「網走番外地 決斗零下30度」
1967年4月20日公開。
網走番外地シリーズ第8作。
監督・脚本:石井輝男
出演者:
高倉健、嵐寛寿郎、田中邦衛、吉野比弓、丹波哲郎、大原麗子、沢彰謙、黒沢妙子、三原葉子、吉田輝雄、田崎潤、阿部徹
あらすじ:
網走刑務所で五年の刑を終え、行くあてもない一人旅をしていた橘(高倉健)は、汽車の中でノサップのサガレン炭鉱にいる父を訪ねて行くという少女チエ(吉野比弓)に会った。
交通機関といえば馬そりしかないサガレンの炭鉱街で、橘は強欲な万屋の主人英造(沢彰謙)から二十万円の労働保証で馬を借り、無事チエを父親大槻(田中邦衛)の所に連れて行ってやった。
ところが血も涙もない坑夫長の蝮(田崎潤)は大槻を鉱山の中に入れ、父娘の間を裂こうとした。
怒った橘は蝮を殴り倒し、大槻の代りに彼が鉱山に入った。
鉱山はまさに生き地獄だった。
サガレン炭鉱をタコ部屋同然にして、支配人・関野(阿部徹)は悪どく儲けていた。
橘にやられた蝮は橘が万屋から借りた馬を殺し、その上、関野一味と組んで橘を半殺しの目にあわせた。
そして、あわやという危機を救ってくれたのはクラブ“コタン”のマネジャー白木(丹波哲郎)だった。
九死に一生を得た橘はこの後、約束通り万屋の下働きとして働かねばならなかった。
そうしたある日、関野の所に用心棒の吉岡(吉田輝雄)と共に西条弓子がやって来て、炭鉱の権利書を奪って逃げ去った。
それというのもこの炭鉱は、もと西条家の持ち鉱山で、関野が借金のかたに乗っ取ったものだった。
弓子と吉岡が、後から追いかけてきた関野一味に捕りそうになった時、ちょうど橘を探してノサップまでやって来ていた鬼寅(嵐寛寿郎)が二人の危機を救った。
だが権利書を奪われ、半狂乱になった関野は今度は損害保険金を目あてに、逡巡する白木を脅して落盤事故に見せかけた坑道爆破を強行し、その結果、大槻ら坑員は全員死亡した。
ことの重大さに初めて我をとり戻した白木は、橘にすべてを告白し、一人で関野を追ったのだが、逆に殺されてしまった。
一足遅れて現場に到着した橘、鬼寅、吉岡らの網走帰りに囲まれては、さすがの関野にも、もうなす術はなかった。
コメント:
健さんが雪をバックに騎馬戦を繰り広げるだけで絵になる。
何の前触れもなく現れる鬼虎役の嵐寛寿郎や、同じく常連の由利徹、大原麗子、三原葉子、国景子らが安定の演技を見せている。
ワルに利用された丹波哲郎も最後は味方に廻り、見せ場を作る。
連続登板の吉田輝雄は殺されそうになるが、最後に健さん、アラカンと共にワルどもを相手に騎馬で大銃撃戦を展開する!
このラストは胸がすく。
石井輝男が脚本化し、監督した“網走番外地”シリーズの第8作。
石井監督が北海道の大自然をアメリカの西部にイメージして西部劇タッチで本シリーズを作ったことは有名。
本作は、冬の大雪原を舞台に、西部劇に色が一段と濃く出た作品となっている。
雪の中を馬にまたがっての追跡や抗争のシーンなど、今ではこれだけの雪上活劇はなかなか撮ることはできないだろう。
石井輝男の意欲作だ。