映画「北の果ての小さな村で」  | くにたち蟄居日記

映画「北の果ての小さな村で」 

 

住んでいる国立市の公開講座「多文化共生」に参加した。教材が本作であったということで

本作を鑑賞する機会を得た。自分で鑑賞する映画を決めてばかりいると限界がある。他者から

勧められる作品を観ることはかような限界を少し広げてくれるものだ。

 

 本作は基本的には「父と息子」の物語である。主人公は父親からデンマークで営んでいる農場

を継ぐことを強く期待されている。主人公は迷いながら、取り合えずグリーンランドに行って

短期的な教職に就くことにする。グリーンランドで教職の需要がある町はいくつかあったが、

主人公は一番過疎が進んだ場所を希望する。かような選択の背景には、主人公の強い好奇心も

あったろうが、父親との間のある種の確執もあったと僕は想像した。

 

 人口が80人しかいない赴任地は主人公にとっては過酷な社会であった。殆どがイヌイットである

住民の中にデンマーク人が溶け込むことは容易ではない。むしろ無視される存在であった。

 

 そんな主人公がイヌイット社会に溶け込むきっかけを得たのは猟師になることを宿命としている

一人の少年との交流を通じてである。祖父を亡くし、父親が不在である少年に対して主人公は

「父親」という役割を果たしている。そこに生まれてきた「父と息子」の物語が、住民たちの

心を「解凍」していく様子が本作の筋立てとなっている。

 

 本作は基本的にはノンフィクションであるという。若干のエピソードにはフィクションがあるものの、

本筋はドキュメンタリーといって良い。しかも本人達が本人を演じているという点は強い説得力

を産んでいる。本作を観ていて小川伸介のいくつかの作品も思い出した。かような迫力の中で

前記した「父と息子」の物語は若干薄味である気もしないでもない。但し、本作が描き出す

グリーンランドの自然と、自分で自分を演じる登場人物のリアリティーがあれば、十分味付けは

濃くなっている。

 

 登場人物全ての方の今後の幸せを祈った次第だ。