「星の古記録」 斉藤国治 | くにたち蟄居日記

「星の古記録」 斉藤国治

 

 1982年刊行の本書が2026年に増刷され、評判となっていると聞いて早速読んだ。普段は特に星に興味が無い僕は、流行に流されやすい読者であると苦笑しつつも楽しく読了した。感想は三点である。

 

 一点目。これは全ての読者に共通する感想だと思うが、古代の人々が実に正確に星の記録を取っていたということに驚いた。日本のみならず、中国、韓国、欧州などでの話である。当時の星に対する考え方は、占いに結びついており、政治の点で重要度が高かったという背景はある。最終的に星で未来を占うという目的自体は非科学的であった訳だが、星を観測するという行為においては極めて科学的であったことが良く理解できた。目的が間違っていても、その目的を目指すということで物事が進むという好例なのだと思う。占星術から産まれてきた「科学」を調べてみると、天文学は当然として、数学(三角法)、暦学、医学、心理学などが挙げられるらしい。心理学についてはユングが占星術に強い興味を持っていたとのことである。

 

 二点目。その「記録を取る」という行為自体も、人類の進歩の大きな原動力となったと判断される。中国、中東、欧州は紀元前から文字に因る「記録」が始まっていた訳だが日本においても日本書紀や古事記が出来たのは7世紀という世界史的にみても早い段階だった。そこから万葉集、源氏物語等が派生してきたことを考えても、意義深い話である。

 

 三点目。本書の後半に描かれる明治時代の日蝕を巡る物語は、なかなか「読ませる」ものになっている。日蝕観測は当日の天気に大きく左右される点はやむを得ない。幸運を祈りながら日蝕観測の準備をする科学者たちのドラマは中々人間臭い話である。時として日の目を見ない無数の努力が今日の科学を支えてきた点を思い知らされた。

 

因みにAIに本書の魅力を尋ねたところ、「文系」の「歴史」と、「理系」の「天文学」を結び付けた点にあるとのことだ。なるほどと感心した次第である。