北大路欣也は、かつての東映時代劇のスター・市川右太衛門を父に持つ映画界のサラブレッドです。
しかし、この人にとっての飛躍台となったのは、「仁義なき戦い」でした。
これまでの人生をたどります。
北大路 欣也(きたおおじ きんや、1943年2月23生まれ) 現在77歳。京都府京都市出身。身長174cm、血液型A型。
芸名の由来は父、右太衛門の邸宅が京都市内の北大路に在ったことから、右太衛門が「北大路の御大」と呼ばれていたため。
同世代の俳優仲間からは「きんやちゃん」と呼ばれています。
早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。
映画俳優・市川右太衛門の次男として生誕。1956年(昭和31年)、映画『父子鷹』で勝海舟の少年時代役を演じ、右太衛門に付き添われてデビューを果たします。
このデビュー作は、小学校6年生の時に撮影され、中学1年生の時に封切られたものだといいます。
同じ東映の二世スターで同級生の松方弘樹(近衛十四郎の長男)とライバル視されました。
ライバルの松方は「東映城の暴れん坊」と売り出されたのに対し、北大路は「東映城のプリンス」と売り出されました。
右太衛門は東映の役員も兼務していたことから、御曹司として右太衛門の庇護のもと順調にキャリアを重ねていきます。
1958年(昭和33年)に映画『少年三国志』で15歳にして映画初主演を果たしました。
1963年(昭和38年)には映画『海軍』で千葉真一の配役と入れ換えを求め、現代劇初主演を果たしました。
大学卒業後、1964年(昭和39年)に『シラノ・ド・ベルジュラック』で舞台デビュー、その後は劇団四季にたびたび客員参加しました。
1968年(昭和43年)、25歳で大河ドラマ『竜馬がゆく』で主演。
その後も大河ドラマには、『独眼竜政宗』や『北条時宗』など多数出演します。
1973年(昭和48年)、映画『仁義なき戦い』第1作を仕事先で観て共鳴した北大路は、シリーズ化されることを聞きつけ東映に自ら志願して、第二部『仁義なき戦い 広島死闘篇』に出演しました。
1974年(昭和49年)には『仁義なき戦いシリーズ』の最終作『仁義なき戦い 完結篇』に再出演しました。
『仁義なき戦い』シリーズには2作品出演していますが、『仁義なき戦い 広島死闘篇』では物語の主人公・山中正治を演じています。
しかし、配役はもともと千葉真一が山中正治、北大路が大友勝利の予定でクランクインするはずだったのですが、北大路が
「山中の方が自分のキャラクターに合っているのでは? それにセリフがどぎつすぎる大友はできない」、
「大友は粗暴で下品すぎて、どうしても自分では演じられない。山中のほうをやらせてくれないか」と配役の交代を要求。
そのためプロデューサーの日下部五朗と宣伝担当者らは千葉を突然訪ね、「山中と大友を交代してもらえないか」と依頼しました。
監督の深作欣二は交代には反対しておらず、千葉も交代を了承したというエピソードがあるようです。
1977年(昭和52年)、高倉健とともに映画『八甲田山』に主演。1977年の日本映画第1位を記録し、高倉と北大路は第1回日本アカデミー賞主演男優賞を受賞しました(高倉は最優秀主演男優賞)。
劇中での北大路演じる神田大尉の台詞「天は我々を見放した」は当時の流行語になりました。
1984年(昭和59年)には映画『空海』の役作りのために、高野山真言宗の僧侶として得度出家をし、四度加行を行い、不動護摩法の資格を取得しました。
テレビ時代劇・舞台を中心に活躍し『忠臣蔵』の大石内蔵助はこれまでに三度演じています。
『ご存知!旗本退屈男』、『子連れ狼』、『名奉行! 大岡越前』など時代劇の代表作が多いのが特徴です。
近年では現代劇にも積極的に出演しており、『さすらい署長』シリーズなどのほか、2007年(平成19年)1月 - 3月放送の『華麗なる一族』で万俵大介役を演じています。
2010年(平成22年)の『絶対零度〜未解決事件特命捜査〜』では35年振りにフジテレビ制作の現代劇連続ドラマの出演をしました。
2014年(平成26年)1月 - 3月放送の『三匹のおっさん』では、1979年の『男なら!』以来35年ぶりの現代劇の連続ドラマでの主演。
2007年(平成19年)、自身の個人事務所からホリプロに移籍。
同年4月には、長年の功績が認められ紫綬褒章を受章しました。
同年6月からソフトバンクモバイルのの『白戸家』シリーズCMでお父さん犬・カイ君の声を演じ、現在も継続中。
カイ君特集動画はこちら:
配役は同社ニュースリリースにて公表されていましたが、キャラクターゆえに出演するという意外性が注目されました。
また、2008年(平成20年)に映画『HACHI 約束の犬』にて、主人公の大学教授(リチャード・ギア)の日本語吹き替えを担当しました。
2007年10月31日に、早稲田大学創立125年を記念して「北大路欣也トークショー」が大隈講堂で行われました。
2012年(平成24年)からはテレビ時代劇『剣客商売』の主演を藤田まことから引き継ぎました。
2015年(平成27年)11月、秋の勲章で旭日小綬章を受章した。
このように、順風満帆の役者人生を歩んでいる北大路欣也ですが、やはり飛躍のきっかけとなったのは、あの「仁義なき戦い」に自ら志願して出演したことでしょう。
その中での彼の迫真の演技は、多くの観客たちを夢中にさせるものがありました。
その後、北大路欣也が数々の記念すべき映画に出演し、多くの栄えある映画賞を受賞した演技力を蓄えたのも、「仁義なき戦い」の撮影現場であったと思われます。
今後のさらなる活躍を祈ります!