先日のゲームを振り返ると、両校とも規律あるプレーで非常に見応えのある試合だった。
とくにブレイクダウンの攻防は手に汗握るものがあり、お互いにこの試合に掛ける気持ちの強さが伝わってきた。
今回の試合で決定打になったのは言うまでもなくスクラム。最初から最後まで帝京と早稲田の力差を視覚化したシーンだった。この点に関してスポーツライターの斉藤さんが記事の中で、早稲田はなぜダイレクトフッキングをしなかったのか?と疑問を呈している。
たしかに弱者のやり方ではあるが、押される側にとっては常道手段である。
逃げることなく真っ向勝負で自分たちの現在地を測るためだったと早稲田を擁護する言葉が書かれてあったが、実際はそんな格好いいものではなく、勝負に拘ったというよりも「できなかった」というのが正直なところだろう。
かつて帝京も明治や天理に同じようにスクラムで苦しめられた時期があったが、やはり圧倒的な力差があると、どんなに足掻いても無理なものは無理である。

全体の流れをみると、前半、後半の中盤までは帝京がおおむねゲームを支配してて、誰もが帝京の勝利を疑わなかったが、終盤に差し掛かると早稲田の猛追を許す結果となった。
このあたりは帝京のフィットネスが早稲田に劣ってたのかもしれない。早稲田のバックスは特に最後まで走りきっていたのが印象的だった。
連携がしっかりしてるのもさることながら、個人技に優れ、特に河瀬選手は学生の中ではもっとも日本代表に近い選手だろうと思われる。体幹の強さ、視野の広さ、相手の動きを読む力、フットワークなど非凡さを伺わせた。

一方で帝京のバックスはというと、評価があまり芳しくないように思われるが、個人的にはとてもバランスの優れた選手が配置されていると感じる。
攻守に渡って安定感があり、とくに志和池は個人的に好みのプレースタイルを取る選手だ。突出した部分や華々しい部分で評価しがちだが、信用される選手というのは、こういう堅実な選手ではないかと思う。

フォワードに目を転じると、MOMを獲得した江良は言うまでもなく、やはり本橋。
歯が抜けてしまった状態にも関わらず80分間を通して奮闘しただけでなく、早稲田を駆逐する働きぶりはただ感心するばかりだった。フィットネスやパワーは学生の中で近年にないポテンシャルを備えており、いまだ一年生というのが恐ろしい。
今年のメンバーをみる限り、優勝争いは今後四年間は約束されたようなものだろう。

個々の選手について指摘していたらキリがないのでこれ以上は言及しないけど、とにかくみんなか体を張ってがんばってくれて、本当に素晴らしい試合だった。

次は、明治戦。対抗戦のみならず大学ラグビーおける頂上決戦とも呼べる試合になるだろう。春の結果は辛くも僅差で帝京が勝利できたが、過去の戦績が未来の勝利を保証するわけではない。
現在はクレバーなラグビーをする明治に翻弄されないためにも、コミュニケーションを綿密にとって、ゲームメイクを適切に行い、この難敵を是非とも撃破してもらいたいと思う。
明治に勝利すれば、おのずと大学選手権の優勝が視野に入ってくるだろう。

がんはれ、帝京ラグビー部!