トーマスエジソンといえば発明王と知られているが、それらはすべて個人で成し遂げたものではなく、集団マネジメントで達成されたものばかりだった。

このような体制のことをエジソンは集団天才と呼んでいた。どんな天才でも自分一人だけで成し遂げることは不可能だからだ。


研究から開発、事業化、そして産業化へと至る過程においても必ず多くの人たちのバトンタッチを経て成し遂げられている。

こうした過程のことを、魔の川、死の谷、ダーウィンの海と呼ばれているが、たとえば最近だと有名なのがPCR検査である。

もともとキャリー・マリスという人物がデートの帰り道にひらめいたアイデアだった。当初はそのマリスとともに商品化に向けて動きだすが、途中からマリスは事実上のクビを言い渡される。性格的に問題があって、商品化にむけてはむしろ足手まといな人だったらしい。

またPCRはもともとDNAサンプルを作り出す増幅装置なのだが、それを検査用に転換するアイデアを持つ人がいて、その人たちの工夫によって今のPCR検査が存在する。つまり何人ものアイデアの集積により、はじめて現在のPCR検査の恩恵をうけられるようになった。

これはラグビーにおいても同じことで、選手がいて、コーチがいて、スタッフがいて、監督がいて、それぞれの人が与えられた役割をまっとうして、初めて成果が生まれる。



アイザックニュートンの有名なフレーズに、


私がかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです。


という言葉がある。

岩出監督にしても、一からすべてを個人で作り上げたのではなく、それまで作り上げてきた人たちの上に立って、多くのスタッフとの協力のもとで今の帝京を築かれた。

天才と呼ばれる人でも多くの人たちの協力、繋がりがなくては大きな仕事は達成できない。


次の監督として就任される相馬さんも是非とも、巨人の肩の上に立ちながら、おおくの人との繋がりのもとで相乗効果を発揮して新しい帝京を生み出してもらいたいと願っている。