「男はつらいよ 寅次郎子守唄」
1974年12月28日公開。
マドンナは、十朱幸代。
男はつらいよシリーズ第14作。
観客動員:226万7000人。
配給収入:11億円。
脚本:山田洋次・朝間義隆
監督:山田洋次
出演者:
渥美清、倍賞千恵子、前田吟、春川ますみ、月亭八方、上條恒彦、太宰久雄、佐藤蛾次郎、三崎千恵子、下條正巳、笠智衆、十朱幸代
あらすじ:
秋も深まったある日、フーテンの寅こと車寅次郎は九州は唐津のおくんち祭りで稼いだ後、呼子港の木賃宿で風采のあがらない赤ん坊連れの男と偶然泊り合わせた。
何か訳のありそうなこの男に同情した寅は、酒をおごって元気づけてやった。
だが、翌朝、寅が目を覚ますと「この子をよろしくお願いします」という置き手紙を残して、男は消えていた。
驚いた寅は、乳飲み児を抱えて右往左往。
弱りぬいた寅は、苦心惨たんして、妹のさくらやおいちゃん、おばちゃんのいる葛飾・柴又の“とらや”へ辿りついた。
ところが、裏の工場の社長は、寅が子供をつくったと大騒ぎをするし、さくらは赤ん坊のおしめやミルクを用意するのに大忙し。
やがて長旅の疲れから赤ん坊が熱を出したので、さくら夫婦は、博が工場で怪我をした時世話になった親切な看護婦のいる病院へ連れていった。
その看護婦は京子(十朱幸代)といって、暖い笑顔が印象的な独身女性。
翌日、寅が赤ん坊を見舞いに訪ねた時に、京子を見た途端一目惚れしてしまい、以来、赤ん坊の病気にかこつけては、病院通いするようになった。
そんなある日、赤ん坊の父親と、彼と親しい踊子が赤ん坊を引き取りに来た。
男は、赤ん坊の母親に逃げられ途方にくれている時に寅さんと会い、甘えついでについ赤ん坊を押しつけてしまった、と涙ながらに詫びるのだった。
さて、赤ん坊がいなくなると、おいちゃんもおばちゃんも、あの児が寅の本当の子供だったら、などと溜息まじりに思うのだった。
この事件をキッカケに、京子は“とらや”に時々立ち寄ることになり、寅の京子に対する想いは募るばかり。
ある日、京子は彼女が参加している地域青年のコーラス・グループの練習にさくらを誘い、寅と源公(佐藤蛾次郎)も同行した。
ところが、寅と源公が悪戯したために、練習はメチャクチャ、リーダーの大川弥太郎(上條恒彦)はカンカンに怒った。
詫びを入れるために寅は弥太郎の下宿を訪ねる。
すると、二人は酒を呑みながらすぐ意気投合。
そして弥太郎が寅に、京子に対する恋心を打ち明けると、寅は色々アドバイスをしてやる。
酔っ払ったその足で、寅は弥太郎を“とらや”へ連れて来ると、丁度京子が遊びに来ていた。
弥太郎はその場で、飾りたてない自分の真心を京子に告白した。
翌日、晴々とした笑顔で、京子との婚約を報告しに来た弥太郎を送り出すと、寅は冬空の下、寂しく旅立って行くのだった。
やがて正月。
呼子の港に立ち寄った寅は、あの時の赤ん坊が元気そうに暮しているのを見て、幸せな気分につつまれるのだった。
コメント:
第14作となったこの作品。
前半部分がコメディーリリーフ(今回は日本のシリーズものに定番の赤ちゃんもの)、後半がマドンナ関係の話。
マドンナとの関係はいかの3つに分類される:
①「良いひと扱い」で相手にされず、恋敵にさらわれる。
②マドンナに惚れられるも、寅さんがしり込みして進展せず。
③なぜか恋敵に肩入れしてキューピット役になる。
今回は③で、このパターンが寅さんの顔も立って、一番さわやか。
というわけで新鮮味はないものの、満足感のある仕上りになっている。
落語と同じで、枕があってそれを動機に本編が始まるという構成。
まくらは捨て子の部分で約40分それをきっかけに始まる恋物語が本編。
結局は寅さんの恋は実らず、恋の橋渡しをすることになるのだが。
マンネリのストーリー展開ではあるが、スムーズに物語が進み、よくまとまっている。
やはり寅さんの話芸に負うところが大きい。
おいちゃんが、今作から下絛正巳になった。三代目。
十朱幸代が良い。
やはり、テレビドラマの第一人者だけあって、画面に登場すると一気に皆の共感を得る。
下町ものには欠かせない女優だ。