やはり予想を覆す試合展開というのは楽しいもので、しかもそれが「事実上の決勝戦」と呼ばれる試合であれば、センセーショナルになる。
しかも日本からすると、前日本代表の監督(ヘッドコーチ)の偉業となれば、国内も盛り上がる。

エディーさんといえば、色々と変わった人で、最近だとイングランドのミーティング前に選手たちに腕立て伏せをさせるなど、常識とかけ離れた行動をさせることで知られているが、日本代表の時も石鹸につけたボールで練習させたり、格闘家にタックルを教わったり、それらがどれほど効果があったかどうか分からないが…。
ただ、こうした「変人」だからこそ、このような偉業を成し遂げたのかなと感じた。

このように表現すると批判されるかもしれないが、エディーさんはアップル創業者のスティーブジョブズと似たようものを感じさせる部分があって、ハードワーカーで妥協をゆるさず、目的の為ならときに他人を傷つけることも厭わない姿をみると、ADHDなのかな?と感じる。
スティーブジョブズは、やはりかなりクセのある人だったようで、専門家からは大人の発達障害だったのではないかと言われている。

それと面白いも思ったのは、日本にしてもイングランドにしても決して順風満帆ではなかったことだ。
日本代表の時もワールドカップ直前のパシフィックネーションズカップでは惨憺たる結果を残し、ファンたちをやきもきさせた。多くのファンがエディーさんをヘッドコーチに選んだのは失敗だったと決めつけ、今は賞賛しきりのラグビーライターたちもこぞって批判したものだった。
イングランドでも、エディーさんがロンドンの地下鉄に乗っているとラグビーファンたちに囲まれて暴言を吐かれたり、おそらく選手に殴られたであろう腫れた目をみせたり、一時期は負け続けの時もあってクビにされるのではないかという憶測記事も流されたが、そうした無数の試練を乗り越えて、見事ワールドカップで結果を残した。

こうした過程を見ると、いかに短絡的に結果を求めることが間違っているのかということを教えてくれている。
ファンが一喜一憂するのは仕方ないが、少なくともオピニオンリーダーとなりうるラグビーライターたちはもう少し長い目で見てもらいたいと感じる。
どんな名監督でも、一部ファンが神のように崇めるエディーさんでも常に結果を出し続けるのは困難なのだ。

それにしても、個人的にはニュージーランドが負けてくれたことで、内心ホッとしていた。というのも、やはり同じチームが永遠的に勝ち続けることはラグビー全体にとって決して好ましくないのではないかと思っていたからだ。
大学ラグビーで9連覇を達成したチームを賞賛していた人間が言うべき言葉ではないが、改めて逆の立場で見ると、ニュージーランドの連覇が阻まれたのはラグビー界にとって良かったことである。
そう考えると、帝京が9連覇で止まったのも潮時だったのかもしれない。
でも、帝京には再び9連覇(以上)を成し遂げてもらいたいとも思っている。それがファンとしての偽らざる心境だ。