「今日の空が一番好き。とまだ言えない僕は」
河合優実がヒロインであり、主演である。彼女の演技は毎回感嘆してきている。本作においても
彼女の彼女でしか可能にならない特別の存在感はいかんなく発揮されている。にも拘わらず、
本作で最も印象に残ったのは彼女の妹であるさっちゃんを演じた伊東蒼であった。
本作は冒頭から「死」が語られることが多い。ヒロインの場合は父親の死であり、主人公は
祖母の死である。主人公は祖母の死の衝撃でしばらく大学に行けなかったという。ヒロインも
(そうとははっきり語られていないが)おそらくは父親の死もあり、高校時代に一年間引き
こもった様子だ。
そんな主人公とヒロインの心の傷が本作の主題として冒頭に提示され、それを基調として
本作は進み、傷心を抱えた二人が心を寄せ合っていく筋である。
かような展開の中でさっちゃんだけが生き生きとした存在感を放つ。銭湯での彼女のアルバ
イトとしての働きぶりの明るさは、曇天や夜も多い本作の中で際立つ。特に彼女が長セリフで
主人公に自分の思いを告げる場面は迫力に満ちる。夜間で彼女の顔をあまり見せないという
演出が彼女のセリフを強く立ち上げる。本作の白眉のシーンである。
そんなさっちゃんが事故死してしまう。彼女の死が登場人物と、それから僕ら観客に与える
衝撃度の凄まじさというものがある。ここに至って本作の主役は彼女なのではないかと僕は
思わされた。
残された二人が彼女の死をどのような克服していくのかは本作では語られない。河合優実は
自分を守る為に結っていたお団子の髪を切ったところを見ると、「外に出ていく」決意をした
ようだ。一方主人公はどうなのか。映画の題名の通り「まだ」なのだろうか。
