「新幹線大爆破」
1975年7月5日公開。
キネマ旬報読者部門第1位。
興行収入:5億3,000万円。
脚本:小野竜之助・佐藤純弥
監督:佐藤純弥
出演者:
高倉健、織田あきら、山本圭、田中邦衛、郷鍈治、、宇津井健、千葉真一、小林稔侍、志村喬、永井智雄
あらすじ:
約1,500人の乗客を乗せたひかり109号、博多行は9時48分に定刻どうり東京駅十九番ホームを発車した。
列車が相模原付近にさしかかった頃、国鉄本社公安本部に109号に爆弾を仕掛けたという電話が入った。
特殊装置を施したこの爆弾はスピードが80キロ以下に減速されると自動的に爆発するというのだ。
さらに、この犯人は、このことを立証するために札幌近郊の貨物列車を爆破してみせる。
これらの爆破計画は、不況で倒産した精密機械工場の元経営者・沖田哲男(高倉健)、工員の大城浩(織田あきら)、そして元過激派の闘士・古賀勝(山本圭)によるものであった。
そして沖田は500万ドルを国鉄本社に要求した。
運転指令長の倉持(宇津井健)は、運転士の青木(千葉真一)に事件発生を連絡するとともに警察庁の須永刑事部長、公安本部長の宮下を招集、対策本部を設定した。
やがて国鉄側が沖田の要求に応じたために、大城が500万ドルを受け取りに向ったが、パトカーの執拗な追跡に事故死してしまった。
仲間を失った沖田は単身、捜査本部と虚々実々の掛け引きを展開し、巧妙な手口を駆使してついに500万ドルを手に入れた。
しかし古賀は、貨物爆破の現場に残したタバコから身許が割れ、沖田を逃すために自爆した。
沖田は、捜査本部に爆弾除却方法を記した図面が喫茶店サンプラザのレジにあることを知らせると、変装し、偽名を使って海外旅行団の一員として海外逃亡すべく羽田に向った。
ところが、その喫茶店が火事になって、図面が焼失してしまう。
捜査本部はTVで必死に沖田に呼びかけたが、反応はなかった。
その後捜査本部は、制限速度ぎりぎりで走る109号を外から撮影するよう指示し、何とか撮影できたフィルムが届く。
そのフィルムから爆弾装置の箇所が判明された。
早速、爆弾の仕掛けられた位置の床を焼き切るために109号と並行して別の新幹線を走らせ、酸素ボンベと溶接器を運び入れ、見事、爆弾除去に成功したのであった。
一方、沖田は羽田国際空港で張り込む刑事たちの目を逃れて搭乗しようとしたが、刑事たちが連れて来ていた息子の賢一が沖田に声をかけたために見破られてしまった。
沖田は必死に逃走するが、追って来た刑事たちに空港近くで射殺された。
コメント:
「新幹線が走行速度80km/hを下回ると爆発する」という状況下で繰り広げられる、犯人と国家との攻防劇。
新幹線に爆弾を仕掛けた犯人、危機の回避に全力を尽くす国鉄サイド、わずかな糸口を頼りにその正体を追いかけ、徐々に犯人グループを追い詰めていく警察、パニックを起こす乗客の姿で主に構成されている。
犯人側の人生背景にも大きくスポットが当てられており、町の零細工場の経営に失敗した男・過激派くずれ・集団就職で都会に来た沖縄出身の青年の3人がなぜ犯行に至ったのか、日本の高度経済成長時代への批判を暗示しつつ明らかにされていく。
犯人側にもドラマを与え感情移入を狙った演出も相まって、単なるパニックムービーとして括れないことが高評価に繋がっている。
1974年5月、岡田茂東映社長は、「仁義なき戦い」「山口組」などの実録路線に替わる新たな(映画の)素材を探し始めた。
アメリカでヒットしているものは日本でもウケる。
「大地震」や「タワーリング・インフェルノ」みたいなパニック映画をやってみろと、社長命令を出した。
その一環として製作されたのが、この作品。
海外版では、千葉真一のほうが高倉健より海外では知名度が高かったため、主演の表記をサニー千葉(千葉真一)に変更。
日本のスターが集結した超大作というよりも、アクションスターである千葉主演のパニック映画として封切りされていった。
タイトルは、英語圏では『The Bullet Train 』にて115分、フランスでは『Super Express 109 』もしくは『Crisis Express 109 』にて100分でそれぞれ公開された。
海外版では犯人側のドラマをカットしたおかげでテンポがとてもよくなり、次々襲いかかる危機と息をつかせぬ展開となった]。