「青空娘」
1957年10月8日公開。
源氏鶏太の同名小説の映画化。
脚本: 白坂依志夫
監督: 増村保造
出演者:
若尾文子、菅原謙二、川崎敬三、東山千栄子、信欣三、沢村貞子、穂高のり子、品川隆二、三宅邦子、ミヤコ蝶々、南都雄二
あらすじ:
伊豆のある町の高校を卒業した小野有子(若尾文子)は東京の父母の許に帰ることになっていた。
だが、小さい頃から育ててくれたお婆さんが臨終の際、本当の母は他にいることを彼女に告げる。
東京の小野家に引き取られた有子だが、父親は出張中で、女中扱いされ、味方は女中と出入りの魚屋だけだった。
しかし次男の腕白中学生・弘志とは、ある時大喧嘩をしてから急に仲良くなる。
そんな頃、有子は卓球大会で長女・照子(穂高のり子)のボーイフレンド広岡(川崎敬三)を破り、彼から好意を持たれたために照子の怒りを買った。
だが彼女は“いつも青空のように明るく”生きることを教えてくれた絵の先生・二見(菅原謙二)が上京するというので大いに力づけられた。
また、帰ってきた父・栄一(信欣三)から母の話を聞き、行方不明の母を探そうと決心した。
その後、広岡が有子に求婚したことを聞いた照子は有子を泥棒呼ばわりし、彼女は堪えかねて家を出て、二見先生の下宿を訪ねた。
そこで二見の温かさに触れたものの、隣の住人で二見の恋人と自称する女性が現れて追いたてられてしまう。
広岡から旅費を借りて伊豆に帰った有子は、実の母(三宅邦子)が訪れて来たことを知って残念がるが、母が生きていたことが分り喜ぶのだった。
やって来た二見を囲んでクラス会が開かれるが、席上友達の信子からジャズ喫茶をやっている叔母を紹介される。
有子は再び上京し、そこで働くことになった。
広岡や二見の協力で有子が実の母に会うことが出来た感激の瞬間、弘志がたずねて来て父が病床にあることを告げた。
有子は尻ごみする母を連れて小野家を訪れる。
栄一の臨終間際の心ある言葉に、家族達はすべてを水に流して和解することができた。
いつの間にかひそかに有子の面影を抱いていた二見も、淋しい気持をふり払って有子と広岡の将来を祝福してやるのだった。
コメント:
ラジオドラマで人気になった源氏鶏太の原作を、増村保造監督と若尾文子の初コンビで映画化した作品。
邦画青春映画の金字塔ともいうべき傑作である。
昭和の少女マンガのようなベタな話だが、名監督が演出するとこんなにもテンポが良くて面白い作品になるという好例。
大変美しくて清々しい映画。
青空のような有子を演じる若尾文子の姿が素晴らしいし、カラー映像も美しい。
その素直な姿を見ているだけで感動する。
病床の父親を叱る場面は、厳しい言葉の中に優しさがあふれていた。
若尾文子の演技力が一段とアップしてきていることが見て取れる。
ヒロインを演じる若尾文子の明るさ全開のすばらしいヒューマンドラマ。
妾の娘ということでイジメにあっても、全く負けていない。
尾を引くことなく、あっという間にカラッと笑顔になる。。
実母を見つけ、結婚へというシンデレラ物語だが、抜群のテンポと、ミヤコ蝶々などの脇役が見事で、心が晴れる。
戦後初期の時代の暗さがしだいに取れてきて、復興期の明るい雰囲気が出てきた昭和30年代の作品。