます国分に対して競争心をかられた賀川は、学内ナンバーワンと言われる伊丹恵理(藤由紀子)を使って国分を誘惑しようとした。

恵理から国分が彼女の肉体を求めたことを聞き、賀川はかすかな優越感に酔った。

夏の強化合宿の日、国分の見事な統率力に反溌を持った賀川は、剣道部に厳禁されている水泳に誘った。

ためらう部員に国分が恵理を誘惑したことを説き、偶像から下した。

海に向って走る部員たち。

唯一人、壬生だけは、国分を裏切れず合宿所に残るのだった。

木内監督に見つかり賀川は即刻帰京を命じられた。

責任をとってうなだれる国分の姿は壬生には敗北的にみえた。

数日後の納会の日、ねぎらいの言葉を残して席をたった国分を追った部員の前に、胴を着け、竹刀を抱えて絶命している国分の姿があった。

通夜の日、恵理は、賀川に語った事実は嘘だったと告白した。

 

 

 

コメント:

 

この映画の公開時のキャッチフレーズは、「この汗の中に生きがいがある! 現代の誘惑を叩きつぶしてひたぶるに命を燃やす異常な青年!」「誘惑の風を斬って剣の心に生命を賭けた一学徒の異常な生涯を描く!」。

 

「剣」は、三島由紀夫の小説発表からわずか5か月で映画化された。

雑誌に掲載された小説を市川雷蔵が読んで、自ら映画化を希望したという。

雷蔵は1964年(昭和39年)が明けるとすぐ撮影準備に入り、三島も参加する午前4時の寒稽古(学習院大学剣道部)を見学しているが、多忙を極める2人がここまでするのは、作品への情熱、そして、三島が雷蔵を本物の俳優だと認めているからだ。

 

「剣」はテレビドラマとしても映像化されているが、三島はそのドラマと映画を比較し、「加藤剛の主役は、みごとな端然たるヒーローだが、映画の主役の雷蔵と比べると、或るはかなさが欠けている。これはこの役の大事な要素だ。」との感想を「週間日記」の金曜日に残している。

 

また、「日本映画五十年史」を著した塩田長和はその中で、映画「剣」について、「ここでは雷蔵が三島の分身ではないかと思わせられるほどだった」と評している。

 

本作は三島由紀夫の思想のエッセンスがにじみ出た作品で、主演者の深い文学的理解がないと成立しない。

「炎上」で三島文学の神髄に触れた雷蔵が再度挑戦した形だ。

歌舞伎世界の出身で、古き日本の美しさを理解する雷蔵と、言葉と思想で現代日本の危うさに警鐘を鳴らした三島とのコラボレーションとも言える。
文芸作品の宿命である原作への敬愛、そして映像化への演出家・出演者の内的格闘の熱量が反映されないと、成功はおぼつかない。

 


ストイックに剣に生きる国分主将、その剣道部キャプテンを崇拝する後輩の壬生、アンチテーゼとして現代の享楽にも手を伸ばす実力者賀川、この三者の葛藤が絡み出してから、作品は一段と深化する。

女性の誘惑は、直接的な描写を避け、異性の魅力に屈した通俗的な男、として香川に揶揄されるが、実際は不明のまま映画は進む。

あくまで賀川は国分を貶め、壬生は国分を崇める。
微妙なホモ・セクシャルな空気を醸成しつつ、剣道部合宿の危機が訪れる。
娯楽作品のクライマックスとは一線を画し、賀川の俗の攻撃に対し、国分が掲げる精神の気高さが、いかに勝利を得るかが核心となった。

自死というより、美学に殉じた永遠の凍結のような結末。

三島文学でなければ、このようなラストシーンはありえない。

強烈な印象を残した。

 

この映画は、TSUTAYAで購入、レンタル、ネット視聴が可能なようだ。

https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA00007YIVG