先がみえていない時は一喜一憂したりすることが多いのだが、シーズンを終えて余熱を味わいつつも気持ちが落ち着いてくると、冷静に振り返ることができる。
2021年度は改めて帝京の強さを感じさせてくれる年となった。

帝京に限らず、ドラマを演じたチームはほかにも沢山あった。
明治は対抗戦3位という立ち位置で、初戦が前回優勝の天理、次が対抗戦で負けた早稲田、さらに関東リーグの覇者東海、最後は帝京、と対抗戦3位が決まったときは頭を抱えたと思うが、よく険しい道のりをかきわけて決勝までたどり着けたものだと感心する。
京産大も厳しい見方をされていたが、前半は帝京を圧倒して関西リーグの評価を高めた。

さて、帝京が優勝して終わって来シーズン。
下級生が多く残る帝京が下馬評では優位であるが、はたして来年度も帝京が優勝できるだろうか?
帝京はかつて9連覇を達成してその名をとどろかせたが、帝京が9連覇を達成したときは“先行者利益”を享受していた側面が強く、当時は帝京とおなじアプローチをするチームはほぼ存在しなかった。
優勝してリクルートもうまくいくと、才能ある選手が沢山くるようになって盤石な体制のもとで連覇を達成する。
しかし相手も指をくわえてこまねいているわけではなく、生活の規律や科学的アプローチを模倣するようになる。
面白いのはどんな世界でも、後から模倣するほうが実は先駆者を追い越すことが多い。
次第に先行者利益が削られてくると、6連覇のときに圧勝したのを最後に段々と差は縮まっていき、やがて敗北する時をむかえる。

このように勝ち続けるというのは本当にむずかしくて、先駆者であること、人材がそろうこと、さらには運も味方につけないと達成できない。このあたりで帝京の9連覇は改めて奇跡の産物だなと思う。今後、この記録を塗り替えるのは容易ではないというか、生きているうちにみることはないだろう。

いまの帝京は人材がそろっている。では先駆者的立ち位置はどうだろうか?
他校を圧倒してるとは思えない。
やはりここで帝京が真のリーダーとなるべく新しいアイデア、新しい挑戦が求められる。それにはいろんな人たちの意見を吸収する姿勢が求められる。
血液検査による選手の体調管理は、スタッフの提言から取り入れたものだと岩出監督は話す。岩出監督の素晴らしさは、そうしたアイデアに対するアンテナが広かったことだ。これはエディーさんとも共通している。エディーさんも本当に新しいもの好きで、いろんなアプローチを取り込む人だった。
どんな人であれ、個人の考えやアイデアには限界がある。新しい指導者は、是非ともこうしたアンテナを広げて新しいアイデアを積極的に取り入れ、そのアイデアの善し悪しをきちんと見極められる人であることを願っている。