「刑事物語」
1982年4月17日公開。
高倉健の特別出演(ノン・クレジット)。
1982年から1987年まで続いた武田鉄矢主演の「刑事物語」シリーズ全5作の第1作。
原作:片山蒼(本名:武田鉄矢)
脚本:渡邊祐介、武田鉄矢
監督:渡邊祐介
主題歌: 吉田拓郎「唇をかみしめて」
キャスト::
- 片山元 - 武田鉄矢
- 三沢ひさ子 - 有賀久代
- 九鬼刑事課長 - 仲谷昇
- 藤堂一課係長 - 小林昭二
- 田沢刑事 - 三上真一郎
- 沢木刑事 - 岡本富士太
- 田中補導係 - 梅津栄
- 矢代スミ刑事課庶務 - 樹木希林
- 工藤卓 - 花沢徳衛
- 秋吉一人(クリーニング会社社長) - 草薙幸二郎
- 三木本伸吉 - 河原裕昌
- 捜査係長(博多署) - 浜田晃
- 補導係(田中の同僚) - 平松慎吾
- 花子(刑事課) - 藤枝亜弥
- 姫子(トルコ嬢) - 宇田川智子
- 管理人のおばさん - 初井言榮
- 元の母(回想) - ひろみどり
- 被害者の主婦 - 飛鳥裕子
- 人質の女性 - 遠藤真理子
- スナックの女 - 室井滋
- 種井(詐欺師) - 西田敏行(友情出演)
- 三上英次 - 高倉健(特別出演・クレジット無し)
- 村上努(隣人) - 田中邦衛
あらすじ:
七月の山笠祭りの暑い夜。
博多署は、あるソープランドを管理売春の容疑で不意打ち捜査した。
刑事の片山元(武田鉄矢)はそこで聾唖者の風俗嬢・三沢ひさ子(有賀久代)と出会った。
翌朝、ガサ入れ失敗をマスコミは書き立てた。
そのとばっちりが片山にまわってきて、沼津転勤が決まった。
東京行きのブルートレインに片山とひさ子が乗っていた。
ひさ子の悲惨な過去に同情した片山が身柄を引き取ったのだ。
二人は兄妹ということで、市内の花園荘に住むことになった。
そんな二人をじっと見ている二人がいた。
村上努(田中邦衛)と秋吉一人(草薙幸二郎)だった。
片山は早速、南沼津署に出勤し、連続殺人事件班に組み入れられた。
ある日、信用金庫で強盗事件が起きた。
片山は得意の蟷螂拳(とうろうけん)で犯人を取り押さえ、その男が連続殺人事件と繋がっていることをつきとめた。
男は女性を売春組織に送り込む周旋屋だったのだ。
さらに片山は、九州時代の知り合いの老ヤクザ工藤からソープランドを根城にした大がかりな売春ルートの情報を入手し、捜査班はソープランド「徳川」への強制捜査に踏み切った。
だが、片山はそこで、重要参考人のクリーニング店「白美社」の店員を死亡させるというミスを犯してしまった。
ひさ子の様子が変わったのはその頃だった。
片山の問いに彼女は「スキナヒトガイル」と答えた。
ひさ子に指一本触れていない片山はショックだった。
ある夜、片山は正体不明の三人組に襲われ、工藤(花沢徳衛)の勧めで沢木と共にひさ子の身辺を見張ることにした。
二日目、「白美社」の車が花園荘に近づき、ひさ子を連れ去った。
売春組織の元締めである「白美社」が口封じのため、不要になった女たちを次々に殺していった。
それが連続殺人事件の真相だった。
怒った片山は組織の巣窟である「白美社」に乗り込み、一味の黒幕・秋吉と対峙、大乱闘の末一味全員を逮捕した。
翌日、刑事課の喜びとは別に、威嚇とはいえ秋吉相手に実弾六発を射った片山は、またも転勤を命じられた。
今度は青森である。
片山と入れ替えに、北海道から三上刑事(高倉健)が沼津署にやってきた。
表に出た片山を待っていたのは、ひさ子と村上努という、ひさ子と同じ境遇の工員だった。
奈落から救ってくれた片山に感謝しつつも、懸命に逆境に生きる村上を愛さずにはいられなかったのだ。
村上は、ひさ子を倖せにすると約束し、片山に許しを乞うのだった。
数日後、上野駅から一人淋しく青森行きの夜行列車に乗り込む片山の姿があった。
コメント:
「幸せの黄色いハンカチ」に出演して以来、応援してきた武田鉄矢への想いを、特別出演という形で示した健さん。
最後の、主人公・片山刑事の転勤のタイミングで、北海道からの新任刑事として姿を見せる。
ほんのわずかな、カメオ出演だが、これで作品のレベルがアップするのだ。
原作、脚本、主演を担当した武田鉄矢の渾身のシリーズ。
数年前から、連ドラ「3年B組金八先生」でテレビ界でゆるぎないステイタスを築き上げていた武田鉄矢の、映画の世界でもしっかり道を開きたいとという強い意志と覚悟が伺える名作だ。
このシリーズは、刑事ものファンタジーである。
ハンガーヌンチャクなどで戦えるわけがない。
だが、エンディングでは「男はつらいよ」よりも悲哀がにじみ出ていて、武田鉄矢の本作への強いこだわりが現れている。
また、エンディング曲の吉田拓郎の大ヒット「唇をかみしめて」は、まさにこの映画にふさわしい最高の曲だ。
観客の心がすうっと落ち着く。