明治対京産戦は、僅差の試合になると思われる好カードだった。
とくにスクラムで勝敗を分けてきた両チームにとって、京産がやや有利かと思われていただけに、明治がかなり苦戦するのではないかと下馬評では予想されていた。
蓋を明けてみれば明治が圧倒する試合になった。ただ終始一方的だったわけではなく明治がトライを取れば京産が取り返すなど前半はシーソーゲームになったが、徐々に明治がリードし始めると力差は明確になってくる。特に象徴的だったのが前半最後の明治がトライを取ったシーンだ。
限られたチャンスを意図通りに取り切ったことで、明治の底力をみせつけた。そして明治の勝利を確信させる場面でもあった。
明治の勝因はどこにあったのかと考えると、やはり個人技が優れていたことだろう。一人ひとりの能力は非常に高く、しかも個人技に終わらず組織的なプレーをしっかり遂行している。なおかつサインプレーも多彩。
個人技と組織的プレーの両方が京産の迷いを引き寄せて、さらに差を広げることに成功した。
京産は最後まで諦めることなく勝利を信じてプレーし続けたし、期待された選手は期待以上のプレーで魅了した。とくにキャプテンは誰よりも体を張り続けた。しかし明治はそれを上回る試合巧者で、主導権の握り方を熟知していた。
この結果を受け止めると、東高西低は本質的に解消されておらず、頂上決戦になるとその差は明らかだった。京産にとって10回目の挑戦は跳ね返され、明治は100年の沽券を守りきった。
一方で帝京対天理は、タイトな試合となった。
前半の出足は帝京が優位性をしっかり見せて、テンポ良いパス回しで相手陣内に進むと、しばらくは天理のねばり強いディフェンスに苦しめられるが、高本の強いフィジカルで押しのけて最初のトライ。
次はハイパントを小村がキャッチすると高本にパスが回り、またしてもグランドの隅にトライ。帝京は自分たちの流れに持っていければ瞬く間にトライを奪うポテンシャルがあるが、逆にその流れが途絶えると停滞を招く。その間に天理はパワーと早さを兼ね備えた展開で帝京のディフェンスを翻弄し、帝京と並ぶトライを奪った。
前半は天理の勢いのまま終わり、とくに帝京のペナルティーが多いのが少し気になった。
後半最初にトライをとったのは帝京。勢いのある展開で天理の裏をかいくぐり、ふたたび高本にパスを回してトライ。
再度、帝京のチャンスがやってくるが、それを潰したのがヴァカタ選手だった。この選手はかならず日本代表に選ばれるだろうと確信させる強さがある。
その後、パスを受けた青木がトライをしたが、その前にタッチがあったとされた。しかし明らかにジャッジミス。勝敗を大きく引き寄せる貴重なトライだっただけに、あれには心底文句を言いたくなる。
その後、帝京が相手陣内でなんどもスクラムでペナルティーを取るが最後は帝京がペナルティーを犯してしまい、トライに繋がらず。
両チームとも最後までゴールを割らさず、プライドのぶつかり合いで死闘になったが帝京が最後にリードを守って勝利した。非常にヒリヒリした勝利だった。
最後は安堵したが、好調な明治とは対照的だったので不安を残す勝利となった。
これで最後のカードは、帝京対明治となった。
明治との対戦は、対抗戦で帝京の勝利に終わっているが、それはあくまでも過去の出来事であり、次の勝利を約束してくれるものではない。しかも明治は対抗戦の時に不在だった廣瀬キャプテンが戻ってきている。別物のチームと思うべきだろう。天理戦より厳しい試合になることは間違いない。
早稲田も明治も成し遂げられなかった三連覇を二度も達成することの困難さを改めて思い知る。
この歴史的な偉業を達成するために、最高の準備と最強のメンタルで決勝戦に臨んでもらいたいと願っている。