早稲田ラグビー部100周年の折りにメモリアルイヤーの優勝を託された指導者が山下大悟さんだった。
三年目には、しかしその姿は無かった。
大学選手権は準々決勝、三回戦と敗退しており、優勝しなければ無意味とまで言われる早稲田においては決して認められる成績ではなかったか。はたまた真偽はさておき、スキャンダルな話も聞こえていた。
そんなことから指導者としての名声は芳しくなかったけれども、早稲田が2019年に優勝できたのは山下さんのおかげだと思っている。
それはなぜかといえば、そのリクルートにおいて非常に尽力し、見事にそのお眼鏡にかなった選手たちが活躍したからだ。

2023年のラグビー日本代表のメンバーで大学出身別をみると、ダントツに多いのは帝京だが、それに肉薄するのは早稲田である。
早稲田が2019年に優勝したメンバーが3人も入っている。
これはなかなかの割合ではないかと思う。
毎年リクルートで他校を圧倒する明治に至っては1人。しかもほぼ出場機会はなかった。

この早稲田の柱となるメンバーを集めた山下さんは流石だなと思わざるを得ない。様々なメディアのインタビューで語っていたのだが、とにかくスカウトが大事なんだということを強調していた。
この素質を見極めて、本当に実力のある選手を呼び込む。当たり前過ぎることではあるが、この当たり前を実行したからこそ2019年の優勝があった。
もちろん相良南海夫監督の指導力も素晴らしかった。この点も強調すべきだろう。しかし、このリクルートを引き継いでいなかったら優勝できたかどうか、議論の余地はある。
良い指導者と才能のある選手。さらにはウィニングカルチャー。常にこの組み合わせがあって成果を導く。

そしてなぜ今になってこの話をしたのかといえば、やはり日本代表が世界に伍して戦うにはリクルートが大事であり、それには海外の才能ある若者が早い時期から日本に留学してもらって、日本の文化に馴染んでもらって、日本代表になってもらう。このルートをより強化しなければならない。
それには、当たり前であるが受け皿となる学校がなければならない。

あえて留学生に否定的な早稲田を引き合いに出したのは皮肉も込めているのであるが、伝統校と呼ばれる早稲田や明治はいちはやく門戸をひろげてほしいと願っている。
いまの時代に留学生がいない大学はないのに、ブカツドウだけは誰ひとりとしていない。あきらかに不自然で、今の時代にも続く封建制度といわざるをえない。