映画監督「市川崑」 初の時代劇映画『雪之丞変化』のレビュー! | 人生・嵐も晴れもあり!

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市川崑監督の主要作品のレビューです。

 

今回は、1963年に公開された、市川監督初の時代劇映画 雪之丞変化』です。


 

 

『雪之丞変化』(1963)


雪之丞変化 予告編 (市川崑監督)


 


1963年1月13日公開。 

 

市川監督初の時代劇。

長谷川一夫の300本記念映画。

昭和十年朝日新聞連載三上於菟吉の同名の原作。

 

長崎の大店の主人の子・雪太郎は、父親はじめ家族一同を、あらぬ抜け荷の濡れ衣を着せられ破滅させられる。

孤児となった雪太郎は場末役者の中村菊之丞に拾われ、やがて女形の看板役者・中村雪之丞となって江戸に現れる。

だが、そのもう一つの顔は親の敵を討つべく剣術を磨きあげた復讐の鬼だった。

狙うは今や我が世の春を謳う元長崎奉行・土部三斎とその一味。

義賊・闇太郎の助けをうけて、「長崎の敵を江戸で討つ」波乱万丈の物語が繰り広げられる。

 

製作: 大映

 

脚本:和田夏十

 

監督: 市川崑

 




 

 

 

演者:

 

長谷川一夫、 山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二、八代目市川中車、 林成年、二代目中村鴈治郎、柳永二郎

 

語り: 徳川夢声 

 



 

 

あらすじ


ここは市村座の舞台に舞う上方歌舞伎の花形女形、中村雪之丞は、思いがけなくも冤罪で父を陥れた、もと長崎奉行、土部三斎一味の姿をみた。

 

江戸下りの初舞台に早くも怨み重る仇に巡り会おうとは。

 

師の菊之丞は、逸る雪之丞を抑え訓すのだった。

 

その夜の帰途、雪之丞は一人の刺客に襲われた。

 

かつての剣のライバル門倉平馬だった。

 

その場は忽然と現われた侠盗闇太郎に救われた。

 

さて、三斎の娘浪路は、先日の観劇以来、雪之丞のあで姿に側室の身を忘れ恋患の床についた。

 

これを知った川口屋は、大奥を動かすには浪路の機嫌をと、一計を案じた。

 


 

それを聞いた雪之丞は好機とばかり浪路に近づくが、地位も名誉も捨ててひたすら己にすがる浪路をみて胸を痛めるのだった。

 

そこへ相棒のムク犬を見張りに、女賊のお初が三斎の屋敷に忍びこんできた。

 

だが、雪之丞に発見され追い返されてしまった。

 

胸のおさまらぬお初は、雪之丞の部屋に忍びこみ、そこで雪之丞の秘密を知ってしまった。

 

一方、川口屋は江戸の飢饉に乗じて、江戸中の米を買いしめていた。

 

雪之丞は川口屋の相棒広海屋をそそのかし、広海屋の米を投売に江戸に出させた。

 

そのために川口屋は破産し、広海屋に火をつけた。

 

慌てた広海屋は川口屋を絞め殺し、三斎の力をかりるため、浪路を誘拐した。

 

だが広海屋は浪路に刺され、浪路は島抜け法師によって闇太郎の隠家に連れ込まれた。

 

闇太郎の知せで雪之丞が駆けつけた時はおそく、浪路は死んでいた。

 

雪之丞は、三斎との対決に彼の屋敷へ乗り込んだが、三斎はもはやこれまでと自から毒を呷った。

 

長崎一の海産商、松浦屋清左衛門に無実の罪を押しつけて、謀殺した時の長崎奉行・土部三斎と、広海屋、それに松浦屋の番頭であった川口屋は、松浦清左衛門の遺児雪之丞によってことごとく裁かれた。

 

江戸最後の舞台をつとめる雪之丞の美しい顔には、一抹の淋しい表情が現われていた。

 




 

評論家コメント:

 

舞台調の映画だが、光を当てる部分、周りを暗くしてフォーカスする、襖で区切る等でメリハリをつけ、その映像美とともにあきさせない。
 

 

だから歌舞伎出身の長谷川一夫の意向が結構反映したのだろうか。

 

長谷川一夫の記念映画に時代劇が”初”という監督を起用するところがおもしろい。

 

長谷川氏若かりし頃の作品のリメイクだから冒険したのか。

ドラマ化されたり、何度か映画化されたりした作品。二役も慣例。

男優の手堅い演技はさることながら、貞淑な人妻のイメージがあった若尾文子の色っぽさ、山本富士子のあだっぽさが光る。


見た目はびっくりだが、雪之丞の所作の美しさ。

 

そしてその葛藤に心をひき裂かれながらも、ある部分バッサリなところに、性根は”男”が垣間見られる。その芸の細やかさが面白い。

ある意味、日本映画と舞台の融合。

 

シネマスコープの持ち味を存分に使いながらも、断捨離、一部分だけをフォーカスして使う斬新さ。その映し出された一部分だけで、場面を語れる役者の演技。

 

じめじめした復讐譚をカラッと乾燥させたモダンの美に変えている。

 

後の東宝での横溝正史シリーズを予感させるような市川崑の映像テクニックが秀逸。





 

時代劇映画に新風を吹き込んだ市川崑の「雪之丞変化」。

 

初の時代劇映画は、その後木枯し紋次郎などの新しい時代を切り開くきっかけとなりました。