2度目の三連覇を達成して、大学ラグビー史に不動の金字塔を打ち立てた帝京。
優勝回数で一位、二位の早稲田と明治が過去最高で二連覇であることを考えるといかに帝京の存在が特異であるか分かる。
そもそも先に三連覇を達成した同志社も決勝戦で対戦した慶応の逆転トライがスローフォワードで取り消されるという曰くつくのエピソードがあり、三連覇というのがいかに困難かつ運にも左右されるものであるか分かる。

その連覇記録を立て続けに達成できた背景には、恵まれた環境もあるけれどもやはり指導者である岩出顧問(元監督だけど今も事実上帯同している)を抜きには絶対に語れないだろう。
岩出さんは指導者としての能力はどこにあるのだろうかと考えたときに、あくまでも個人的な推察になるが、“新しい価値に早く気がつく能力”と思っている。なにが大切なのか本質をつかむのに長けているとも言えるかもしれない。

おもえば今でこそ大学ラグビーの常識になった栄養士の存在であったり科学的アプローチによるフィジカルの強化、そして脱体育会系によるウィニングカルチャーの確立などは岩出さんが始めたことだ。
それが完全にオリジナルかというとそうではない。栄養士はそもそも駅伝で名を馳せた東洋大学でつとめられていた女性を招聘したものだったし、現在は医学部との連携で様々なサポートを受けているけれども、はじまりは献血との引き替えに血中データを受け取るということから始まっている。
こうしたことは、先人がいたりスタッフの助言がきかっかけだった。
ただ、大切なのはその価値に気がつくこと。それも早くである。
だからこそ大学ラグビーにおいてはどこよりも早く導入され、そしてそのアドバンテージにより他校に追いつき、追い越して今に至る。常日頃から新しい価値をみつけて導入し、それが時に失敗の時もあるだろうけれども総じて進化に寄与してきた。そして他校は帝京から学び、模倣して大学ラグビーの底上げに至った。
なかなか目の前に見えているものでも、それが本当に価値があるかどうかというのを見極めるのは難しい。
しかしヒントはこの世界に沢山ある。
ノーベル賞受賞者でも多くの人が失敗を契機に発見することが多いのだが、それは失敗から本質を見極められる能力に優れていたからだろう。そうした観察眼があってこそ世紀の発見があり、進化がある。
岩出さんが研究者ならきっと大きな発見があっただろうし、経営者なら会社をおおきくしていたのではないかと思う。

このような指導者は帝京に限らず、大学ラグビー全体で見られることを祈っている。それが大学ラグビーの進化をもたらし、しいては日本代表の強化につながるからだ。