「沓掛時次郎」
1961年6月14日公開。
長谷川伸の有名な戯曲「沓掛時次郎」の映画化。
脚本:宇野正男・松村正温
監督:池広一夫
主題歌:「沓掛時次郎」(橋幸夫)
キャスト:
沓掛時次郎:市川雷蔵
おきぬ:新珠三千代
おろく:杉村春子
六ツ田の三蔵:島田竜三
太郎吉:青木しげる
聖天の権威:稲葉義男
八丁畷徳兵衛:志村喬
赤田三十郎:千葉敏郎
溜田の助五郎:須賀不二男
おとわ:滝花久子
源右衛門:荒木忍
玄庵:志水元
大野木の百助:村上不二夫
苫屋の半太郎:寺島貢
磯田の鎌吉:木村玄
政吉:高倉一郎
あらすじ:
信州沓掛生れの時次郎(市川雷蔵)は渡世の義理から、六ツ田の三蔵(島田竜三)に一太刀浴びせるが、三蔵の女房おきぬ(新珠三千代)への溜田の助五郎(須賀不二男)の横恋慕の果てと知って、逆に助五郎らに立ち向かった。
卑怯な助五郎らは深傷の三蔵を斬って逃げた。
三蔵は苦しい息の下から女房おきぬと伜太郎吉(青木しげる)を時次郎に託した。
時次郎は二人を連れて、熊谷宿まで逃げのびるが、おきぬはそこで病いに倒れた。
人のいい旅籠桔梗屋の女将おろく(杉村春子)は何かと面倒をみてくれた。
医者玄庵(志水元)の診察でおきぬは身重であることが分った。
時次郎は、おきぬの父親源右衛門が足利在にいると知って、足利在に源右衛門(荒木忍)を訪ねておきぬ母子の苦衷を訴えたが、親を捨ててやくざと一緒になった不幸者に用事はないと冷たく突っ放されてしまった。
おきぬの病気回復を待って時次郎とおきぬは門付けを始めた。
助五郎のふれ書で時次郎のことを知った、助五郎の兄弟分聖天の権蔵(稲葉義男)は、時次郎の留守を狙って太郎吉を人質にさらおうとした。
これを救ったのは、熊谷宿の貸元八丁畷の徳兵衛(志村喬)だった。
時次郎から事情を聞いた八丁徳は時次郎をかばった。
かねてから、八丁畷の縄張を狙っていた聖天の権は助五郎に通報。
八丁徳へ喧嘩状を叩きつけた。
その頃、おきぬは再び病いに倒れた。
時次郎は八丁徳の助っ人を買ってでた。
その助ッ人料の十両をおろくの手に渡して修羅場へ向った。
夜の天神の森に対峙した八丁徳と聖天の権蔵。その頃、助五郎らは、聖天の用心棒赤田(千葉敏郎)を道案内に桔梗屋を襲っていた。
気丈に太郎吉をかばうおきぬに赤田の当身が飛んだ。
悶絶したおきぬを拉致しようとした時、権蔵を斬った時次郎が飛びこんできた。
太郎吉を庇って時次郎は助五郎、赤田を斬り倒していった。
悶絶したおきぬは再び目を開かなかった。
時次郎は、太郎吉を足利在の源右衛門に渡した。
源右衛門と女房おとわは喜んで太郎吉を預かった。
「やくざの垢を落したらきっと逢いに来ます」と言って時次郎は去っていった。
コメント:
大映の依頼により、橋幸夫が主題歌を歌っている。
橋の3作めのシングル「おけさ唄えば」の映画化で、橋が市川雷蔵と共演したことが、楽曲制作のきっかけとなったという。
作詞:佐伯孝夫、作・編曲:吉田正。
横移動で奥行も迫力も十分に活写された天神ノ森での乱闘、狭小空間を抜けながら仕掛けや火も使った大団円となる一対多の死闘等、活劇としての見せ場もたっぷり。
おきぬの実家(足利)から下る道沿いに広がる棚田風景も美しい。
志村喬、杉村春子といった面々がが出てくると、途端に画面が引き締まる。
映画の格が二段ほどあがる感じ。
この映画では、ニヒルな雷蔵ではなく、人情味溢れる雷蔵。
これがまた良い。
ラストシーンがシェーンそのまんま。
子供の呼ぶ声を振り切って去っていく。
違うのは「おとっちゃん」の呼び方に振り向いたところ。