大学選手権の決勝戦は、異例づくめの大会となった。
試合開始前から天候が崩れ始め、試合途中からみぞれ。そして、後半は大雪。かつての雪の早明戦が伝説の試合として語り継がれているが、まさかこの両校にとってメモリアルな試合でこのような天候になるとは思ってもみなかった。
そういえば準決勝も元旦に石川県の地震で試合が危ぶまれたし、1時間もの中断は大学選手権で初めてではないかと思う。
そんな試合を振り返ると、早い時間帯で最初に得点を取ったのは帝京だった。帝京らしい判断の光るパス回しで、帝京の圧勝も予測させる幸先良い出足となった。
ただ、ここで簡単にやられる明治ではなかった。ねばり強いディフェンスで帝京の攻撃をくい止める。帝京もチャンスを作るも得点に結びつかない。
前半20分で雷鳴が轟き、一時中断が宣告され、結局のところ1時間近くも中断することになった。元々遅い時間帯の試合開始から中断も挟むことで試合を再開したのは16:40。それと今回の試合はTMOが導入されたが、帝京が何度も泣かされることなる。中断開始直後に尹がトライを取ったと思われたが、ノートライ。結果的に明治のペナルティーがあったのでタッチキックでマイボールラインアウトからモールを組んで江良がトライをあげる。
ここで帝京に余裕ができたせいか分からないが、前半の終了間際に明治の底力が発揮される。
ゴール間際まで運び込むと両端まで広くボールを動かし、帝京からトライを奪取する。この巧みさはさすがだと感じた。
さらに続いて帝京に攻め込まれた明治が、後ろの空いているスペースにボールを蹴り込み、背走した山口が拾おうとしてノッコン。天を仰ぐ。スクラムから素早い球出しでバックスが走り込み明治のトライ。帝京は後半の5分内に2トライも献上することになった。得点差はほぼイーブン。
流れは明治に大きく傾いているように感じさせた。心理的には勝ってても負けてる気分に近かった。
後半はみぞれから次第に雪へと変わり、帝京はハンドリングエラーを繰り返すことになる。その結果、自分たちが獲得したチャンスを安易に相手に移すことが繰り返された。明治もハンドリングエラーがないわけではなかったが、圧倒的に帝京のほうが多かった。そのあたりで基本プレーに関しては明治のほうが上手に感じた。すぐに追い越されてしまうのではないかという不安に落ち着かなくなる。
選手もそのあたりを感じていたのか、ペナルティーを得てもタッチキックを選択せずにペナルティーキックを選択。こんな帝京は久しぶりにみた気がする。それだけに明治のディフェンスは脅威だった。
ペナルティーキックは成功させて、とりあえずは一息つくだけの点差はリードするが油断はできなかった。
天候はますます悪化の一途をたどり、帝京らしくないハンドリングエラーは天候の悪化と比例して目立つことになった。
スクラムも帝京が優位であったが、圧倒するまでには至らず、もどかしい時間を過ごすことになる。
動いたのは後半20分。戒田のトライが帝京の勝利をグッと引き寄せる。
その後、明治がペナルティーキックを成功させて2トライ2ゴールで逆転される点差についてこられるが、ふたたび大きく引き離すチャンスが到来する。
25分にマイボールラインアウトからモールを組んで、トライ!
この時間帯の17点差はほぼ勝利を確信させる点差である…と思った矢先、ふたたびTMOでオブストラクションを取られて無効。今回は本当にTMOが憎かった。
32分に李が怪我で涙の退場。今までほぼ怪我と無縁だっただけに、今回の試合がいかに激しい試合であるか実感させられた。
そしてこの時間から帝京のスクラムは明治を圧倒する。後半36分にはスクラムからペナルティーを獲得して、ラインアウトからモール。最後はキャプテンの江良がトライを決める。スクラムが勝敗を分けるという予想通りの結果になった。
勝利をほぼ確実視された時間帯になると、怪我で退場した江良が片膝をついて涙をたたえる。2021年度に優勝した細木キャプテンを思い出した。
思えば江良の世代は入学と同時にコロナ渦の影響をいちばん受けた不遇の世代であり、その彼らが今回も大雪の中で試合をするなど誰が予想しただろうか。試練を被る宿命を背負っていたのかもしれない。
しかし、そうした逆境を見事に跳ね返して大学ラグビー史に残る金字塔を立てたことは本当に誇らしく、素晴らしい偉業である。
心の底からみんなにありがとうと言いたい。そして、これからの活躍を非常に楽しみにしている。このチームメンバーからは沢山の日本代表が生まれるだろう。そして日の丸を背負うにふさわしい選手たちだと確信している。
今回の優勝は、試合に出た選手もサポートに回った選手もみんなが一丸となって達成した偉業だ。この喜びをみんなで分かち合ってほしい。
おめでとう、帝京ラグビー部!